精選版 日本国語大辞典「嫌」の解説
きらい きらひ【嫌】
〘名〙 (形動)(動詞「きらう(嫌)」の連用形の名詞化)
① きらうこと。いやがること。忌みはばかること。また、そのさま。
※申楽談儀(1430)能の色どり「ことに鹿苑院御きらひ有し也」
② 好ましくない要素。好ましくない状態になる心配や傾向。
※真善美日本人(1891)〈三宅雪嶺〉日本人の能力「其構思狭隘に失するの嫌あるも」
③ 差別。区別。わかち。
※曾我物語(南北朝頃)一「今日の御酒もりには、老若のきらいなく候に、などや祐重一番ともうけたまはり候はず」
④ 連歌・俳諧で、句の配列上忌みきらうこと。
※仮名草子・竹斎(1621‐23)上「既に連歌は始まりぬ。〈略〉又は表八句の其内に、神祇・釈教・恋・無常、名所名所のきらひなく、ひた物出しけり」
きら・う きらふ【嫌】
〘他ワ五(ハ四)〙
① 捨てる。除き去る。
※書紀(720)神代上「手端吉棄、此をば多那須衛能余之岐羅毗(たなすゑのよしキラヒ)と云ふ」
② いやがる。好まない。忌みきらう。憎む。
※書紀(720)安康元年二月(図書寮本訓)「今陛下(きみ)、其の醜きことを嫌(キラヒ)たまはずして」
③ 連歌・俳諧で、句の配列上、同類のことばを付けることを忌み避ける。ある特定の語を特定の場所に使用することを避ける。
※連理秘抄(1349)「韻字 物の名と詞の字と是をきらふべからず」
④ 選び捨てる。差別する。区別する。わけへだてする。
※竹取(9C末‐10C初)「男はうけきらはずよひほとへていとかしこくあそぶ」
きらわ
し きらはし【嫌】
〘形シク〙 (動詞「きらう(嫌)」の形容詞化) きらうべきである。好ましくない。いとわしい。いやらしい。
※たまきはる(1219)「この世のいろもにほひも、あかずのみ、きらはしきこそ、せんかたなけれ」
きらわし‐げ
〘形動〙
きらわし‐さ
〘名〙
ぎらい ぎらひ【嫌】
〘語素〙 名詞または他の語句に付いて、その物やそうすることをきらうこと。また、その人。「男ぎらい」「食わずぎらい」
※茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉菓子を舐め過ぎて「ひどい亜米利加嫌(ギラ)ひで」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報