栄養(読み)えいよう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

栄養(生物)
えいよう

生物が生きてゆくためには、絶えず外界から物質を取り入れ、これを利用して自らの体を構成、維持し、またエネルギーを得なければならない。このように、生命現象を活発に行うために外部より物質を摂取することを栄養といい、摂取される物質を栄養素とよんでいる。生物が外界から摂取する物質のうち、呼吸に用いられる酸素や光合成の際の二酸化炭素は、栄養素から除くのが普通である。また、すべての生物に不可欠な水も栄養素とはよばない。むしろ、栄養素として一般に問題にされるのは、それぞれの生物が正常な生活を営むのに不可欠な物質である。なお、人間の栄養については別項目(栄養参照)として扱う。
 生物が摂取する物質が無機物か有機物かによって、栄養形式は二つの型に大別される。その一つは栄養素として有機物を必要とせず、外界から無機物だけを取り入れて、これを自分の体内で有機物に変えて生活する独立栄養生物(無機栄養生物)にみられる栄養形式で、緑色植物をはじめとする光合成生物や、硝化(しょうか)細菌などの化学合成細菌がこの栄養形式を行う。これに対して、独立栄養生物のつくりだす有機物を直接あるいは間接に摂取して生活する栄養形式を従属栄養(有機栄養)といい、動物や大多数の細菌類、菌類がこの栄養形式をとっている。
 独立栄養生物が摂取する栄養素は、無機化合物の形になっているが、栄養素として考える場合は元素として扱うことが多い。植物では窒素、リン、カリウムが三大栄養素であるが、このほか多量に必要とされるカルシウム、マグネシウム、硫黄(いおう)などは多量養素とよばれる。さらに、微量ではあるが不可欠の元素であるモリブデン、銅、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素などの微量養素が知られている。植物が栄養素として要求する元素の種類と量は、水栽培や組織培養などの方法によって明らかにされた。
 これに対して従属栄養生物では、摂取される有機化合物はその種類が栄養素として重要であり、炭水化物(糖質)、脂肪(脂質)、タンパク質の三大栄養素のほか、ビタミン類や無機塩類(ミネラル)を必要とする。
 これら栄養素は、生物の活動のためのエネルギーを供給するだけではなく、生体の維持や発育のためにも用いられ、さらに生体の自律的調整と平衡に関係する物質を供給する。したがって、栄養はそれぞれの生物にとってバランスのとれたものであることが不可欠で、栄養素は量のみならず、その質も問題となる。栄養素の不足やアンバランスによっておこる生活機能の障害を欠乏症といい、植物の白化や動物のビタミン欠乏症などがある。[吉田精一]
 なお、いますこし詳述すると、従属栄養生物の栄養素であるビタミン類は、正常な生理機能を営むために微量ながら必要であり、生物によっては自分で合成できず、外からの摂取が不可欠のものがある。また、エネルギー源としては脂質がとくに有効で、生体内で脂質が酸化されて生じる熱量は、当量の炭水化物やタンパク質の倍以上である。人体では、脂肪はトリアシルグリセロールとして、また炭水化物はグリコーゲンとして、それぞれ脂肪組織と肝臓に蓄えられ、貯蔵エネルギー源となっている。
 独立栄養生物では、光エネルギーや無機物酸化の際に遊離するエネルギーを用いて炭酸固定を行い、有機物を合成する。緑色植物や糸状菌は、硝酸塩やアンモニウム塩を吸収して窒素を得ている。分子状窒素を固定するのは根粒菌などである。細菌類には紅色細菌のように、生活環境によって無機栄養型から有機栄養型に変わるものもある。原始生命体は化学合成型(光によらない化学反応によってエネルギーを獲得する。炭素源として二酸化炭素を用いるものと有機炭素を用いるものがある)であったと考えられている。[嶋田 拓]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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