(読み)きらう

精選版 日本国語大辞典 「嫌」の意味・読み・例文・類語

きら・う きらふ【嫌】

〘他ワ五(ハ四)〙
① 捨てる。除き去る。
書紀(720)神代上「手端吉棄、此をば多那須衛能余之岐羅毗(たなすゑのよしキラヒ)と云ふ」
② いやがる。好まない。忌みきらう。憎む。
※書紀(720)安康元年二月(図書寮本訓)「今陛下(きみ)、其の醜きことを嫌(キラヒ)たまはずして」
連歌俳諧で、句の配列上、同類のことばを付けることを忌み避ける。ある特定の語を特定の場所に使用することを避ける。
連理秘抄(1349)「韻字 物の名と詞の字と是をきらふべからず」
④ 選び捨てる。差別する。区別する。わけへだてする。
※竹取(9C末‐10C初)「男はうけきらはずよひほとへていとかしこくあそぶ」

きらい きらひ【嫌】

〘名〙 (形動)(動詞「きらう(嫌)」の連用形の名詞化)
① きらうこと。いやがること。忌みはばかること。また、そのさま。
申楽談儀(1430)能の色どり「ことに鹿苑院御きらひ有し也」
② 好ましくない要素。好ましくない状態になる心配や傾向。
真善美日本人(1891)〈三宅雪嶺〉日本人の能力「其構思狭隘に失するの嫌あるも」
③ 差別。区別。わかち。
曾我物語(南北朝頃)一「今日の御酒もりには、老若のきらいなく候に、などや祐重一番ともうけたまはり候はず」
④ 連歌・俳諧で、句の配列上忌みきらうこと。
仮名草子竹斎(1621‐23)上「既に連歌は始まりぬ。〈略〉又は表八句の其内に、神祇・釈教・恋・無常、名所名所のきらひなく、ひた物出しけり」

きらわきらはし【嫌】

〘形シク〙 (動詞「きらう(嫌)」の形容詞化) きらうべきである。好ましくない。いとわしい。いやらしい。
たまきはる(1219)「この世のいろもにほひも、あかずのみ、きらはしきこそ、せんかたなけれ」
きらわし‐げ
〘形動〙
きらわし‐さ
〘名〙

ぎらい ぎらひ【嫌】

語素名詞または他の語句に付いて、その物やそうすることをきらうこと。また、その人。「男ぎらい」「食わずぎらい」
※茶話(1915‐30)〈薄田泣菫菓子を舐め過ぎて「ひどい亜米利加嫌(ギラ)ひで」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「嫌」の意味・読み・例文・類語

いや【嫌/×厭】

《「いや」と同語源》
[形動][文][ナリ]
欲しないさま。したくないさま。きらいだ。「―なものは―だ」「ピアノレッスンがだんだん―になる」
不愉快なさま。「―な顔一つせず手伝う」「会合で―な思いをする」「―な天気」→いやに
[派生]いやがる[動ラ五]いやさ[名]
[接頭]《近世上方語》名詞に付いて、いやな、いとわしい、の意を表す。「―客」「―勤め」
「茨木屋にて御存じの―男にあひ申し候」〈浮・一代男・七〉
[類語]嫌い毛嫌い大嫌い食わず嫌いいけ好かない虫が好かない気に食わない犬も食わぬ憎い憎らしい憎たらしい憎憎しい苦苦しい腹立たしいいまいましい苦虫を噛み潰したよう苦り切る眉をひそめる鼻持ちならない忌まわしいいとわしいおぞましいうとましい忌むうとむうとんずる嫌気忌避忌み嫌う煙たがる呪わしいまがまがしいきしょい気色が悪い気味が悪い気味悪い底気味悪い薄気味悪い鳥肌が立つ気持ち悪い虫唾むしずが走る反吐へどが出るきもいグロいおどろおどろしい不気味不快不愉快鼻に付くうっとうしいむかつくむしゃくしゃくしゃくしゃ不興不機嫌薄ら寒いうそ寒い胸が悪い胸糞が悪い心外苛立たしいうらめしいしかめっ面渋面しぶつらしかめるひそめるひそみ顰蹙ひんしゅく苦る辟易うるさい嫌がる嫌気が差すいと蛇蝎視だかつし唾棄倦厭けんえん迷惑身の毛がよだつ総毛立つ背筋が寒くなる背筋が凍るぞっと肌にあわを生じる冷汗三斗

けん【嫌】[漢字項目]

常用漢字] [音]ケン(漢) ゲン(呉) [訓]きらう いや
〈ケン〉
きらう。いやがる。「嫌煙嫌厭けんえん嫌悪けんお嫌忌
疑わしいと思う。「嫌疑
〈ゲン〉きらう。疑う。「機嫌
〈いや〉「嫌気いやけ・いやき嫌味

や【嫌/×厭】

[形動]いや(嫌)」の音変化。感動詞的に用いることもある。「顔を見るのも―なやつ」「手伝うなんて―なこった」「―だ、食べたくない」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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