(読み)ワレ

デジタル大辞泉 「我」の意味・読み・例文・類語

われ【我/×吾】

[代]
一人称人代名詞。わたくし。わたし。「―は海の子」
反射代名詞。その人自身。自分自身。おのれ。「―を超越する」
二人称人代名詞。おまえ。なんじ。
「そりゃ―が勝手了簡の聞き損ひ」〈浄・歌祭文
[類語](1吾人ごじん我が輩それがし自分わたくしわたしあたくしあたしあたいあっしわらわあちきおれ俺等おいらおらわし当方此方こちらこっちこちとら手前てめえ・愚輩・拙者身共なにがし不肖ふしょう小生愚生迂生うせい/(2自ら自分自身自己おのれ自分自身一身本人当人当事者当方張本人/(3貴方あなたお宅・貴方様・あんたおまえ貴様てめえおのれうぬそなたお主其方そっち

が【我】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]われ わ
学習漢字]6年
自分。自己。「我田引水個我自我彼我忘我没我
自分本位。ひとりよがり。「我意我見我執我利我流
インド哲学で、自我の本質。アートマン。「大我
[難読]怪我けが

わ【我/×吾/和】

[代]一人称の人代名詞。われ。わたくし。
「大野山霧立ち渡る―が嘆くおきその風に霧立ち渡る」〈・七九九〉
[接頭]名詞・代名詞に付く。
親愛の情を表す。「―おとこ」「―ぎみ」
「保つべき様を知らねば、―主の為にはかひあらじ」〈今昔・二七・四〇〉
軽んじあなどる気持ちを表す。
「―法師めが、人あなづりして」〈著聞集・一〇〉

が【我】

われ。自分。自我。「の意識」
自分の意志や考えを言い張って、人の言葉に従わないこと。わがまま。「あくまでもを張り通す」
《〈梵〉ātmanの訳》仏語。人間の個体そのもの。また、その個体の中心生命。
[類語]意地我意

わろ【我】

[代]「われ」の上代東国方言。
「―旅は旅とおめほどいひにして子すらむ我がかなしも」〈・四三四三〉

わぬ【我/×吾】

[代]一人称の人代名詞。「われ」の上代東国方言。
「うべ児なは―に恋ふなもつくのぬがなへ行けばこふしかるなも」〈・三四七六〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「我」の意味・読み・例文・類語

わ【我・吾・和】

  1. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙
    1. 自称。男女ともに用いる。格助詞「が」を伴うことが多いが、上代では、助詞「は」「を」「に」をも伴う。あ。われ。また、反射代名詞のように用いることもある。→わが(我━)
      1. [初出の実例]「嬢子(をとめ)の 寝(な)すや板戸を 押そぶらひ 和(ワ)が立たせれば 引こづらひ 和(ワ)が立たせれば」(出典古事記(712)上・歌謡)
      2. 「敷栲(しきたへ)の衣手離れて玉藻なす靡きか寝らむ和(ワ)を待ちかてに」(出典:万葉集(8C後)一一・二四八三)
    2. ( 反射指示 ) その人自身。自分自身。→わが(我━)
      1. [初出の実例]「宇津の山に至りて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに」(出典:伊勢物語(10C前)九)
    3. 対称。相手を親しんで呼びかける語。また、軽んじ卑しめる場合もある。→わが(我━)
      1. [初出の実例]「ゐんで、わが、さかさまに、いわふはしらぬ、連歌にあいて、もどったと云たらば」(出典:天理本狂言・箕被(室町末‐近世初))
  2. [ 2 ] 〘 接頭語 〙 名詞・代名詞に付けて対称の代名詞をつくる。多くは目下に用いる。親愛感や、身近な者への軽い敬意、また軽侮の気持を表わす。
    1. [初出の実例]「わおきなの年こそきかまほしけれ」(出典:大鏡(12C前)一)

我の補助注記

( 1 )「わ」は必ず助詞を添えて用い、単独の場合は「われ」を用いた。また、上代では「わどり」のように、名詞とも複合した。
( 2 )「わが」の形で連体修飾語となるものは、便宜上別項として扱った。


われ【我・吾】

  1. 〘 代名詞詞 〙
  2. 自称。わたくし。あれ。わ。
    1. [初出の実例]「須須許理が 醸みし御酒に 和礼(ワレ)酔ひにけり 事無酒 笑酒に 和礼(ワレ)酔ひにけり」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 「我なくなりぬとてくちをしう思くづほるな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  3. ( 反射指示 ) その人自身。自分自身。
    1. [初出の実例]「昔、いやしからぬ男、我よりはまさりたる人を思かけて、年へける」(出典:伊勢物語(10C前)八九)
    2. 「和田小太郎がわれにすぎて遠矢射るものなしとおもひて」(出典:平家物語(13C前)一一)
  4. 対称。多く中世以後に用いられ、目下や身分の低い者に呼びかける語。そなた。のちには、相手を卑しめて用いる。おまえ。
    1. [初出の実例]「われさへ、かくの給ふこそ心憂けれ」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)
    2. 「シュクラウ vareua(ワレワ) ドコエ ユクゾト トウニ」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)

が【我】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。人間の個体全体。また、その個体の中心生命。存在の構成要素としての実体。⇔無我(むが)
    1. [初出の実例]「其身長大、譬我大色少」(出典:法華義疏(7C前)譬喩品)
  3. 考えや決意などを固く守り抜こうとする心。意地。
    1. [初出の実例]「せひともがを御いたし候て、御なけきをやめられ、両人のこともたちのき御きもをいられ候はは」(出典:池田宣政文書‐天正一二年(1584)四月一一日・羽柴秀吉書状)
  4. 自分勝手なことを主張して、人に従おうとしない心。わがまま。我意。
    1. [初出の実例]「私は此点に於ても充分私の我(ガ)を認めてゐます」(出典:こゝろ(1914)〈夏目漱石〉下)
    2. [その他の文献]〔論語‐子罕〕
  5. 認識、意志、行動の主体として、他から区別される自分。自我。〔哲学字彙(1881)〕
  6. インド哲学におけるアートマンのこと。→アートマン

わろ【我・吾】

  1. 〘 代名詞詞 〙 自称。「われ(我)」の上代東国方言か。一説に、代名詞「わ」に接尾語「ろ」の付いたものとも。
    1. [初出の実例]「和呂(ワロ)旅は旅と思(おめ)ほど家(いひ)にして子持(め)ち痩(や)すらむ我が妻(み)(かな)しも」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三四三)

わぬ【我・吾】

  1. 〘 代名詞詞 〙 自称。「われ(我)」の上代東国方言。
    1. [初出の実例]「うべ子なは和奴(ワヌ)に恋ふなも立と月(つく)のぬがなへ行けば恋ふしかるなも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四七六)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「我」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

[字音]
[字訓] われ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 仮借
我は鋸刃(のこぎりば)の刃物の象形で、鋸の初文。義・羲は犠牲としての羊に我(鋸)を加える形。しかし我を鋸の義に用いることはなく、一人称の代名詞に仮借して用いる。〔説文〕十二下に「身に施して自ら謂ふなり」と一人称とし、また「或いは(い)ふ、我頃、頓(つまづ)くなり。戈に從ひ、(すい)に從ふ。は或いはふ、古の垂の字なり」と字形を説き、さらに「一に曰く、古のの字なり」という。卜文・金文の字形は鋸の形で、仮借して一人称とする。鋸はその形声の字で、我の初義を留める字である。

[訓義]
1. われ、わが、おのれ。
2. わたくし、私意。
3. 俄と通じ、俄傾、かたむく。

[古辞書の訓]
名義抄〕我 イタツキ・カタヰ 〔字鏡集〕我 ワレ・ワガミ・イタツキ・カタヰ

[部首]
〔説文〕〔玉〕に、義をその部に属する。羲も羊と我とに従う字で、下部のは羊の下体が切り離されている形である。

[声系]
〔説文〕に我声として(餓)・俄・峨・など十三字を収める。我は鋸の形で、我声の字に俄傾・嵯峨の意を含むものがある。は鳴き声を写す語。

[語系]
一人称の代名詞に仮借する。我ngai、吾nga、ngangは声近く、みな代名詞に仮借する。予・余・台(い)・(よう)もまた一人称代名詞として一系をなす語である。

[熟語]
我儀・我見・我山・我執・我生・我田我儂・我利我曹我輩
[下接語]
愛我・為我・畏我・誨我・貴我・棄我・毀我・啓我・軽我・個我・私我・自我・舎我・主我・小我・人我・推我・責我・全我・大我・適我・彼我・非我・撫我・物我・奉我・忘我・没我・無我・誉我・類我

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【アートマン】より

…サンスクリット語で,インド哲学において自我をあらわす術語。〈我(が)〉と漢訳される。…

【無我説】より

…固定的実体的な自己(我,アートマンātman)は存在しないとみる仏教独自の思想。サンスクリットでナイラートミヤ・バーダnairātmya‐vāda。…

※「我」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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