デジタル大辞泉 「弥」の意味・読み・例文・類語

び【弥〔彌〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]ビ(漢) ミ(呉) [訓] いや いよいよ
〈ビ〉
端から端まで及ぶ。わたる。「弥久
すみずみまで。ひとわたり。「弥縫
(「」と通用)どこまでも広がる。「弥漫
〈ミ〉梵語の音訳字。「弥勒みろく沙弥しゃみ阿弥陀あみだ須弥山しゅみせん
〈や〉「弥生やよい
[名のり]いよ・ひさ・ひさし・ひろ・ます・まね・みつ・やす・よし・わたり・わたる
[難読]弥栄いやさか弥撒ミサ弥次やじ

い‐や【弥】

[副]《程度がはなはだしいさまを表す副詞「」に接頭語」の付いたもの》
いよいよ。ますます。
明治の御代も―栄えて」〈独歩・あの時分
去年こぞ見てし秋の月夜つくよは渡れども相見しいもは―年さかる」〈・二一四
きわめて。いちだんと。たいそう。
あかときに名のり鳴くなるほととぎす―めづらしく思ほゆるかも」〈・四〇八四〉
最も。いちばん。
「かつがつも―先立てるをしかむ」〈・中・歌謡〉

や【弥】

[副]《「」と同語源》程度がよりはなはだしいさま。ますます。いよいよ。
「下堅く―堅く取らせ秀罇ほだり取らす子」〈・下・歌謡〉

み【弥/眉/美/微】[漢字項目]

〈弥〉⇒
〈眉〉⇒
〈美〉⇒
〈微〉⇒

いよ【弥】

[副]《「いや」の音変化》いよいよ。ますます。
「宿なき人の如く、―遠くわれは歩まん」〈荷風訳・そゞろあるき〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「弥」の意味・読み・例文・類語

いよ‐いよ【彌・愈】

  1. 〘 副詞 〙 ( 副詞「いや(彌)」の変化した「いよ」を重ねて強調したもの )
  2. 物事が加層的に進展するさまをいう。「に」を伴うこともある。そのうえに。ますます。前よりもなおいっそう。
    1. [初出の実例]「おいぬればさらぬ別れもありといへばいよいよ見まくほしき君かな〈在原業平〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・九〇〇)
    2. 「ここで人に来られては大変だと思って、愈(いよいよ)躍起となって台所をかけ廻る」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)
  3. 物事が進展してきわまり、確実であるさまをいう。確かに。ほんとうに。まさしく。きっと。まちがいなく。
    1. [初出の実例]「彌よ面目ない事ぢゃと思ふ程に何共申共悲いぞ」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)三)
    2. 「断然(イヨイヨ)自分は嫌はれたに極ってゐる」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
  4. いまにも事柄が実現しようとすること。特に、悪い事態が実現しようとすること。
    1. [初出の実例]「彌々(イヨイヨ)となりゃ御布告にでもなりますか」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
  5. そうでない状態が長く続いてから、ある物事が実現する意を表わす。とうとう。ついに。結局。
    1. [初出の実例]「天主(デウス)を忘れ奉りて、彌(イヨイヨ)御作成日月星禽獣草石抔(など)に祭を捧る迄も悪虐無道に成ける」(出典:聖教初学要理(1872)〈ベルナルド=プチジァン〉切支丹来歴之略)
    2. 「愈(いよいよ)約束が極まって、もう立つといふ三日前に」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一)
  6. ある物事が他の物事と比べて、甚だしく程度が増しているさま。
    1. [初出の実例]「宛気とは、悍薬の気が中に在て、宛々として、邪気よりも愈深ぞ」(出典:史記抄(1477)一四)

い‐や【彌・益・重・転】

  1. 〘 副詞 〙 ( 接頭語「い」が、物事のたくさん重なる意の副詞「や」に付いたもの )
  2. 事柄や状態がだんだんはなはだしくなるさまを表わす。いよいよ。ますます。
    1. [初出の実例]「去年見てし秋の月夜は照らせれど相見し妹は彌(いや)年さかる」(出典:万葉集(8C後)二・二一一)
  3. 状態を意味する語に付いて、程度のはなはだしいさまを表わす。いちだんと。きわめて。「いやおこ」「いやさやしく」「いやたか」「いやとお」など。
    1. [初出の実例]「此川の 絶ゆる事なく 此山の 彌(いや)高知らす 水激(みなそそく) 滝の宮処(みやこ)は 見れど飽かぬかも」(出典:万葉集(8C後)一・三六)
  4. 程度が最もはなはだしいさまを表わす。また、物事を強めて言い表わす。最も。いちばん。まったく。ほんとに。「いやさき」「いやはし」「いやはて」など。
    1. [初出の実例]「かつがつも 伊夜(イヤ)さきだてる 兄(え)をし枕(ま)かむ」(出典:古事記(712)中・歌謡)

弥の語誌

( 1 )の意味のものは「既にそうしている(そうである)ものが、更に…する(…になる)」という面が強い。上代に盛んに用いられ、特にの意味のものは記紀歌謡に集中して見られる。平安時代以後は「いよいよ」等に代わられた。
( 2 )「いや…に」の形をとって、慣用句または一語の副詞のように用いることも多い。平安時代には「ただ…に…」という形にとってかわられ、「いやましに増す」「いやまさりにまさる」が固定的に使われる程度となった。


いよ‐よ【彌・愈】

  1. 〘 副詞 〙 いよいよ。ますます。そのうえに。
    1. [初出の実例]「世の中は空しきものと知る時し伊与余(イヨヨ)ますます悲しかりけり」(出典:万葉集(8C後)五・七九三)

弥の語誌

「いよ」の反復形「いよいよ」の母音が連続するのを避けて成立したと考えられる。平安時代には見られず、「万葉集」や古形の残存した一部訓点資料に見られるに過ぎない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「弥」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(旧字)彌
人名用漢字 17画

(異体字)
21画

[字音] ビ・ミ
[字訓] ひさしい・いよいよ

[説文解字]

[字形] 会意
正字はに作り、長+爾(じ)。〔説文〕九下に「久長なり。長に從ひ、爾聲」とするが、声が合わず、長は長髪の象。金文に字をに作り、弓と日と爾とに従う。弓は祓邪の呪具として用いられ、日は珠玉の形。爾は婦人の上半身に文身(絵文(かいぶん))を施している形。これによってその人の多祥を祈る意であろう。ゆえに金文に「考命彌生(びせい)」のようにいう。金文の〔(そはく)〕に「用(もつ)て考命生ならんことを求む」、〔(さいきつき)〕に「厥(そ)の生を(をふ)るまで、(れいしゆう)(霊終)ならんことを」のように用いる。はおそらく後の譌字。〔説文〕はその字によって説をなしている。

[訓義]
1. ひさしい。
2. ひさしきにわたる、おわる、あまねく、きわめる。
3. ひろい、とおい、おおきい、ふかい。
4. みちる、みたす、おおう。
5. いよいよ、ますます。
6. 縻(び)と通じ、つなぐ、とめる。

[古辞書の訓]
名義抄〕彌 ミツ・カサナル・ツヒニ・ヘテ・フカシ・メヅラシ・ナムチ・アカシ・ヲハル・ヲヘテ・オホフ・ヒロシ・ツク・アフ・コトコトニ 〔立〕弥 オホキニ・ヲハシ(ル)・カサヌ・ミツ・トホシ・ノボル・ワタル・ツヒニ・アマネシ・ヒサシ・ヒロシ・ツクス・コトゴトク・ヲホル・マサル・アフ・イヨイヨ・フカシ・キハム・ハル・メヅラシ・コトゴトクニ/彌 ヲハル

[語系]
彌miai、miei、弭mieは声近く、(び)は〔爾雅、釈言〕に「撫するなり」、弭は弭兵・弭乱のように用いて、抑止の意がある。彌の初形が婦人の霊を安んずる安撫の礼であることと、字義に通うところがある。また、縻miuaiも声近く、からみまとう意。みな一系をなす語であろう。

[熟語]
弥遠・弥期・弥久・弥襟・弥月・弥亙・弥曠・弥侈・弥日・弥旬・弥盛・弥節・弥増・弥天・弥道・弥年・弥弥・弥靡・弥補・弥縫・弥望・弥漫・弥満・弥・弥離・弥隆・弥留・弥綸・弥歴
[下接語]
沙弥・須弥

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弥」の意味・わかりやすい解説


倭の五王」のページをご覧ください。

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