琵琶湖を眼下に眺望できる比叡山の東山麓に位置する。山号は戒光山、本尊は阿弥陀如来。全国に末寺四五〇余を有する天台真盛宗の総本山。参道には塔頭(宿坊)が六坊並んでいる。
〈近江・若狭・越前寺院神社大事典〉
西教寺の草創は、西教寺中興の祖真盛の高弟真生によって著された明応四年(一四九五)の「真盛上人往生伝記」によれば、良源が延暦寺の
しかし法勝寺はその後度重なる戦乱の兵火や火災によってしだいに衰微した。後陽成天皇は法勝寺の法脈の絶えるのを惜しみ、西教寺に法灯を相承すべく天正一八年(一五九〇)八月二二日に「既に退転に及ぶ由、歎き見し召さるる条、真智上人に預け置かれ候い訖んぬ。戒法を相続し執行の愍情を抽んせらるべきの旨者」という綸旨(寺蔵)を下した。これにより法勝寺流の戒場が当寺に移され、兼併することになった。同時に法勝寺の鎌倉時代の木造薬師如来坐像、同時代の華麗な法華経(色紙金銀箔散、いずれも国指定重要文化財)八帖をはじめとする数多くの聖教類・法具類が西教寺に伝来した。聖教類は編とよばれ、法勝寺流の戒灌の書で「師資伝授之宝器」(「法勝寺戒場記」寺蔵)であった。編には恵鎮、二世惟賢、一八世周嶺などの自筆書が含まれる。さらに文禄三年(一五九四)一一月には飯室谷の
西教寺は、恵鎮以降真盛が入寺するまでの一六〇年間は史料のうえに現れない。
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滋賀県大津市にある天台真盛宗の総本山。山号は戒光山。寺伝によれば,推古天皇のとき聖徳太子が創建し,天智天皇のとき阿弥陀仏像を安置,のち最澄が復興したという。980年(天元3)良源が再興して常行三昧を修し,ついで源信も念仏の道場となし,993年(正暦4)暹賀(せんが)のとき御願寺となる。のち1325年(正中2)恵鎮が復興し,大乗円頓戒を興して律寺とした。さらに1486年(文明18)真盛が入寺し,40余の仏殿堂舎を造営し,念仏と円頓戒を興隆した。よって真盛を中興第一祖とする。これより真盛一派が当寺を拠点として栄えたが,1571年(元亀2)織田信長の延暦寺焼打のとき,その余炎で焼失した。8世真源は再建を企て,89年(天正17)復興した。本堂は明智光秀の建立。91年には戒壇も再興された。延宝(1673-81)のころ比叡山の衆徒に当寺を延暦寺の末寺にしようとの動きがあったため,16世真然がこれに反対し,数十年間対立がつづいたが,輪王寺門跡の斡旋でその配下に属することとなり,天台律宗を号した。1872年(明治5)天台宗の支配を受けたが,78年独立して天台真盛派を公称した。1939年公布の宗教団体法により天台宗に統合されたが,47年宗教法人令の施行を契機に独立し,天台真盛宗の総本山となった。本堂および本尊阿弥陀如来像はともに重要文化財。そのほか観経曼荼羅,阿弥陀如来像(迅雲弥陀如来),釈迦如来像,天台大師像各1幅,薬師如来像1体,後土御門天皇,後柏原天皇宸翰各1幅など文化財が多い。境内に明智光秀,米田監物らの墓がある。
執筆者:伊藤 唯真
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滋賀県大津市坂本本町にある天台真盛宗(しんせいしゅう)の総本山。戒光山兼法勝(かいこうざんけんほっしょう)西教寺と称する。本尊は阿弥陀如来(あみだにょらい)。618年(推古天皇26)聖徳太子が恩師の高麗(こま)僧慧慈(えじ)、慧聡(えそう)のために創建したと伝えられる。その後、天台宗が盛んになるに及び、比叡山(ひえいざん)北方にあたる当寺にもその教線が及んだ。天暦(てんりゃく)年間(947~957)に元三慈恵(がんさんじえ)大師良源が復興再建して念仏の中央道場とした。1486年(文明18)中興開山の真盛上人(しんせいしょうにん)が入寺し、40余の堂塔と教法を再興して不断念仏を始め、いまなおその伝統が受け継がれている。1571年(元亀2)織田信長の比叡山焼打ちによって焼失したが、坂本城主となった明智光秀(あけちみつひで)が檀徒(だんと)となって1574年(天正2)に再建され、90年には山城(やましろ)(京都府)粟田口(あわたぐち)にあった法勝寺(ほっしょうじ)と合併した。1878年(明治11)天台宗真盛派本山となり、現在では全国に400余りの末寺をもつ。桃山御殿とよばれる客殿は、伏見(ふしみ)城から移築された書院造の建物で、本尊阿弥陀如来坐像(ざぞう)(平安後期)、梵鐘(ぼんしょう)(平安時代)、薬師(やくし)如来坐像(京都法勝寺伝来、秘仏)などとともに国の重要文化財。境内には明智光秀一族の墓がある。
[中山清田]
『『古寺巡礼 近江5 西教寺』(1980・淡交社)』
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