「まゆ」の古形。
「―のごと雲居に見ゆる阿波の山かけて漕ぐ舟泊まり知らずも」〈万・九九八〉
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眉毛。まぶたの上部,ほぼ眼窩(がんか)上縁に沿って弓形に密集してはえる毛。ヒト以外の動物では見られず,汗が目にしたたるのを防ぐといわれる。毛の寿命は短く,あまり長くならない。中国では古くから眉作りが行われ,隋代には長蛾眉(ちょうがび)が流行,日本でも奈良時代に行われた。平安時代以後は貴族の婦人は眉毛を抜き,額に墨で太い眉を描いた。民間では貞潔のしるしに既婚婦人が眉をそり落とす風があった。→眉墨
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人の眼窩上縁を覆う皮膚の部分に密生する毛の集合を眉といい,その毛を眉毛brows,eyebrowsという。眉は眼窩部の上縁と額の下縁とを境している。眉を動かすのは前頭筋,皺眉筋,眼輪筋,鼻根筋で,これらの表情筋が単独または協同して作用することにより,眉の表情がつくられる。眉毛のほとんどは直毛で,毛の生える方向,すなわち毛流は多くの場合二つある。一つは額から外下方に,他の一つは上まぶたから外上方に向き,この両者が重なる部分が最も濃くみえる。
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上眼瞼(じょうがんけん)の上部で、上眼窩(じょうがんか)の真上にあたるところに弓状になって生えている毛で、眉毛ともいう。毛の長さは7~11ミリメートル。眉の位置にほぼ相当する左右の上眼窩縁の高まりの線を眉弓(びきゅう)とよび、その長さは5~6センチメートルである。眉毛の形状は人種や年齢によって多少の違いがある。眉部の皮膚は前頭筋、眼輪筋、皺眉筋(しゅうびきん)などの作用で動き、顔のいろいろな表情を表すが、その生理的意義は明らかではない。なお、眉墨(まゆずみ)の略語として眉の表現が用いられることもある。
[嶋井和世]
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〘名〙
① まぶたの上部、眼窩の上縁部にあたる所に弓状にはえている毛。まよ。まゆげ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※源氏(1001‐14頃)若紫「つらつきいとらうたげにて、まゆのわたりうちけぶり」
② まゆずみ。
※承安二年広田社歌合(1172)「むこの海をなぎたる朝に見渡せばまゆも乱れぬ阿波の島山〈藤原実定〉」
③ (眉は感情が端的に表われるところなので) 喜怒哀楽の情。→
眉を開く・
眉を読む。
※浄瑠璃・菅原親王(1661)三「げんじの者共がゑいぐゎのまゆを打やぶらん」
④ 何かの上に、眉のように張り出したものをいう語。
(イ) 烏帽子の部分の名。前の中、とがっているひだの下に高く押し出している所。
(ロ) 牛車の部分の名。屋形の前後の軒。
※大鏡(12C前)六「一の車の口のまゆに香嚢かけられて」
⑤ 眉のような三日月形をしたものをいう語。虹梁(こうりょう)または破風板などの下方の繰形(くりがた)。欠眉(かきまゆ)、抉眉(くじりまゆ)、出入眉、薙眉(なぎまゆ)、蛭眉(ひるまゆ)などがある。
※玉塵抄(1563)一四「

と云へども戸の上のまゆ柱など式の家のやうにないぞ」
⑥ 伊勢船造りの箱型船首の装飾で、船首両側上棚の下部に細長く眉状に黒く塗るもの。
※川船荷方伊勢船秘書(1708)伊勢船之覚書「まゆの仕様は〈略〉まゆふちの上よりあをりの下までぬる也」
〘名〙 「まゆ(眉)」の古形。
※正倉院文書‐天平一二年(740)越前国江沼郡山背郷計帳「弟江沼臣族牛麻呂〈略〉左目用尾疵」
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