それから(読み)ソレカラ

デジタル大辞泉 「それから」の意味・読み・例文・類語

それ‐から[接]

[接]
前述事柄に続いて、あとの事柄が起こることを表す。その次に。そして。「家を出て、それから駅へ向かった」
前述の事柄に加えて、あとの事柄を示す。「鉛筆それから下敷きを買った」
[補説]書名別項。→それから
[類語]そしてそうして次いでして次にひいてついてはそしてそれ故だから従ってよって故にすなわちですからその上それにてて加えてあまつさえ更にかつまたなおかつおまけに加うるにのみならずしかのみならずそればかりかこの上それどころか

それから[書名]

夏目漱石小説。明治42年(1909)発表。人妻三千代に恋を告白した教養のある遊民長井代助苦悶を描く。

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精選版 日本国語大辞典 「それから」の意味・読み・例文・類語

それ‐から

[1] 〘接続〙
① 前の事柄に加えて後の事柄が起こることを示す。そして。続いて。また。
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「ヒトビトモ ヲウキニ ワラウテ ユルイテヤレバ、sorecara(ソレカラ) Esopo フロニ イッテ ミル トコロニ」
※浮世草子・好色一代男(1682)四「其後は、遊び宿の、口鼻(かか)となりながら、自由になりぬ。それから、婆々(ばば)になりて、すたりぬ」
② 前の事柄に後の事柄を加え、並べてあげる。そして。また。
北京幽霊(1943)〈飯沢匡〉三幕「あなたとそれからあなたのお母さんと二人が」
[2] 小説。夏目漱石作。明治四二年(一九〇九)発表。高等遊民長井代助と人妻三千代との恋愛の苦悶を描く。自然に従順であろうとする主人公の自己主張と社会的現実との矛盾文明批評的視野をもって描き出す。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「それから」の意味・わかりやすい解説

それから

夏目漱石(そうせき)の長編小説。1909年(明治42)6月27日より10月4日まで、東京・大阪の『朝日新聞』に連載。翌年1月、春陽堂刊。長井代助は実業家の父の援助無為徒食の日々を過ごしているが、職業のために汚されない自由な時間をもつことをむしろ誇りとしていた。ある日、友人の平岡が大阪での勤めに失敗して上京してくる。平岡の妻三千代と再会した代助は、改めて彼女への愛を確認し、2人の結婚に尽力した過去の虚飾を反省する。自己の自然な欲求を貫くか、「社会の掟(おきて)」に従って断念するかの二者択一に迷った代助は、ついに三千代を奪うことを決意する。しかし、三千代は病み、代助は父から義絶され、職業を探す必要に迫られる。愛における利己と利他という漱石文学の根本主題が初めて鮮明になった作品で、代助に託して語られる文明批評も思想家としての漱石の一面を彷彿(ほうふつ)する。先行作の『三四郎』、次作の『門』とあわせて三部作とみる説もある。

三好行雄

『『それから』(岩波文庫・旺文社文庫・角川文庫・講談社文庫・新潮文庫)』『越智治雄著『漱石私論』(1971・角川書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「それから」の意味・わかりやすい解説

それから

夏目漱石の長編小説。1909年(明治42)6~10月,東京・大阪の《朝日新聞》に連載。翌年春陽堂刊。主人公長井代助は,西洋と日本の関係がだめだから働かないと言って,実業家の父親に寄食する高等遊民である。彼は西洋を模倣する近代日本文明に失望し,また父親が信奉する封建道徳の偽善を批判しつつ,その鋭敏な自己意識ゆえに,自分の行為の動機を失っている。父親のすすめる政略結婚をことわり,友人の妻を奪うが,それを〈自然〉の意志に動かされたのだと自覚する。彼のゆく先には社会的破滅がある。〈自然〉に殉ずるか〈社会〉と妥協するかのジレンマに苦しむ主人公の運命を,明治社会の文明批評と重ね合わせて追求した迫力ある佳作である。
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デジタル大辞泉プラス 「それから」の解説

それから

1985年公開の日本映画。監督:森田芳光、原作:夏目漱石、脚本:筒井ともみ、撮影:前田米造、音楽:梅林茂、美術:今村力、録音:橋本文雄、宮本久幸。出演:松田優作、藤谷美和子、小林薫、笠智衆、中村嘉葎雄、草笛光子、風間杜夫ほか。第59回キネマ旬報ベスト・テンの日本映画ベスト・ワン作品。第10回報知映画賞作品賞受賞。第28回ブルーリボン賞監督賞、第40回毎日映画コンクール撮影賞、音楽賞、美術賞、録音賞受賞。第9回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞(小林薫)受賞。

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