(読み)イン

デジタル大辞泉 「因」の意味・読み・例文・類語

いん【因】

物事原因もと。「失敗をなす」
仏語。直接の原因。⇔
古代インドの論理学で、論証しようとする命題(宗)の理由を述べる部分
[類語]原因もとたね起こりきっかけ因由素因真因要因一因導因誘因理由事由じゆうわけ近因遠因せい起因する基づく発する根差す

いん【因】[漢字項目]

[音]イン(呉)(漢) [訓]よる ちなむ
学習漢字]5年
事の起こるもと。「因果因業因子因縁因由一因遠因起因近因偶因原因死因主因真因成因素因敗因病因誘因要因
もとの物事に従う。「因習因循
因幡いなば国。「因州
[名のり]なみ・ゆかり・よし・より

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「因」の意味・読み・例文・類語

いん【因】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。狭義には、結果をひきおこすための直接の内的原因。間接的原因である縁に対する。広義には、両者を合わせたものをいう。⇔
    1. [初出の実例]「善悪因果経に云はく、過去の因を知らむと欲(おも)はば其の現在の果を見よ」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
    2. [その他の文献]〔鄒陽‐獄中上書〕
  3. 一般に、物事の起こるもと。原因。また、物事とのつながり。関係。
    1. [初出の実例]「其仔細を知らずと雖も因あるままに斯くはしるしつ」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一二)
  4. インドの論理学、因明(いんみょう)でいう宗(しゅう)、因(いん)、喩(ゆ)の一つ。これから論証しようとする宗(命題)の理由を説明するもの。
  5. 和算で、一位の数を掛けること。また、その積に対して一位の数をいう。〔算法新書(1830)〕

ちなみ【因】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ちなむ(因)」の連用形の名詞化 )
  2. ちなむこと。関連すること。ゆかり。えにし。関係。
    1. [初出の実例]「事の因(チナミ)に願を発ししく『王舎城所有の児子を食(くら)はむ』」(出典:南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)一)
    2. 「山にいりて拄杖(しゅぢゃう)をもとむるちなみに迷山路して」(出典:正法眼蔵(1231‐53)行持上)
  3. 堅いちぎりを結ぶこと。結婚の約束をすること。ちぎり。
    1. [初出の実例]「是よりして後、脇に若衆のちなみは思ひもよらず」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)五)
  4. 親しく交わること。また、その交わり。
    1. [初出の実例]「今日より父の手前をはばからず御因(チナミ)を申べし」(出典:浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)二)

ちなび【因】

  1. 〘 名詞 〙ちなみ(因)〔観智院本名義抄(1241)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「因」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 6画

[字音] イン
[字訓] むしろ・よる・もと

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
囗(い)+大。〔説文〕六下に「就くなり。囗大に從ふ」とあり、囲就の意とするものであろうが、囗は(むしろ)の平面形。そこに人が寝臥する形で、(むしろ)の初文。

[訓義]
1. むしろ。
2. 常に臥(がせき)として用いるもので、よる、たよる、つねにの意となる。
3. 常に用いることから、もと、ちなみに、ふるいの意となる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕因 ヨル・ヨリテ・チナミ・ユヱ・ヨシ・ハタス・ツク・タネ・カソフ 〔立〕因 ウフ・チナミニ・チナミ・ユヱ・ヨリテ・カサヌ・シタガフ・ヨシ・ナツク・シタシ・ヨル・マカル・タネ・カヘル・メグル

[声系]
因・・姻ienは同声。因はの初文。はその席に就くこと。姻は因仍(いんじよう)の義で、歴世通婚の意であろう。

[熟語]
因依・因縁・因応・因果・因革・因業・因習・因襲・因循・因仍・因是
[下接語]
悪因・一因・遠因・縁因・起因・近因・原因・業因・主因・宿因・証因・成因・前因・善因・素因・敗因・副因・誘因・要因

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【因縁】より

…いんえんの音便。仏教では,すべてのものごとが生起したり,消滅したりするには必ず原因があるとし,生滅に直接関係するものを因と言い,因を助けて結果を生じさせる間接的な条件を縁として区別するが,実際に何が因で何が縁であるかをはっきり分かつ基準があるわけではない。因縁は〈因と縁〉と〈因としての縁〉の二通りに解釈されるが,この両者を一括して縁と呼び,因縁によってものごとの生起することを縁起(えんぎ)とも言い,また,生じた結果を含めて因果(いんが)とも言う。…

【縁起】より

…仏教における真理を表す一つの言葉で,詳しくは〈因縁生起〉といい,略して縁起という。現象的事物すなわち有為(うい)はすべて因hetu(直接原因)と縁pratyaya(間接原因)との2種の原因が働いて生ずるとみる仏教独自の教説であり,〈縁起をみる者は法=真理をみ,法をみる者は縁起をみる〉といわれる。…

【ディグナーガ】より

…漢訳名を陳那(ちんな)という。《因明正理門論》《集量論》の二大主著において,従来の諸派の説を批判して,唯識思想に立脚して仏教論理学を組織し,新因明(しんいんみよう)といわれる新論理学説を形成した。その特色は,(1)正しい認識の根拠(量)を知覚(現量)と推理(比量)の二つに限定したこと,(2)知覚を思惟を含まないもの(現量除分別)と定義したこと,(3)推理の形式を宗(主張)・因(理由)・喩(比喩)の三支作法としたこと,(4)正しい因の備えるべき三条件(因の三相)を明確にしたこと,(5)さらに知覚の対象となる個別相(自相)と一般相(共相(ぐうそう))を峻別し,後者を〈他者の排除〉によって仮構された非実在にすぎないとするアポーハ説を説いたこと,などが挙げられる。…

※「因」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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