デジタル大辞泉
「汝」の意味・読み・例文・類語
い【×汝】
[代](格助詞「が」を伴って用いる)二人称の人代名詞。相手を卑しめていう語。おまえ。→其 →己
「―が作り仕へまつれる大殿のうち」〈記・中〉
いまし【×汝】
[代]二人称の人代名詞。親しみの気持ちで相手をさす。そなた。なんじ。おまえ。
「駿河の海おしへに生ふる浜つづら―をたのみ母にたがひぬ」〈万・三三五九〉
[補説]上代語であるが、平安時代にも漢文訓読語としては用いられた。日本書紀の古訓によく用いられる語。→まし →みまし
じょ【汝】[漢字項目]
[人名用漢字] [音]ジョ(漢) [訓]なんじ なれ いまし
二人称の人代名詞。なんじ。「爾汝」
[名のり]な
な‐むち【×汝】
[代]《代名詞「な」+「むち(貴)」から》「なんじ」に同じ。
「ああ、―軽の皇子」〈孝徳紀〉
み‐まし【×汝】
[代]二人称の人代名詞。あなた。
「―大臣の仕へ奉り来しさまは」〈続紀宣命〉
しゃ【×汝】
[代]二人称の人代名詞。相手を卑しめていう語。きさま。おまえ。
「名のりて過ぎるほととぎす、―が父に似て、父に似ず」〈浄・寿の門松〉
まし【×汝】
[代]二人称の人代名詞。みまし。いまし。おまえ。
「―は、え知らじ」〈宇津保・俊蔭〉
なれ【×汝】
[代]二人称の人代名詞。おまえ。なんじ。
「親なしに―生りけめや」〈推古紀・歌謡〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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な【汝・己】
- 〘 代名詞詞 〙
- ① 自称。わたくし。自分。→語誌( 1 )。
- ② 対称。おまえ。あなた。
- [初出の実例]「山処(やまと)の 一本(ひともと)薄(すすき) 項傾(うなかぶ)し 那(ナ)が泣かさまく 朝雨の 霧に立たむぞ」(出典:古事記(712)上・歌謡)
汝の語誌
( 1 )①の確例はないが、( イ )「大国主命(おおくにぬしのみこと)」の別名の「おほ(あ)なむちのみこと」を「日本書紀」などで「大己貴命」と表記しているところから、「己」の字に「ナ」の読みがあったのではないかと推定されること、( ロ )「万葉集」にも、ふつう「自分自身」と訳される「な」に「己」の字を用いた例がある(万葉‐一七五五「己母尓(ながははに)」、万葉‐三二三九「己之母乎(ながははを)」など)こと、( ハ )親しい人を呼ぶのに用いる上代語「なおと(弟)」「なせ(夫)」「なにも(妹)」「なね(姉)」などの「な」は、一方において「わがせ」「わぎも」などのように「わ(我)」を付けるいい方があり、これらの「な」も、古い自称代名詞の用法のなごりであろうと推定されることなどによって認められる。
( 2 )②の対称の「な」は、「なれ」とともに、奈良時代には、もっとも一般的な対称代名詞として用いられている。特に歌ではもっぱらこの語を使用するが、敬意は高くなく、対等もしくはそれ以下の相手に対して用い、動物や植物などに呼びかける時にも用いる。「なれ」が単独で用いられるのに対して、「な」は名詞の上に付いてこれと熟合するか、助詞「が」を伴って名詞に続く用法が多いが、時代の古いところでは「を」「に」などの格助詞や、係助詞が付く用法も多い。
うぬ【汝・己】
- [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙
- ① 対称。相手をののしったり軽んじたりする場合に用いる。
- [初出の実例]「ヤアヤアうぬは何国(いづく)の風来人」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)千里が竹)
- ② ( 反射指示 ) 自分自身のこと。侮蔑的に用いる。てめえ自身。〔かた言(1650)〕
- [初出の実例]「自分(ウヌ)が先へ立って知合の友達へ出すやら」(出典:腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉二〇)
- [ 2 ] 〘 感動詞 〙 相手に対する、激しいののしりのことば。おのれ。
- [初出の実例]「うぬ、さふぬかすと、責めて責めて責殺すが、それでも厭(いや)か」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明)
な‐んじ‥んぢ【汝・爾】
- 〘 代名詞詞 〙 ( 古くは「なむち」。「な(汝)むち(貴)」の意 ) 対称。上代古くは、相手を尊敬して呼んだ語と推定されるが、奈良時代以降、対等またはそれ以下の相手に対して用いられ、中世以降は、目下の者に対する、もっとも一般的な代名詞として用いられる。
- [初出の実例]「なんちが持ちて侍るかぐや姫奉れ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- 「我豈(あに)敢て子(ナンヂ)の面(おもて)我が面の如くなりと謂(おも)はんやと言へり」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)四)
汝の補助注記
大国主神の別名が、「大汝」や「大己貴」などと書かれていたり、「卿」「仁」などの文字に対して、古辞書が、キミやイマシの訓とともにナンヂを挙げているところなどから、古くは敬意が含まれていたと考えられる。
しゃ【汝】
- 〘 代名詞詞 〙 対称。おまえ。なんじ。し。
- [初出の実例]「岩瀬の森の郭公〈略〉者(しゃ)が父なれど鶯は 賤しき垣根に木伝ひて」(出典:宴曲・宴曲集(1296頃)一)
- 「名のりて過るほととぎす、しゃが父に似て、父に似ず、子は色里に初音ふる」(出典:浄瑠璃・山崎与次兵衛寿の門松(1718)下)
汝の補助注記
「うぐひすの 卵(かひご)の中に ほととぎす ひとり生まれて 己(な)が父に 似ては鳴かず 己(な)が母に 似ては鳴かず」〔万葉‐一七五五〕を平安後期の歌人、源俊頼がその著「俊頼髄脳」の中で「己」に同意の「汝」をあて、「汝」を「しゃ」と読んだのが固定したもの。
いまし【汝】
- 〘 代名詞詞 〙 対称。なんじ。おまえ。
- [初出の実例]「たらちねの母に障(さは)らばいたづらに伊麻思(イマシ)も吾も事の成るべき」(出典:万葉集(8C後)一一・二五一七)
- 「死よ、汝(イマシ)より易き者はあらじ」(出典:蓬莱曲(1891)〈北村透谷〉三)
汝の語誌
「万葉集」に数例あり、特異な訓をもつと言われる「日本書紀」の古訓にかなり多く見られるほかは、一般に非常に稀である。この語が相手をどのように待遇したものかは明らかではない。親━疎の関係で言えば親、上━下の関係で言えば同等以下の待遇的意味を伴っていたかと思われる。
なれ【汝】
- 〘 代名詞詞 〙 対称。対等の相手や目下の者、動物などに対して用いる。なんじ。「な」とともに、上代・中古に用いられた。
- [初出の実例]「しなてる 片岡山に 飯(いひ)に飢(ゑ)て 臥(こや)せる その旅人(たひと)あはれ 親無しに 那礼(ナレ)生(な)りけめや」(出典:日本書紀(720)推古二一年一二月・歌謡)
- 「ねうねうといとらうたげに鳴けばかきなでて〈略〉恋わぶる人の形見と手ならせばなれよ何とて鳴くねなるらむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
まし【汝】
- 〘 代名詞詞 〙 ( 「いまし(汝)」の変化したものか ) 対称。上代、対等、またはそれ以下の相手に対して用いた。「いまし」より敬意の薄いものとされる。おまえ。
- [初出の実例]「夏引きの 白糸 七量(ななはかり)あり さ衣に 織りても着せむ 万之(マシ)妻(め)離れよ」(出典:催馬楽(7C後‐8C)夏引)
み‐まし【汝】
- 〘 代名詞詞 〙 ( 「み」は接頭語 ) 対称。あなた。「いまし」「まし」などよりも敬意が高いとみられる。確実な例は、宣命の中にだけ見られる。
- [初出の実例]「藤原宮に天の下知しめしし美麻斯(ミマシ)の父とます天皇の美麻斯(ミマシ)に賜ひし天の下の業と」(出典:続日本紀‐神亀元年(724)二月四日・宣命)
い【汝】
- 〘 代名詞詞 〙 ( 格助詞「が」を伴って用いられる ) 対称。おまえ。相手を卑しんでいう語。
- [初出の実例]「伊(イ)賀〔此の二字は音を以ゐよ〕作り仕へ奉れる大殿の内には」(出典:古事記(712)中)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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「汝」の読み・字形・画数・意味
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