山姥(読み)やまんば

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

山姥(能)
やまんば

能の曲目。五番目物。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)の作品とされる。『申楽談儀(さるがくだんぎ)』には、世阿弥が将軍の前で舞ったことが記されている。山姥の山巡りの曲舞(くせまい)を得意とする遊女、百(ひゃく)ま山姥(ツレ)は、供の男たち(ワキ、ワキツレ)と善光寺詣(もう)での途中、上路(あげろ)の山中でにわかに日の暮れる不思議に出会う。宿を貸そうと現れた山の女(前シテ)は、山姥の謡(うたい)を所望し、自分が真の山姥と告げ、夕月のころに再会を約して消える(中入)。道案内の里人(間(あい)狂言)は、ワキの問いに答え、さまざまな山姥に関する珍説を語る。やがて山姥(後シテ)は恐ろしげな姿で登場し、深山幽谷のさまを描写し、正邪一如、善悪不二の哲理を説き、山姥の曲舞を舞い、山巡りのありさまをみせつつ消えうせる。この能は、山の鬼女の姿に託して、人間の輪廻(りんね)の苦とともに、四季の移り変わりと自然、あるいは宇宙そのものを象徴しようとする。能だけが可能とした表現の世界である。山姥という専用面を用いる。[増田正造]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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