戒める(読み)イマシメル

デジタル大辞泉 「戒める」の意味・読み・例文・類語

いまし・める【戒める/×誡める/警める/縛める】

[動マ下一][文]いまし・む[マ下二]
まちがいをしないように前もって注意する。教えさとす。「気を緩めないよう―・める」
してはいけないと命ずる。禁止する。「肉食を―・める」
同じ過ちを犯さないようにしかる。「嘘をついた子供を―・める」
警戒する。
「町々を―・めて歩く巡査靴音」〈藤村新生
(縛める)自由がきかないようにしばる。「盗人荒縄で―・める」
忌み嫌う。
「人の―・むる五月さつきぬ」〈宇津保藤原の君〉
[類語]戒告訓戒諭旨教戒勧戒いさめる意見諫言諭す諫死注意説教𠮟責諌止苦言忠言忠告勧告警告心添えいましたしなめるとがめる言い聞かせる言い含める因果を含めるくぎを刺す

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「戒める」の意味・読み・例文・類語

いまし・める【戒・誡・警】

  1. 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]いまし・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙 ( 「忌ましむ」で「忌み遠ざける」が原義 )
  2. 不都合なことを起こさないように訓戒したり注意したりする。
    1. (イ) あやまちのないように、前もって注意する。教えを守るようにさとす。訓戒する。
      1. [初出の実例]「天皇、親(みづか)新羅を伐たむと欲す。神、天皇に戒(イマし)めて曰く、な往(いま)しそ、とのたまふ」(出典日本書紀(720)雄略九年三月(前田本訓))
      2. 「ひそかに小町田に意見を語りて、其将来を警誡(イマシメ)たり」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一一)
    2. (ロ) (自分自身で)あやまちのないように努める。
      1. [初出の実例]「みづからいましめて、恐るべくつつしむべきは、このまどひなり」(出典:徒然草(1331頃)九)
  3. 行動を禁止したり、抑制したりする。
    1. (イ) してはいけないと制止する。行なうことを禁じる。
      1. [初出の実例]「若無比丘(にゃくむびく)と仏のせちにいましめ給へるをこそ、思ひ至らぬくまもありがたからめ」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)
      2. 「神前のおそれあるによってかたくいましめて是をゆるさぬ所に」(出典:光悦本謡曲・阿漕(1532頃))
    2. (ロ) よくない行為を再びしないように、しかる。
      1. [初出の実例]「『ありしあかつきの事いましめらるるは。知らぬか』とのたまふにぞ」(出典:枕草子(10C終)一六一)
  4. いやだと思う。嫌う。忌む。
    1. [初出の実例]「かく人のいましむる五月(さつき)はいぬ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
  5. 自由がきかないように、縛ったり閉じ込めたりする。罰する。また、比喩的に、人の自由を束縛する。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
    1. [初出の実例]「あらゆる制約にいましめられてゐる人間」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人生観)
  6. 守りをきびしくする。厳重に警戒する。
    1. [初出の実例]「是に、中大兄、衛門府(ゆげひのつかさ)に戒め、一時(もろとも)に倶に十二の通門を鎖(さしかた)めて、往来(かよ)はしめず」(出典:日本書紀(720)皇極四年六月(岩崎本訓))

戒めるの語誌

本来あるべき状態から外れた行動や思いをしないように、他に対して精神面の抑制あるいは禁止を求めていた「いましむ」が、平安時代末あたりから、具体的行為について、罰したり縛ったりするという意味をも表わすようになった。一方、あるべき状態から外れた行動などを、他から与えられないように自らが警戒・警固する意をも加え、さらに鎌倉時代には、自分が自分自身に対して用心する意も有するようになった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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