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東京都港区東・南部の地名。北は新橋,南は高輪(たかなわ),東は東京湾沿いの芝浦,西は三田・白金の台地に及ぶ地域。地名の由来は一帯が武蔵野の末の芝原であったからといい,また海岸にノリそだにする芝が見えたからともいう。1878年東京府15区の一つとして芝区が成立,89年東京市の発足によって東京市芝区となり,1947年赤坂区,麻布(あざぶ)区と合併して現在の港区となった。白金,三田,高輪の高台は明治政府の欧化政策によって外国公館や邸宅が建てられた地で,三井俱楽部や慶応義塾大学(現存する明治建築としては演説館と図書館)が残り,赤穂浪士の墓のある泉岳寺,北里研究所,国立自然教育園(現,国立科学博物館付属自然教育園)などがある。芝公園はもと増上寺の境内で,徳川将軍家の菩提寺であることから御成門,大門(だいもん)の名が残る。公園にはほかに丸山古墳と伊能忠敬測地遺功記念碑があり,58年には東京タワーが建てられた。すぐ北の愛宕(あたご)山は1925年,日本最初のラジオ放送が行われた所として名高い。東京湾岸の芝浦は明治初期から工場建設が盛んで,芝浦製作所(現,東芝)はじめ,電気,機械,車両,都市ガスなど重化学工業地帯としての歴史をもつ。明治末期からは埋立ても行われ,32年に芝浦岸壁が,34年には竹芝桟橋が建設されて伊豆諸島航路の発着点となっている。
執筆者:正井 泰夫
芝の名の文献上の初出は1486年(文明18)の《廻国雑記》にみる〈やかぬよりもしほの煙名にも立つ船にこりつむ芝の浦人〉である。1598年(慶長3)に徳川氏の菩提寺として貝塚(現,千代田区紀尾井町)より移された増上寺や,同じく1600年に愛宕山のふもとに移された青松寺などを間にして一帯に大名屋敷が並び愛宕下大名小路の名も生まれた。仙台藩伊達家や薩摩藩島津家の上屋敷などが大きかった。そしてここを南北に通貫する東海道沿いに町々が連なっていた。南からたどると牛車による運送業者の居住する車町,村方から町場化した田町各町,魚貝類を将軍へ献納することで御菜浦とよばれ漁業関係者の多い本芝,金杉,新網各町が続く。いずれも1662年(寛文2)に代官・町奉行両支配地となる。そして増上寺および芝神明(飯倉神宮)の門前各町がある。神明社には江戸三宮芝居として有名な芝居がかかりにぎわった。神明社周辺には書物問屋と関連業種の問屋商人も多かった。さらに芝口橋(新橋)へ向けて宇田川町,露月町,源助町,芝口各町などが続く。この中には慶長期に日比谷門辺より移転した芝口各町を含めて江戸城で御能拝見の特権をもつ古町が多い。また汐留川沿いに河岸,蔵地,物揚場が並び商業地となっており,幕末の資料によれば地廻米穀問屋,脇店八ヶ所米屋,舂米屋,炭薪仲買,両替屋などの問屋商人が多い。このほかに車町から田町にかけての東海道と並行する高台の往還沿いに伊皿子各町,泉岳寺門前,二本榎の門前各町が一画を形成している。1827-28年(文政10-11)の調査によれば当地域の町数95,総家数約1万軒(地主・家持447,地守・家守1045,地借1156,店借7315,明店54)であった。
執筆者:松崎 欣一
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東京都港区東部の地区、および旧区名。地名は芝浦(芝〈柴(しば)〉の生えた海浜)に由来する。以前は東京湾岸であり、北は新橋から南は高輪(たかなわ)までの広い範囲をさし、1947年(昭和22)赤坂・麻布(あざぶ)の旧区と合併して港区となるまで旧芝区であった。現在のJR山手(やまのて)・京浜東北線田町(たまち)駅および都営地下鉄三田(みた)・浅草線三田駅付近である。1393年(明徳4)貝塚(現、千代田区)に創建の増上寺(ぞうじょうじ)が1590年(天正18)徳川家の菩提寺(ぼだいじ)となり、1598年(慶長3)現在地に移ってから大寺として隆盛を極めた。その境内の一部が芝公園となり、一隅に東京タワーがある。芝大門(だいもん)の芝大神宮は江戸町民の大産土神(おおうぶすながみ)であった。
[沢田 清]
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