La.原子番号57の元素.電子配置[Xe]5d16s2の周期表3族ランタノイド元素.希土類元素セリウム族の一つ.原子量138.90547(7).質量数138(0.090(1)%),139(99.901(1)%)の2種の安定同位体と,質量数117~155の放射性同位体が知られている.1839年,C.G. Mosanderがセリウム塩中から分離した.Mosanderの師J.J. Berzelius(ベルセリウス)がセリウム塩中に隠されていたところから,ギリシア語の“隠された”λανθανω(lanthan)をとってlanthanumを提案した.日本語の元素名はドイツ語の元素名Lanthanの音訳.
地殻中の存在度16 ppm.中国の全希土類埋蔵量(30%)・生産量(98%)でともに一位(2007年).モナズ石,バストネス石など希土類元素の鉱石中に含まれている.粉砕鉱石をアルカリで処理し,濃塩酸で塩化物に転換,溶媒抽出法で分離して,溶融塩電解法で金属がつくられる.スズ白色の軟らかい金属.融点921 ℃,沸点3457 ℃.密度6.145 g cm-3(25 ℃).六方晶のα,310 ℃ 以上で立方最密のβ,863 ℃ 以上で体心立方のγの3変態がある.酸に可溶.塩基性がかなり強いので熱水とも反応する.空気中ではすみやかに酸化される.酸化数3.化合物はすべて LaⅢ化合物で,酸化物,水酸化物,フッ化物,リン酸塩,炭酸塩,シュウ酸塩は水に難溶,塩化物,硝酸塩,酢酸塩は水に可溶.ランタノイドでは原子番号の増大とともに塩基性が減少する.ランタンの水酸化物は,この系列でもっとも強い塩基で,また三価の金属の水酸化物中でももっとも強い.
Niとの合金LaNi5は大量の水素を吸蔵するので,水素吸蔵合金としてハイブリッド・電気自動車搭載のニッケル-水素電池に利用されている.酸化物La2O3は,自動車排気ガス浄化3元触媒の担体・助触媒耐熱性向上用に,また高屈折率・低分散の光学レンズ用ガラスに添加される.La-Co系フェライト磁石,セラミックコンデンサーにも使用される.塩化物は石油接触分解触媒に使われる.わが国は酸化ランタン全輸入量1800 t のうち97% を中国から輸入した(2005年).[CAS 7439-91-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
周期表第ⅢA族に属する希土類元素のうちのランタノイドの一つ。1839年スウェーデンのモサンデルC.G.Mosander(1797-1858)が,それまで単一と思われていたセリウムから初めて分離し,セリウムに隠されていたという意味でギリシア語のlanthanō(隠れている)にちなんで命名した。モサンデル自身が2年後に,このときのランタンからジジムを分離し,85年になってジジムはプラセオジムとネオジムに分けられたのである。おもな鉱物はバネストサイト,モナザイト,ゼノタイム,セル石など。
単体は銀白色金属。空気中に放置すると表面が酸化されて灰白色のくもりを生ずる。スズより硬く,亜鉛より軟らかい。わずかに展性があるが延性はない。空気中では445℃で燃える。冷水とは徐々に,熱水には速やかに反応して水素を放って水酸化物となる。冷無機酸によく溶ける。化合物はつねに3価で,一般に無色である。金属の製錬は,鉱石を硫酸あるいはアルカリで溶解し,水で抽出してから,希土類元素をイオン交換樹脂法によって相互分離し,無水塩化物として,これを溶融塩電解するか,フッ化物をリチウム-マグネシウム合金による還元によって行われる。コバルトとの合金は軽希土磁石とされ,ほかにセラミックス誘電体,触媒,光学ガラスなどに用いられる。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
元素記号 | La |
原子番号 | 57 |
原子量 | 138.9055±3 |
融点 | 921℃ |
沸点 | 3500℃ |
比重 | α;6.19 β;6.17 |
結晶系 | α;六方 β;立方 γ;立方 |
元素存在度 | 宇宙 0.36(第61位) (Si106個当りの原子数) 地殻 30ppm(第27位) 海水 3.1×10-3μg/dm3 |
周期表第3族に属し、希土類元素の一つ。1839年スウェーデンのモサンデルによって、セリウムの酸化物から初めて分離されたので、ギリシア語のlanthanein(隠れている)にちなんで命名された。主要鉱物はバストネサイト、モナズ石など。塩化物の溶融塩電解によって白色の金属を得る。室温ではα(アルファ)型が安定。292~868℃ではβ(ベータ)型、868℃以上ではγ(ガンマ)型が安定。空気中に置くと、室温で表面が酸化され、445℃以上で燃えて酸化物となる。高温では水素や窒素とも反応する。冷水とは徐々に、熱水や酸には速やかに水素を発して溶けて酸化数Ⅲの塩をつくる。水素吸蔵合金(LaNi5など)、触媒、光学ガラス、熱電子放射体などの用途がある。
[守永健一・中原勝儼]
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