萩市(読み)ハギシ

デジタル大辞泉 「萩市」の意味・読み・例文・類語

はぎ‐し【萩市】

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日本歴史地名大系 「萩市」の解説

萩市
はぎし

面積:一三七・八四平方キロ

山口県の日本海側ほぼ中央、旧阿武あぶ郡の西北端に位置する。旧阿武郡の海岸線の多くは北長門きたながと海岸国定公園に編入されるが、萩は沖合の六島(大島・櫃島・肥島・羽島・尾島・相島)を含めてその中心地でもある。日本海側の海岸は山地が直接海に迫って平野が少なく、平地は阿武川下流の三角州と大井おおい川の沖積地のほかにはほとんどない。県下第二の河川阿武川は、三角州および沖積平野が比較的大きく、ここに萩市の市街が形成され、人口が集中する。

地名の初見は天文一九年(一五五〇)大内義隆寄進状(善福寺文書)で、

<資料は省略されています>

とあるが、「注進案」には「大井浦漁家弥左衛門所蔵永享三年大井奈古両浦寄鯨争論ニ付吉見家之時裁許書立物之内に萩浦と云々と有之」とあり、永享三年(一四三一)の文書に「萩浦」と記されていたという。阿武川は下流で東西に分れて三角州を形成するが、西を橋本はしもと川とよび、その左岸、現在の椿つばきから玉江浦たまえうらに至る間を南北朝頃までは椿浦と称したのに対し、東の松本まつもと川右岸を室町時代以降に萩浦とよんだらしい。

萩浦の範囲は時代によって変化があり、阿武川下流三角州の発達に伴いその海辺地域をも含めて萩浦とよぶようになる。天文元年この三角州の海辺に創建された常念じようねん寺の旧山号は萩津山であり、萩浦は萩津ともいわれたらしい。近世の地誌「長門金匱」に「当所を萩と申事は今、古萩と云所に人家あり、今の田町通りより南東は皆沼にて蘆原の水溜りなり、田も聢々無之よき道なし、東北の方当り萩村と云、後惣名萩と云也、本の名、所を古萩と云なり」とあり、三角州の東北海辺地帯は高燥で早く開発され、この地がもととなって萩の総名が生れ、元の地は古萩とよばれたことがわかる。

〔原始・古代〕

縄文時代の遺物は島や大井などから断片的に発見されているだけで、遺跡としてのまとまりは確認されていない。弥生時代になると、大井川や阿武川周辺の山麓が居住地に選ばれ、遺物や遺跡が豊富に出現する。とくに大井八幡宮周辺南向きの山麓傾斜地の宮の馬場みやのばば遺跡は、弥生前期から古墳時代にかけての大量の土器・石器の遺物が出土している。阿武川の三角州周辺にあたる山麓は小規模ではあるが、霧口きりぐちから椿八幡宮付近と上野うえの椎原しいばらにかけての中津江なかつえ台地一帯に鶴江つるえ前小畑まえおばた笠山かさやまを含めて広く分布する。さらに古墳時代の遺跡は弥生時代とほぼ重なるが、大井には大小の古墳が集中している。前小畑にも長添山ながそえやま古墳がある。見島には本村の横浦ほんむらのよこうら海岸に積石塚形式のジーコンボ古墳群がある。


萩市
はぎし

2005年3月6日:萩市と阿武郡田万川町須佐町むつみ村福栄村川上村・旭村が合併
【田万川町】山口県:阿武郡
【須佐町】山口県:阿武郡
【むつみ村】山口県:阿武郡
【福栄村】山口県:阿武郡
【川上村】山口県:阿武郡
【旭村】山口県:阿武郡
【萩市】山口県

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「萩市」の意味・わかりやすい解説

萩〔市〕
はぎ

山口県北部,日本海に臨む市。六島諸島見島を含む。東部は島根県に接する。1932年市制。1955年三見村,大井村,六島村,見島村の 4村を編入。2005年川上村,田万川町,むつみ村,須佐町,村,福栄村の 6町村と合体。中心市街地の萩は松本川,橋本川(→阿武川)の三角州に位置し,慶長9(1604)年毛利氏が築城,以来周防国,長門国の主都として発展。特産のナツミカン士族授産政策として発達した伝統産業である。山間部では林業が盛ん。水産業とかまぼこ,ウニなどの水産加工も行なわれる。沿岸には小噴火口をもつ笠山の陸繋島があり,玉江浦は東シナ海方面の遠洋漁業基地。萩焼,小萩人形,竹細工などの伝統工芸がある。萩城下町,萩城跡,旧萩藩御船倉,萩反射炉(→反射炉),明倫館水練池および有備館,松下村塾をはじめ,吉田松陰伊藤博文木戸孝允ら明治維新の志士たちにゆかりの史跡が多い。指月山,明神池,笠山コウライタチバナ自生地,見島のカメ生息地およびウシ産地などは国の天然記念物。市域の一部は北長門海岸国定公園および長門峡県立自然公園に属する。萩反射炉,恵美須ヶ鼻造船所跡大板山たたら製鉄遺跡(→たたら),萩城下町,松下村塾は国の史跡で,2015年世界遺産文化遺産に登録された。JR山陰本線,国道191号線,262号線,315号線,490号線が通じる。面積 698.31km2。人口 4万4626(2020)。

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