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コロイド colloid

翻訳|colloid

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

コロイド
colloid

膠質ともいう。拡散速度が著しく遅く,結晶化しにくい一群の物質に対してイギリスの化学者 T.グレアムのつけた名称。容易に結晶状態で得られるクリスタロイド (晶質) に対比される。ただし両者の間に本質的な差違があるのではなく,分散状態が異なるだけである。物質が 10-7~10-9m の粒度の微粒子で分散している状態をコロイド状態という。分散している微粒子を分散相,分散させている媒質を分散媒,両者を含めて分散系という。普通のコロイドは液体を分散媒とするもので,これをゾル,ゾルがゼリー状に変ったものをゲル,さらにゲルより分散媒が失われたものをキセロゲル (乾燥ゲル) という。また蛋白質,デンプン,ゴムなどの高分子化合物は分子それ自身がコロイド粒子の大きさの次元をもつので,分子コロイドといい,石鹸のように低分子化合物の分子が何個か会合してコロイド次元の大きさになったものを会合コロイド,ミセルコロイドという。コロイドは微粒子の分散相を含むため,単位質量あたりの表面積 (比表面積) が大きく,したがってコロイドの物性は界面化学との関連が深い。

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百科事典マイペディアの解説

コロイド

膠質(こうしつ)とも。肉眼や普通の顕微鏡では見えないが,普通の原子や分子よりも大きい粒子(直径約10(-/)5〜10(-/)7cm)として物質が分散している状態。
→関連項目暗視野顕微鏡限外ろ(濾)過サイズシグモンディシュリーレン法晶質粘弾性分散染料

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岩石学辞典の解説

コロイド

コロイドは二つの相からなる微細不均質(microheterogeneous)な物質で,その一つは他の中に分散している.例えば連続的な細胞の枠組みの中に形成されているジェリー状物質が,もう一方の空洞を埋めた液体などの場合がある.物質は通常の光学顕微鏡では認められないが,原子あるいは低分子よりは大きい粒子として分散しているときにコロイド状態にあるという.この分散系をコロイドあるいは膠質といい,分散粒子をコロイド粒子または単にコロイドという.普通のコロイドは液体を分散媒とするもので,これをゾルまたはコロイド溶液(colloidal solution)という.分散系には分子,コロイドダル,粗粒があり,コロイダル系は分散した粒子の直径が1/1 000 000mmと1/10 000mmの間にあるものと定義されている.これらは分子溶液(molecular solution)とは透析,透膜性が欠けていることで区別され,粗粒の分散とはこれらの独立した粒子が顕微鏡的に区別できないことで区別される.液体コロイドはゾルとして知られ,コアギュレーション(coagulation)生成物はゲルである.コアギュレーションは分散の度合いが減少した結果である.分散の度合いが増加するとペプチゼーション(peptisation)という.分散系の異なった型は次のようである[Ashley : 1909, Hubbart : 1922, 長倉ほか : 1998].
粗粒コロイド分子
(分散物+媒質)
固体+固体鉱物の固溶体青色の岩塩(NaCl中のNa)固溶体
固体+液体懸濁液(suspention)suspensoid溶液
固体+気体塵,火山灰
液相+液体乳濁液(emulsion)emulsoid溶液
液相+気体
気体+固体気体の包有物吸蔵された気体吸収された気体
気体+液体コロイド泡溶液
気体+気体溶液

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栄養・生化学辞典の解説

コロイド

 膠質ともいう.原子または分子が溶媒に均質に分散している状態を溶液というのに対して,微視的にはそれらより大きい粒子として分散している場合,それをコロイド状態にあるといい,粒子をコロイドもしくはコロイド粒子という.

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世界大百科事典 第2版の解説

コロイド【colloid】

均質な媒質中に直径1~500nm(10-6~5×10-4mm)程度の微粒子あるいは巨大分子が分散している状態(コロイド状態)にある系をコロイドあるいはコロイド分散系という。コロイドとはギリシア語のにかわ(膠)を意味するkollaに由来する名称で,膠質(こうしつ)ともいう。この大きさの粒子(あるいは分子)は普通の光学顕微鏡では見えず,また普通のろ紙を通り,見たところ通常の均一溶液と同じであるが,1粒子当り103~109個の原子を含んでいて,103個以下の原子から成る低分子が分散溶解している溶液とは異なる特徴的な性質を示すことが知られている。

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大辞林 第三版の解説

コロイド【colloid】

物質が0.1~0.001マイクロメートル 程度の微粒子(コロイド粒子)となって液体・固体・気体の中に分散している状態。膠にかわ・デンプン・寒天・卵白・マヨネーズ・煙などの類。膠質こうしつ・にかわしつ

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

コロイド
ころいど
colloid

ある物質が特定の範囲の大きさ(0.1マイクロメートル程度)の粒子となって他の物質の中に分散している状態をいう。コロイドという名称は、ギリシア語のκολλα(kolla、膠(にかわ))に由来している。そのために日本では以前、膠質(こうしつ)といったことがある。
 本来は、食塩や砂糖のような結晶性物質と、ゼラチンやデンプン、タンパク質などのような非結晶性物質を分けるための概念として、イギリスのグレアムが1861年に提唱したものであり、前者をクリスタロイド(晶質)、後者をコロイド(膠質)と名づけたのが始まりである。今日われわれの用いるコロイド関係の用語の多くは、グレアムによって制定されたものが少なくない。しかしその後の研究によって、デンプンやタンパク質も結晶することがわかり、コロイドの性質は、結晶性であるかどうかより、粒子の大きさなどのほうが大きく影響することがわかってきた。
 グレアムがこのような分類を行ったのは、水溶液の中における拡散の速度が、食塩やショ糖、塩酸などの水溶液と、膠やデンプン、タンパク質などの水溶液とでは、大きな差があることを発見したからである。この両方を含む水溶液と純水とを、硫酸紙あるいは膀胱(ぼうこう)膜などを隔てて接触させると、コロイドはこの膜を透過できないが、クリスタロイドのほうは純水の方向へ移動・拡散していくので分離できる。これを透析という。しかし、その後コロイド化学の発展につれて、コロイドの概念は拡張され、クリスタロイドのほうは影が薄くなってしまった。
 コロイドのなかには、厚さや太さが1~100ナノメートルの膜や繊維までをも含めて取り扱うことが多い。これらはそれぞれに、二次元コロイド、一次元コロイドという。さらに分子自体がナノメートルの桁(けた)の大きさのものになると、このような物質の溶液は、分子溶液であるのにコロイドとしての性質を示すことになる。つまりコロイド分散系である。デンプンやタンパク質、高分子物質の溶液はまさにこのような場合であり、これらを総称して分子コロイドまたは真正コロイドという。[山崎 昶]

分散質と分散媒

コロイド粒子が分散している(溶解しているとはいわない)液体をコロイド溶液というが、分散している粒子の物質を分散質(分散相ということもある)、分散の媒体を分散媒という。これは溶液における溶質と溶媒に対応している。デンプン溶液などでは、デンプンが分散質、水が分散媒となる。[山崎 昶]

コロイドの分類

分散質と分散媒の組合せによっては、特定の呼称がつけられているものがある。われわれの身の周りには食品、日用品、家庭用品その他多数のコロイドの実例が存在していることがわかる。また、分散質の集合状態によっても分類できる。
(1)ミセルコロイド(会合コロイド) 界面活性剤、せっけん、染料などのように、溶液の中で分子が数個から数十個会合して生じたミセルがコロイド粒子として分散しているもの。
(2)分子コロイド デンプン、タンパク質などの天然高分子や、ナイロン、塩化ビニルなどの合成高分子は、それだけで(分子1個で)コロイド粒子相当の大きさをもっている。したがって真の溶液のように分子分散をしていても、コロイド溶液としての性質が現れる。
(3)粒子コロイド 水酸化鉄や硫化ヒ素、あるいは金のゾル(カシウスの紫)などのように固体粒子や微結晶がコロイド粒子として分散しているものである。
 さらに、分散質と分散媒の親和性によって分類することもしばしば行われている。分散質と分散媒相互に親和性の大のものを親液コロイド、小のものを疎液コロイドという。水と油に対して、それぞれ親水コロイド、疎水コロイド、親油コロイド、疎油コロイドが存在する。
(1)親水コロイド 水を分散媒とするゾル(ヒドロゾル)のうちで、分散質が水との親和性に富むものをいう。デンプン、アルブミンなどの高分子電解質、あるいは界面活性剤からなるミセルなどはこの親水コロイドに区分される。少量の電解質を加えても簡単には凝結をおこさないが、アルコールとか、かなり大量の電解質を加えると凝結がおこる(たとえば豆腐など)。チンダル現象も疎水コロイドに比べて見えにくく、限外顕微鏡によっても粒子が認めがたいものが多い。表面張力は概して水より小、粘性率は水より大の傾向がある。
(2)疎水コロイド 水を分散媒とするコロイドのうち、ごく少量の電解質を加えるだけで容易に凝集、沈殿を生じるもの。一般に強いチンダル現象を示す。金属粒子や金属の硫化物などの無機物のコロイドの多くはこの疎水コロイドである。限外顕微鏡で容易に粒子を観察できる。[山崎 昶]

コロイド溶液の性質

コロイド分散系に光束を当てて側面から見ると、光の通路が鮮やかに光って見える。これをチンダル現象またはチンダル効果という。コロイド粒子による光の散乱である。コロイド粒子はそのままでは顕微鏡で見ることはできないが、限外顕微鏡によって粒子のブラウン運動を観察することができる。コロイド粒子は一般に電荷を保持していて、電極を入れて直流電圧を加えると、それぞれの電荷に応じて反対側の電極のほうへ移動する(電気泳動)。コロイド粒子は同符号の電荷をもっているために、互いに反発しているから溶液中に安定に分散しているのだが、これと反対符号の電荷をもつイオンを加えると、コロイド粒子間の反発力よりも引力がまさって凝集が始まり、ときには沈殿を生じる。これを凝析(凝結)という。凝析能力は多価のイオンほど大であり、豆腐をつくる際に塩化マグネシウムや硫酸カルシウムを加えるのは、これらが1価のイオンよりずっと低濃度でも有効に凝析をおこすことを利用している。廃水処理などで硫酸アルミニウムやミョウバンなどを添加するのも、アルミニウムイオンによる凝析の利用である。
 高分子の電解質を加えた際におこる凝析は、イオンの価数が大きいためにずっと顕著である。ベントナイトの懸濁液にドジョウを放すと、表皮から分泌される粘液の中の高分子電解質のために凝析がおこり水は清澄になる。この原理を定量分析に応用したのがコロイド滴定である。東京大学の寺山宏(てらやまひろし)により1948年(昭和23)に創案されたが、当初は好適な試薬が得がたかったこともあり、なかなか正当な評価を得られなかったが、近年、世界的に普及した便利な方法となった。
 コロイド溶液において、疎水コロイドが凝結するのを防ぐために親水コロイドを加えることがある。このようにすると分散系は安定になるが、この際に加える親水コロイドを保護コロイドという。[山崎 昶]

コロイド溶液のつくり方

巨大分子の溶液、すなわち分子コロイド溶液をつくるには、適当な溶媒を選んでゆっくり温めることにより簡単に可能となる。デンプンやゼラチン、寒天など台所で実際につくっている例には事欠かない。疎液コロイドやミセルコロイドをつくるには、これよりも多少むずかしい。ミセルコロイドは、界面活性剤、せっけんなどを臨界ミセル濃度(CMC)以上となるように注意して溶液をつくると生じる。金属のコロイドは、水中で放電により微粒子をつくらせたり、超音波で分散させたりして物理的に調整する方法と、化学的に還元によって微粒子をつくらせる方法がある。前にもあげた金のコロイドであるカシウスの紫は、塩化スズ()による還元を利用している。硫化水銀や水酸化アルミニウムなどは超音波分散法で調製できる。
 また、濾紙(ろし)上に集めた沈殿を熱水で洗うと、解膠(かいこう)(ペプチゼーション)によってコロイド溶液がつくられる。水酸化鉄()のコロイドはよくこの方法でつくられるが、重量分析などに際しては解膠がおきないように、硝酸アンモニウムなどの電解質を溶かした洗液で沈殿を洗うことになっている。水酸化鉄のコロイドは、塩化鉄()の濃厚溶液を熱水で希釈しても得られるし、希薄水溶液を加熱してもよい。温泉場などで売っている「湯の華(はな)」は硫化水素の酸化によって生じた硫黄(いおう)のコロイドを集めて固めたものである。浴用、薬用、化粧品として用いられる。
 いずれにせよコロイド溶液には多かれ少なかれ種々の不純物が混入してくる。粒の大きいものは濾紙で濾過して除けるが、イオン性の不純物を除くには、前にも述べた透析による。セロファン膜などの袋にコロイド溶液を入れて、袋の外側を新しい分散媒(水など)で洗うと、低分子のものは膜を透過するが、コロイド粒子は膜の内側に残るので精製できる。外側に直流電圧をかけて電場によるイオンの移動を利用すると、ずっと迅速に透析ができる。もっとも、コロイドによっては、あまり精製すると粒子上の電荷まで外れてしまい不安定となるものもあるので注意が必要である。[山崎 昶]
『近藤保・鈴木四朗著『やさしいコロイドと界面の科学』(1983・三共出版) ▽中垣正幸・福田清成著『コロイド化学の基礎』(1968・大日本図書)』

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世界大百科事典内のコロイドの言及

【グレアム】より

…33年にはリン酸の研究によって多価の無機酸(多塩基酸)の概念を提唱して,J.vonリービヒに影響を与えた。また液体の拡散を研究して非拡散物質を〈コロイド〉と命名,透析法を考案して〈コロイド〉と〈クリスタロイド〉を分離し,コロイド化学への道を開いた。彼の教科書《化学要綱Elements of Chemistry》(1841)は広くヨーロッパ全域で読まれた。…

※「コロイド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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