[代]《「おのれ」の音変化》二人称の人代名詞。相手をののしっていう語。きさま。うぬ。
「―はろくなことをしくさらん」〈黒島・二銭銅貨〉
《「れ」は「われ」「たれ」などの「れ」と同じもの》
[代]
1 反射代名詞。その人、またはそのもの自身。自分。自分自身。「己を省みる」
2 二人称の人代名詞。目下に対して、または相手をののしっていう。おまえ。きさま。「己には関係ないことだ」
3 一人称の人代名詞。わたくし。卑下して用いることが多い。
「風をいたみ岩打つ波の―のみくだけてものを思ふ頃かな」〈詞花・恋上〉
[副]自分自身で。ひとりでに。
「松の木の―起きかへりて」〈源・末摘花〉
[感]激して発する語。やい。ちきしょう。「己、逃がしてなるものか」
[代]一人称の人代名詞。おれ。おいら。近世には、江戸町人の女性も用いた。
[音]コ(呉) キ(漢) [訓]おのれ つちのと
[学習漢字]6年
〈コ〉おのれ。自分。「一己・自己・利己」
〈キ〉おのれ。「克己・知己」
[名のり]おと・な・み
[代]
1 一人称の人代名詞。わたくし。自分。
「常世辺(とこよへ)に住むべきものを剣大刀―が心からおそやこの君」〈万・一七四一〉
2 二人称の人代名詞。あなた。おまえ。なんじ。
「千鳥鳴く佐保の川門(かはと)の瀬を広み打橋渡す―が来と思へば」〈万・五二八〉
[補説]もと一人称であったものが、二人称に転用されたもの。
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十干の一つ。五行の土行のうち、陰の土をあらわす。自然界では、素朴な畑や田園の土に例えられる。穏やかで、粘り強く万物を育成していく性質がある。
出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報
〘代名〙 (「おのれ(己)」の変化した語) 対称。相手をいやしめののしっていう。うぬ。おまえ。きさま。
※かた言(1650)三「うぬ、うぬめ、をどれ、しどれなどいふことはあしかるべし」
※二銭銅貨(1926)〈黒島伝治〉三「畜生! おどれはろくなことをしくさらん!」
〘代名〙 (「おの(己)」の変化した語) 自称。おのれ。
※虎明本狂言・枕物狂(室町末‐近世初)「あふ夜は君のたまくら、こぬよはおぬが袖まくら」
〘代名〙
① (反射指示) その人、またはそのもの自身をさす語。自分。
※古事記(712)中・歌謡「御真木入日子(みまきいりびこ)はや 御真木入日子はや 意能(オノ)が命(を)を 盗み死せむと」
② 自称。われ。
※落窪(10C後)三「まだ幼くておのがもとにわたり給ひにしかば、我が子となん思ひ聞えしを」
③ 対称。おまえ。
※古本説話集(1130頃か)二八「いつ法師にはなりしぞ。したみつとてありし、をのがむすめは、いづちかいにし」
[補注]助詞「が」を伴うか、あるいは体言に直接冠した形で用いられ、独立しては用いられない。→
おのが・
おのれ
[1] 〘代名〙
① (反射指示) その人、またはそのもの自身をさす。自分。
※万葉(8C後)一六・三八八三「彌彦(いやひこ)於能礼(オノレ)神さび青雲のたなびく日すら小雨そほ降る」
※源氏(1001‐14頃)夕顔「白き花ぞおのれひとりゑみの眉開けたる」
② 自称。卑下の意をもつ場合に用いることが多い。われ。わたくし。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「山のあるじ、俊蔭にのたまふ『をのれは天上より来たり給し人の御子どもなり』」
③ 対称。目下の者に対するか、あるいは相手を見下し、またはののしる時に用いる。
※万葉(8C後)一二・三〇九八「於能礼
(オノレ)ゆゑ詈
(の)らえて居れば

馬
(あをうま)の面高夫駄に乗りて来べしや」
※竹取(9C末‐10C初)「かくや姫は、罪をつくり給へりければ、かく賤しきをのれがもとに、しばしおはしつる也」
[2] 〘副〙 自分自身で。自然に。ひとりでに。おのれと。
※源氏(1001‐14頃)末摘花「橘の木の埋もれたる、御随身召してはらはせ給ふ。うらやみ顔に、松の木のをのれ起きかへりて」
[3] 〘感動〙 相手に激して強く呼びかける時のことば。やい。また、単に自ら発奮する時にも用いる。うぬ。えい。
※今昔(1120頃か)二七「然て、季武が云なる様、いで抱かむ、己と」
[語誌](一)は上代から用いられ、同じ人称代名詞「おの」が助詞「が」を伴うか、あるいは直接体言に冠して用いられるのに対し、単独で用いられる場合が多い。
〘名〙 (土の弟の意) 十干(じっかん)の第六番目。五行説によって、五行の土に十干の己(き)を配したもの。き。
※色葉字類抄(1177‐81)「己 ツチノト」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報