(読み)ヒ

デジタル大辞泉 「否」の意味・読み・例文・類語

ひ【否】[漢字項目]

[音](漢) [訓]いな いや
学習漢字]6年
そうではないと打ち消す。同意しない。「否決否定否認拒否
…か…でないか。「安否可否合否採否賛否実否真否正否成否存否諾否適否当否認否能否良否
物事が通じない。運が悪い。「否運
難読否応いやおう運否天賦うんぷてんぷ

いな【否】

[名]
同意しないこと。不承知。「も応もない」
(「…かいなか」の形で)…でないこと。「学生かは問わない」
[感]
申し出や依頼を拒否するときに用いる語。いやだ。「再度懇請と答える」
自分発言途中で否定したり、ためらったりするときに用いる語。いいえ。そうではない。「国家のため、全世界のために」

いや【否】

[感]《「いや」と同語源》
相手の言ったことを否定し、自分の考えを述べようとするときに用いる語。いいえ。いえ。「、そんなことはない」
自分が言ったこと、考えていたことを取り消すときに用いる語。「五時もう六時になったかな」
否定も肯定もしないで、話の合間に何となく発する語。「その、、君、ちょっと来てくれ」

ふ【否】[漢字項目]


ひ【否】

賛成しないこと。承認しないこと。「とする者多数」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「否」の意味・読み・例文・類語

いや【否・嫌・厭】

  1. [ 1 ] 〘 感動詞 〙
    1. 相手のことばを打ち消す気持を表わすことば。自分のいま言ったことばを打ち消して言い直すときにも用いる。いいえ。いえ。いいや。いな。
      1. [初出の実例]「『〈略〉件(くだんの)田は相違あるまじ』などいへば、権守とりもあへず『いや田におきては、はやくとられぬ』といひたりけるをかしさこそ」(出典:古今著聞集(1254)一六)
    2. ( 並立的な句の前または中で副詞的に用いる ) あるいは。または。やれ。
      1. [初出の実例]「是を人にとらせうかいやとらすまいかと出内(いだしいれて)」(出典:足利本論語抄(16C)堯曰第二十)
  2. [ 2 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 不快に思うさま。好ましくないさま。きらいだ。
    1. [初出の実例]「先帝の人をわづらはす事をいやにをぼしめしたほどにとてか」(出典:史記抄(1477)八)
    2. 「Iyana(イヤナ)コトヂャ」(出典:日葡辞書(1603‐04))

否の派生語

いや‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

否の派生語

いや‐さ
  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 3 ] 〘 接頭語 〙 名詞の上に付いて、きらいな、好ましくない、の意を表わす。
    1. [初出の実例]「五日はいばらきやにて御存(ぞんじ)のいや男にあひ申候」(出典:浮世草子好色一代男(1682)七)

否の補助注記

否定の感動詞「いな」が中世に「いや」になったと見られる。


いな【否】

  1. [ 1 ] 〘 感動詞 〙
    1. 相手の言うこと、なすこと、または、質問などを拒否したり、同意しなかったりするときに発することば。いや。いいえ。いやだよ。
      1. [初出の実例]「見むと言はば伊奈(イナ)と言はめや梅の花散り過ぐるまで君が来まさぬ」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四九七)
    2. 自分の発言を途中で否定したり、ためらったりするときに発することば。いや。いやそうではなく。
      1. [初出の実例]「蓬莱を見ずは敢(イナ)(〈別訓〉いなや)帰らじ」(出典:白氏文集天永四年点(1113)三)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( [ 一 ]を名詞的に用いたもの ) 同意しないこと。承知しないこと。拒否すること。いやだと答えること。
    1. [初出の実例]「神さぶと不欲(いな)にはあらずはたやはた斯(か)くして後にさぶしけむかも」(出典:万葉集(8C後)四・七六二)

否の語誌

会話の中で、否定の応答として用いられたのは平安末ごろまで。それ以降は、文語として使われ続けたが、否定していることを手短かに表わす語として、「否を申す」のように、名詞として単独で、また、「否と思う」といった引用の形で、口語文の中にも多く用いられた。


ひ【否】

  1. 〘 名詞 〙 易の六十四卦の一つ。。上卦は乾(天)、下卦は坤(地)。天地否ともいう。天の気が昇り、地の気が降って、陰陽の二気が交わらないさま。
    1. [初出の実例]「占ふて此卦に遇ふ、諸事不通。妨け有とす」(出典:古易断時言(1771)一)

や【否・嫌】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「いや(否)」の変化した語 ) 不快に思うさま。好ましくないさま。きらいなさま。
    1. [初出の実例]「おいらを狐がはらませて、御亭(ごて)になろとは、わしゃやです」(出典:洒落本・辰巳之園(1770))

いや‐まし【否】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 ( 「いやむ(否)」の形容詞化 ) いやに思われる。面白くない。いとわしい。
    1. [初出の実例]「呂后いやましく心うきことにぞおぼしける」(出典:唐物語(12C中)上)

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普及版 字通 「否」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

[字音]
[字訓] いな・いなむ・おおいに

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
不+口。口は(さい)、祝詞を収める器の形。その上を蓋うことによってこれを拒否し、妨げる意をあらわす。〔説文〕二上に「不(しか)らざるなり。口に從ひ、不に從ふ」とし、口を口舌の形と解する。金文の〔毛公鼎〕に「上下の否」という語があり、上下神の諾否、すなわち神意を意味する。(若)は巫女が舞い祈る形で、神が応諾することをもといった。また否には別に不・丕(ひ)・否・(ほう)という系列に属するものがあり、不は不(がくふ)、その花(かたい)が成熟する過程を丕・否・といい、実のはじけ割れることを剖判(ほうはん)という。金文に「不(ひひ)」というほめことばがあり、字はまた「不(ひひ)」に作る。諾否・否定の否と、不・丕系列の字と、もと別系であろうが、いま否にその両義がある。

[訓義]
1. いな、しからず、あらず、いなむ。
2. しからずんば。
3. おおいに、おおいなり。

[古辞書の訓]
名義抄〕否 アラズ・イナヤ・フサク・ニクム・マジ・トヅ・ナク・スマジ・イナ・イナカ(ヤ)・フサクヤ/大否 オホイナラズヤ・シカラズヤ/曷澣曷否 イズレヲカアラヒ、イズレヲカアラハザラム

[声系]
〔説文〕に否声として・痞など七字を収める。に大の義、・痞(ひ)に巻曲・結滞の意があり、字義にも両系が認められる。

[語系]
否・不piuは同声。弗piutは払戻の象で、否定に用いる。金文では不・否をいずれも丕大の意にも用いる。おそらくbiun系統の語であろう。

[熟語]
否運・否隔・否極・否臧・否塞・否泰・否滞・否定・否徳・否敗・否剝・否否・否婦・否閉・否戻
[下接語]
安否・可否・休否・拒否・許否・賢否・困否・賛否・若否・順否・信否・正否・成否・善否・然否・臧否・存否・諾否・達否・屯否・通否・当否・能否・良否・淪否

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