帽子(ぼうし)(読み)ぼうし

日本大百科全書(ニッポニカ)「帽子(ぼうし)」の解説

帽子(ぼうし)
ぼうし

日本語の子には大別して四つの語義がある。(1)は烏帽子(えぼし)の略。(2)は綿帽子、布帽子などのような女性の被(かぶ)り物。(3)は西洋風の被り物。(4)は物の先端にかぶせるもの、である。しかし、今日一般では、ほとんど(3)の意味で使われている。

石山 

日本

前述の(1)から(3)への語義的変化は、そのままわが国における帽子の歴史的推移を物語っているともいえる。すなわち、(1)の男子の被り物としての烏帽子は、飛鳥(あすか)・奈良時代幞頭(ぼくとう)(羅(ら)、(しゃ)、絹、麻の袋状の被り物)の変化したものとされ、平安末期になると、漆を塗って固めた各種の烏帽子が成立する。その後、武家社会の成立とともに、烏帽子は武士にとって不可欠の被り物となった。(2)の帽子は、室町時代に始まって江戸時代に盛んになる。綿帽子は防寒用、布帽子は外出用としてかぶられた。(3)の西洋風帽子の移入は南蛮人の渡来とともに始まった。南蛮笠(がさ)、南蛮頭巾(ずきん)などとして、戦国時代の武将間に愛好されたのがそれである。やがて、明治になって断髪令が施行される一方、洋服の導入などに伴って帽子そのものも西洋風に一変していった。

[石山 彰]

西洋

西洋の歴史に登場する帽子の型や名称はたいへん複雑であるが、イギリスのハリスンM.Harrison(参考文献参照)の説を参考に分類を試みると別表のようになる。すなわち西洋の帽子は大別して〔1〕縁なし帽capまたはbrimless hatと〔2〕縁つき帽brimmed hatになるが、英語のハットは両者の総称として使われる。

 〔1〕は山、すなわちクラウンcrownの高低によって、さらに(1)(2)(3)の三つのタイプに分類される。

 (1)のタイプに属するものにはキャロット(calotte小球帽)、コアフ(coiffe耳まで覆う小球帽)、スカルキャップ(skullcap椀(わん)形帽、頭蓋帽)などがあり、西洋中世に多く見受けられる。今日みられる野球帽やジョッキー・キャップ(jockey cap騎手帽)などは、この種のものに目庇(まびさし)がついたものである。またベレ型に属するものには典型的なベレ・バスク(béret basque)をはじめ、スコットランドのタモシャンター(tam-o'-shanter)やグレンガリー(glengarry)などがある。これらのベレ型の帽子は、西洋の初期ルネサンスから中期にかけての男子帽の中心をなしていた。いわゆる大黒(だいこく)頭巾に似たナイト・キャップやかつての水泳帽、あるいは目庇付きのハンチング(鳥打帽)やかつてのいわゆるスキー帽などもこのタイプである。また毛糸編みの長いストッキング・キャップもこのタイプの変種とみられる。

 (2)のタイプに属するものには、原型的なポーク・パイ(pork pie hat)やトーク(toque)、フェズ(fezトルコ帽)、シェシア(chéchiaアラビア兵士のかぶる房付きの円筒帽)などがある。変形型にはオーバーシーズ・キャップ(overseas cap米軍の略帽)、レーニン帽などがある。また目庇付きのものにはカスケット(casquetteいわゆる学生帽形)、ケピ(képiフランス式軍帽形)またはシャコー(shakoケピに鳥の羽根がつく)、ミュツェ(Mütze山が広く平板なドイツ式軍帽)、モーターボード(mortor boardいわゆる角帽)など代表的な制帽が含まれる。

 (3)のタイプに属するものにはバズビー(busby丈高い毛皮の円筒帽)、ベアスキン(bearskinイギリス近衛(このえ)兵などにみる熊皮帽)、クラウン・キャップ(clown cap道化師用の丈高い円錐(えんすい)帽)、あるいは中世婦人独特の被り物エナン帽(hennin丈高い円錐帽)などがある。

 〔2〕の帽子は、縁つまりブリムの広狭ばかりでなく、その湾曲の状態、および山の高低とその形状の三要素の複合関係からさまざまな変化形が生じ、その合計の特徴から独自の呼称が与えられる。

 (4)(5)のタイプでは、たとえばボーラー(bowler山高帽、アメリカではダービーDerby)は山が丸く、狭い縁が上方に反り返っている。これから派生したホンバーグ(homburg中折帽)は周知のように山は凹形で、中幅の縁が通例は水平状に保たれる。チロリアン・ハットは先細りの山に中幅の縁の後方だけが上反りになっている。セーラー・ハットやカノチエ(canotierカンカン帽)は、山が平らで中幅の縁もまったく水平である。これに対してトーピー(topee, topi熱帯地用の防暑帽)の山は半球で、水平の狭い縁がついている。一方、クロッシュ(cloche釣鐘(つりがね)帽)という婦人帽は、山は丸いが縁が下向きなのが特徴である。

 (6)のタイプについていえば、たとえばキャプリヌ(capline婦人の日よけ帽)は、山の形に関係なく縁が幅広く波形にうねっているのが特徴である。これに対しピクチャー・ハット(picture hat華麗な帽子の意。別名ゲーンズボロー・ハットGainsborough hatともいう)の縁は総じて下向きであるのに、プロフィール・ハット(profile hat)は縁の一方が巻き上がってS字形に湾曲し、横顔を生かす帽子になっている。男子帽の例では17、18世紀のトライコーン(tricorn三角帽)や19世紀初めのバイコーン(bicorn二角帽)の縁は上向きに反り返り、かつ波状に湾曲している。(6)のタイプで山も高いものにはソンブレロ(sombrero)、テンガロン・ハット(tengallon hat)などがあり、縁の狭いものにはシルク・ハット、さらにロールした縁のものには中世のシュガー・ローフ・ハット(sugar-loaf hat棒砂糖形帽子)がある。

[石山 彰]

『R. Turner WilcoxThe Mode in Hats and Headdress (1948, Charles Scribner's Sons, New York)』『Michael HarrisonThe History of the Hat (1960, Herbert Jenkins, London)』『Hilda AmphlettHats, a history of fashion in headwear (1974, Richard Sadler, Mill Lane, Buckinghamshire)』


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