掣肘(読み)セイチュウ

デジタル大辞泉 「掣肘」の意味・読み・例文・類語

せい‐ちゅう〔‐チウ〕【×肘】

[名](スル)《「呂氏春秋」審応覧・具備にある、宓子賤が二吏に字を書かせ、そのひじいて妨げたという故事から》わきから干渉して人の自由な行動を妨げること。「掣肘を加える」
「誰にも―せられることの無い身の上」〈鴎外
[類語]邪魔妨害阻害そがい干渉横槍よこやり障害支障障壁さわ邪魔だて制止水を差す水をかける足を引っ張る遮る抑える立ち塞がるせきとめる妨げる押しとどめるストップを掛ける封殺諫止阻む食い止める立ちはだかる遮断阻止挫く弱める砕く削ぐ圧伏圧殺捕まえる握る挟むブレーキが掛かる腰を折る

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精選版 日本国語大辞典 「掣肘」の意味・読み・例文・類語

せい‐ちゅう‥チウ【掣肘】

  1. 〘 名詞 〙 ( 宓子賤が二吏に字を書かせ、その肘をひっぱって妨げたという「呂子春秋‐審応覧具備」の故事から ) そばから干渉して自由な行動を妨げること。また、その妨げ。
    1. [初出の実例]「大将の外に在るもの、掣肘矛盾せらるること多く」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉九)
    2. 「勘次は村の若者がおつぎに想を懸けることに掣肘(セイチュウ)を加へる些の力をも有して居らぬ」(出典:土(1910)〈長塚節〉一一)

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普及版 字通 「掣肘」の読み・字形・画数・意味

【掣肘】せいちゆう(ちう)

人の肘をおさえて、その行為を妨げる。〔呂覧、具備〕子賤(ふくしせん)、二人をして書せしむ。方(まさ)に將に書せんとす。子賤、旁(かたは)らより時に其の肘(ひぢ)を掣搖(せいえう)す。之れを書すること善からず。~甚だ之れを患(うれ)ひ、辭して歸らんとふ。~魯君太息してじて曰く、子此れを以て寡人の不を諫むるなりと。

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故事成語を知る辞典 「掣肘」の解説

掣肘

わきから干渉して、人の自由な行動を妨げること。

[使用例] これからあすの朝までは、誰にも掣肘せられることの無い身の上だと感ずるのが、お玉のためにはず愉快でたまらない[森鷗外*雁|1911~13]

[由来] 「呂氏春秋―審応覧・具備」に載っている逸話から。紀元前五世紀、春秋時代の中国で、という国に、ある町を治めるふくせんという役人がいました。あるとき、彼は下役二人に文書を書かせましたが、「かたわらより時にの肘をせいようす(ときどき、そばから彼らのひじをひっぱった)」。そうして、「おまえたちは字が下手だな」と注意するのです。困った二人は、魯の君主に報告をしました。それを聞いた魯の君主は、自分が宓子賤にその町の政務を任せながら、そのやりかたを邪魔していたことに気づき、以後はよけいな口出しをしないようにしました。その結果、その町はよく治まったということです。

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世界大百科事典(旧版)内の掣肘の言及

【肘】より

…聖書にはキュビトとしてみえ,〈普通のキュビト〉(45cm)と〈神聖キュビト〉(52cm)などが知られている。 魯の哀公に仕えた宓子賤(ふくしせん)が哀公の側近を〈掣肘(せいちゆう)〉して拙い字を書かせ,宓の政治に容喙(ようかい)することの愚を公に悟らせた(《呂氏春秋》)ように,肘を抑えれば強力な肩の筋群の動きを乱せることは梃子(てこ)の原理をひくまでもない。人相学では黒子(ほくろ)が肘頭部にあれば災厄を招きやすく,肘の上にあっても病が多いが,肘の下にあれば富相となり,肘窩にあれば技量に長(た)けるなどと言う。…

※「掣肘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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