剰え(読み)アマツサエ

デジタル大辞泉 「剰え」の意味・読み・例文・類語

あまつ‐さえ〔‐さへ〕【剰え】

[副]《「あまっさへ」の「っ」を、促音でなく読んでできた語》別の物事状況が、さらに加わるさま。多く、悪い事柄が重なるときに用いる。そのうえ。おまけに。「吹雪は止まず、剰え日も暮れてしまった」
[類語]さては更に然も且つそれにその上てて加えてこの上かつまたまたなおかつおまけに加うるにのみならずしかのみならずそればかりかそれどころか同時にひいてそれからそしてそうして次いでして次についてはひいてはそれ故だから従ってよって故にすなわちですから

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精選版 日本国語大辞典 「剰え」の意味・読み・例文・類語

あまっ‐さえ‥さへ【剰さえ】

  1. 〘 副詞 〙 ( 「あまりさえ」の変化した語。古くは「に」を伴うこともある。現代では「あまつさえ」 )
  2. 物事や状況がそれだけでおさまらないで、さらによけいに加わる意を表わす。そればかりか余分に。その上。おまけに。あまりさえ。あまさえ。
    1. [初出の実例]「越王を楼より出し奉るのみにあらず、剰(アマッサヘ)越の国を返し与へて」(出典太平記(14C後)四)
    2. 「つゐに飽き足る事なふて、あまっさへに宝をおとして其身をもほろぼすもの也」(出典:仮名草子・伊曾保物語(1639頃)下)
  3. ( 事態の異状なことなどに直面して ) 驚いたことに。あろうことか。あまさえ。
    1. [初出の実例]「剰(アマッ)さへ負る耳(のみ)ならず、尸(し)をのせてかへらうぞ」(出典:土井本周易抄(1477)一)
    2. 「しかるに彼れ等は少しも我れにしたしまずして、かへって我れを嫌ひ、あまつさへ、ややもすれば我れをころさんとす」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉二)

剰えの語誌

「剰」は唐の時代に行なわれた助字で、わが国では「あまりさへ」と訓読された。中世まで一般に「あまさへ」と表記されるが、これは「あまっさへ」の促音無表記。「落窪」には落窪の君の父の言葉に「あまさへ」の語が見えるところから、「あまっさへ」は平安時代にはすでに男子の日常語になっていたと考えられる。近世には「あまっさへ」と表記されるようになり、近代以降は文字に引かれて「あまつさへ」となった。


あま‐さえ‥さへ【剰さえ】

  1. 〘 副詞 〙 ( 「あまっさえ」の促音の無表記 )
  2. あまっさえ(剰━)
    1. [初出の実例]「余(アマサヘ)諸の苦を忍びむ」(出典:蘇悉地羯羅経延喜九年点(909))
    2. 「古来不双の美男の公家あり。あまさへ笛の上手たり」(出典:仮名草子・尤双紙(1632)上)
  3. あまっさえ(剰━)
    1. [初出の実例]「件の文の事をの給ひいだしたりければ、判官あまさへ封をもとかず、いそぎ時忠卿のもとへおくられけり」(出典:平家物語(13C前)一一)

あまり‐さえ‥さへ【剰さえ】

  1. [ 1 ] 〘 連語 〙 ( 名詞「あまり(余)」に助詞「さえ」の付いたもの ) 数量がある基準を超えることを強めた言葉。
    1. [初出の実例]「精舎に宝の函アリ。中に仏身有り。長さ余(アマリ)サヘ寸半」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)五)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 ( [ 一 ]が一語化した語 ) 物事がそれだけでおさまらずに、さらによけいに加わる意を表わす。そればかりか余分に。そのうえ。おまけに。あまっさえ。あまつさえ。あまさえ。
    1. [初出の実例]「明くる年は立ち直るべきかと思ふほどに、あまりさへ疫癘(えきれい)うちそひて」(出典:方丈記(1212))

あまつ‐さえ‥さへ【剰さえ】

  1. 〘 副詞 〙あまっさえ(剰━)

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