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ダイズ

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栄養・生化学辞典の解説

ダイズ

 [Glycine max].マメ目マメ科ダイズ属の一年生植物の種子.タンパク質を主たる貯蔵物質とするマメで,タンパク質の栄養価もよい.

出典|朝倉書店
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食の医学館の解説

だいず【ダイズ】

《栄養と働き》
 昔からダイズは、米、麦、アワ、キビとともに五穀(ごこく)の1つにあげられるほど日本人にとって大事な食糧源とされてきました。味噌、しょうゆ、とうふ、納豆、豆乳(とうにゅう)、湯葉(ゆば)など身近な加工食品としても知られています。
○栄養成分としての働き
 ダイズはたんぱく質、ビタミンB群が多く、「畑の肉」と呼ばれるにふさわしく栄養価の高い食品です。良質の不飽和脂肪酸を含み、動脈硬化予防や肥満をコントロールする食品でもあります。
 ダイズの脂質はその多くがリノール酸です。リノール酸は酸化されやすい脂質ですが、抗酸化作用の高いビタミンEもダイズには豊富なので安心して食べられます。また、リノール酸はコレステロールを低下させる作用があるので、高脂血症(こうしけっしょう)予防にも効果が期待できます。
必須アミノ酸バランスよく含有〉
 ダイズは体内で合成することのできない必須(ひっす)アミノ酸をバランスよく含んでおり、アミノ酸スコアは86と高い数値を示しています。体内利用率の高さは動物性たんぱく質と同等です。たんぱく質は筋肉や細胞の素となる栄養素ですから、健康を保つために欠かせないものですが、その摂取を肉類にばかりたよっていては脂肪のとりすぎになりかねません。ダイズはそうした心配もなく、良質なたんぱく質をとることができるため、最近では肉食中心の米国でも栄養価が注目されています。
 精白米に不足しているリジンというアミノ酸が補えるので、ご飯に味噌汁、といった伝統的な朝ご飯は、理にかなった組み合わせといえるのです。
 良質なたんぱく質とともに、ダイズの成分で重要な働きをするのがサポニンです。新鮮なダイズにはにがみや渋みがありますが、これはサポニンという物質のためです。
 サポニンのサポとは「泡のたつもの」を意味していて、水を加えて振ると泡立つ性質をもっています。ダイズを煮たときにでる泡に含まれているのがサポニンなのです。
 サポニンは体内で脂質の酸化を抑制し、過酸化脂質を低下させるので、血栓(けっせん)や動脈硬化の予防に効果があります。
 動脈硬化を予防する働きとしては、ほかに植物ステロールと呼ばれる物質も含まれています。これは小腸からコレステロールよりも先に吸収されて、その吸収を妨害することから、動脈硬化を防ぐのに役立つといわれているのです。
 また、腸から吸収されたブドウ糖が脂肪に変化するのを抑制する働きもあるので、常食すると肥満防止にも効果的だといわれています。
 カルシウムも豊富に含んでいるので骨を強化し、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防にも有効です。
女性ホルモンに似た働きをするイソフラボン更年期障害を緩和〉
 ダイズにはがんの抑制効果が高いといわれるイソフラボンも含まれています。イソフラボンは体内で女性ホルモンに似た働きをするため、乳腺や卵巣(らんそう)、前立腺(ぜんりつせん)といった器官に働きかけます。
 ダイズの摂取量の少ない欧米人は前立腺がんにかかりやすく、ほかの臓器に転移して死に至るケースが多いのですが、日本人男性の場合、そうしたケースが少ないのは、このイソフラボンが作用しているといわれています。
 女性にとっては、閉経後の高血圧や高脂血症、骨粗鬆症、顔のほてりなど更年期障害を緩和してくれる成分でもあります。
 また、米国の健康医療機関が1998年に行った研究では、ダイズのイソフラボンを定期的にとると、コレステロール値が10%低下するという結果を得ているといいます。
 ほかに、リン脂質の一種であるレシチンも含んでいます。レシチンは脳内の情報伝達物質を活性化するので、ぼけ防止や記憶力・集中力の強化にも役立ちます。
 そして、最近ではオリゴ糖の存在も注目されています。オリゴ糖は消化されずに大腸に達してビフィズス菌を増殖させるので、腸内環境を正常にして便秘(べんぴ)を改善します。
《調理のポイント
 生のダイズには、消化酵素を阻害する働きをもつ物質が含まれているため、消化されにくいのが難点。ダイズを調理するときは、ひと晩、水につけて十分に吸水させ、しっかり加熱することが大事です。
 その際は、豆の量の3倍の水に対して1%の塩水に豆をつけ、吸水させます。つけ汁には栄養分が流出しているので、捨てずに煮汁に加えるといいでしょう。
 ダイズを煮るときは、煮上がったときのかたさや形にバラつきがないよう、火を均一に回すようにするのがポイントです。火を均一に回すには、鍋の底にタケノコの皮やササの葉を敷くとよいといわれています。コンブや野菜といっしょに煮ても同様の効果があります。栄養面のバランスを考えると、コンブといっしょに煮るのがおすすめです。
 胃腸が弱い人や高齢者には、すりつぶして調理するといいでしょう。とうふ、厚揚げ、凍りどうふなどの加工品を利用するのもおすすめです。
 調理の際には、ダイズに不足しているカロテン、ビタミンCが補えるよう、緑黄色野菜、柑橘類(かんきつるい)などと組み合わせて摂取するとバランスがとれます。
 乾物のダイズを選ぶときは、色が冴えていて、皮に張りがあり、粒の揃(そろ)ったものが良品です。ダイズは湿気をきらい、虫がつきやすいので、密閉容器に入れて冷暗所で保存しましょう。
 栄養価の高いダイズですが、アレルゲン物質を含むので、アトピー性皮膚炎やぜんそくの人は摂取の際に注意が必要です。

出典|小学館
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ダイズ
だいず / 大豆
soybean
[学]Glycine max (L.) Merill

古名をオオマメ、ミソマメなどという。マメ科の一年草。種子(豆)を食用や加工原料、油やタンパク質原料、飼料などにするため、また茎葉全体を飼料とするために、温帯を中心とした地域で栽培される。[星川清親]

形態

茎は直立して0.6~1メートルになり、つる性の品種では2メートルに達するつるが他物に巻き付いて伸びる。種子は発芽すると、まず対生する2枚の子葉が開き、次に1対の初生葉が出る。初生葉は卵形の単葉で葉柄が短い。それから上の節には本葉が互生する。本葉は3枚の小葉からなる複葉で、まれに小葉が5枚の品種がある。小葉は先のとがった卵形で、長さ4~20センチメートル、幅3~10センチメートル。葉柄は長く、基部は膨らんで葉枕(ようちん)となり、付け根には1対の小さな托葉(たくよう)がある。根は発芽時に伸び出たものが主根となる。主根は地下約1メートルにも達し、多くの分枝根を出す。根には発芽後3週間ほどたつと球形や腎臓(じんぞう)形などの根粒が多く形成される。これは土中の根粒菌が寄生することによってできるものである。根粒菌は根粒内において空気中の窒素を固定するが、ダイズはこの窒素を成長の栄養源とし、また根粒菌はダイズが葉で光合成した炭水化物を供給されて、互いに共生関係をもって生活する。
 夏から秋に葉腋(ようえき)から短い花枝を出し、多数の花をつける。花は5弁の蝶形(ちょうけい)で、白、紫、淡紅色などである。各花枝に1ないし数個の花が実って莢(さや)となる。莢は長さ2~7センチメートルで、莢の中に1~5個、普通は2~3個の種子が入る。種子は球形あるいはやや楕円(だえん)形が一般的であるが、品種によっては扁平(へんぺい)のものもある。大きさは径5~10ミリメートル、重さは100個で10~45グラムである。種子の色は黄、茶、黄緑、淡緑、黒色など変化がある。種子が莢と連絡していた部分を臍(へそ)といい、臍の色も白、黄、茶、暗褐色など品種によって異なる。[星川清親]

分類

それぞれの用途別に多数の品種が育成されているが、草型や栽培型など、いくつかの特性に基づいて分類される。
 草型による分類は、分枝の性状、草丈などにより五つの基本型に分けられている。最近ではさらに分枝の数や分枝の広がり程度、長さ、出方、草丈などを組み合わせて8型に分けられている。また、主茎のつる性と分枝の伸長性から、真正蔓化(まんか)型、可変蔓化型、特殊蔓化型、正常型の4型に分類される。
 茎の生育習性による分類は、茎の成長と花芽のつき方の関係から、無限伸長型と有限伸長型とに分けられる。無限伸長型は、茎頂で節を増やして伸長しつつ、下位節から先に向かって順次花をつけるが、やがて茎先の生育が衰え、先端ほど莢の数が少なく、種子も未発達のまま終わる。この型は原生種に近いものと考えられ、中国東北部に多く分布する。また、現在アメリカで栽培されている品種の多くもこの型である。有限伸長型は、下位節で花芽が分化すると、茎頂での節の増加が止まり、茎先にも花芽が分化する。この花は下位節同様に結莢(けっきょう)し、種子は完熟する。日本で栽培されている品種のほとんどがこの型である。なお、両型の中間的な品種を半無限伸長型とよぶ。
 種子を播(ま)く時期と、開花、結実の時期とによっての分類もある。播種(はしゅ)期が早く、夏に結実する夏ダイズ型、遅く播き、秋に結実する秋ダイズ型、それらの中間型に分類する。また、開花までの日数と結実日数とによって9型に分類される。
 このほかアメリカやカナダでは、生育日数の長短により、00、0、、……の10群に分類している。最初の3群の品種では、生育日数は130日より短く、北部で栽培され、群より順に生育日数が長くなる。[星川清親]

日本の主要品種

ダイズは気候や土壌など環境によって生育が左右されるため、地方別に栽培品種が異なっている。
 北海道での代表的な品種はキタムスメ、キタコマチ、中生光黒(ちゅうせいひかりぐろ)、トヨスズなどである。トヨスズはダイズシストセンチュウへの抵抗性が強いので、1966年(昭和41)に育成されて以来急速に普及し、1973~1977年には作付面積第1位の品種となった。しかし気候などの影響で品質が悪くなることがあり、また、出芽時の障害も比較的多いので、近年は作付けが減少している。東北地方の代表的な品種はシロセンナリ、ミヤギシロメ、オクシロメ、ライデン、ナンブシロメなどで、シロセンナリの栽培がとくに多い。関東から中部地方でよく栽培される品種はエンレイ、納豆小粒(なっとうしょうりゅう)、タチスズナリ、玉光(たまひかり)などである。また近畿から九州地方で栽培される代表品種はタマホマレ、フクユタカ、アキヨシなどである。[星川清親]

栽培

夏ダイズは地温15℃以上となる5月中・下旬に種子を播くが、西南日本の暖地では4月上~中旬でも可能である。秋ダイズはそれよりも遅く6月中旬~7月中旬に播く。条間は50~60センチメートル、株間は15~25センチメートルが普通であるが、早生(わせ)や短茎の品種はさらに株間を詰めて密植する。また遅播きや少肥栽培とする場合、寒冷地ややせ地での栽培なども密植にする。播種量は10アール当り5~10キログラムである。アメリカなどでは条間70~90センチメートルで、株間7~10センチメートルのドリル播きとして高収量を得ている。播種後から生育初期にかけて鳥害を受けやすく、日本では昔から移植栽培も行われてきた。また東北や中部、北陸、山陰地方などの畑の少ない地域では、田の畦(あぜ)を利用した畦畔(けいはん)栽培が行われ、アゼマメともよばれる。
 生育に必要な窒素は根粒菌によりまかなわれるが、生育初期には窒素肥料を与えたほうがよい。また、とくに高収量を得るためには、根粒菌による窒素供給量では足りないので、生育の中期以降に窒素肥料を施すことが必要である。ダイズは他の豆類よりも酸性の土に耐えられるが、ダイズと根粒菌の成長にもっとも適した土壌水素イオン指数(pH)は6~7である。
 収穫は、葉が黄変して落ち始め、莢が熟したころに行う。一般に夏ダイズでは7月下旬~8月上旬、秋ダイズでは11月ころである。抜き取るか、地際から刈り取り、稲架(はさ)などにかけて干し、乾燥後脱粒する。大規模な経営ではコンバインを使って収穫する。乾燥は豆の水分が12%になるまで行う。水分が13%以上だと、貯蔵中に変質や虫害を受けやすい。
 おもな病気はモザイク病や萎縮(いしゅく)病、紫斑(しはん)病などで、害虫はヒメコガネやマメコガネ、マメシンクイガ、カメムシ類などである。ダイズシストセンチュウなど線虫類の害も大きい。
 ダイズは連作すると3~4年目から減収する。それはダイズセンチュウやネコブセンチュウの発生が増え、また病気や害虫が増えることによる。この連作害を防ぐため、イネ科作物を組み込んだ輪作体系がとられている。ダイズの線虫類はイネ科作物には寄生できないので、数年で駆除することができる。また、他の作物と混作することによっても病虫害を防ぐことができ、トウモロコシやサツマイモ、アワ、ジャガイモなどと混作する方法もとられている。ダイズは根粒菌の寄生により空気中の窒素を固定するので、混作しても窒素肥料の競合が少なく、他作物による日陰にも比較的耐えるので、有効である。[星川清親]

生産

2005年の世界の作付面積は約9138万7000ヘクタール、収穫量は約2億1000万トンである。そのうちアメリカは作付面積は2884万ヘクタール、収穫量は8282万トンで、作付面積、収穫量はそれぞれ世界の32%と39%を占め、世界第1位である。その栽培の中心となっているのは中央平原に位置する諸州である。第2位はブラジルで5020万トン、第3位はアルゼンチンで3830万トンである。この3国で世界の80%以上を生産している。
 日本では、明治、大正時代は、作付面積は40万~50万ヘクタールで推移したが、昭和になると満州(中国東北部)からの輸入により国内栽培は半分近くにまで減少した。第二次世界大戦後一時増加したが、その後アメリカからの輸入に依存するようになってふたたび減少が続き、昭和50年代には8万ヘクタールにまで落ちた。1978年から水田の転作にダイズ栽培が奨励されて12万7000ヘクタールとなり、その後しばらくは14万ヘクタール台で推移し、1993年(平成5)には8万7400ヘクタールまで減少、収穫量は10万0600トンとなった。しかし、その後は漸増に転じ、2005年現在の作付面積は13万4000ヘクタール、収穫量は22万6400トンである。10アール当りの収量は、明治後期に100キログラムを超えたが、その後あまり増えず、現在では120~190キログラムである。
 国内の収穫量が20万トン前後であるのに対し、輸入量は517万3000トン(2003)で、消費の大部分を輸入に頼っている。消費の内訳は、食用が約100トンで、加工用が約400万トンである。加工用はほとんどが製油用である。ほかに飼料用の脱脂大豆(大豆油かす)が輸入されている。[星川清親]

起源と伝播

ダイズの祖先種は東アジア(中国大陸北部、すなわちロシアとの国境に接する地帯、朝鮮半島南部、日本および台湾)に広く自生するツルマメG. ussuriensis Regel et Maackである。ツルマメは古代から食糧とされていた。このツルマメから今日の栽培ダイズが起源したが、その起源地は中国東北部、シベリア、アムール川流域と推定されている。この栽培型が紀元前3世紀から紀元後7世紀にかけて中国南部、朝鮮半島南部、日本および東南アジアの諸地域に伝播(でんぱ)した。また栽培ダイズはツルマメと中国南部に自生するトメントウザマメG. tomentosa Benth.との雑種起源であるという説もある。この栽培ダイズとは別に中国東北部には半野生型のマンシュウダイズG. glacilis Skvortzorが分布するが、これはツルマメと栽培ダイズの雑種起源である。
 中国での栽培は古く、最古の記録として『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』で神農の五穀播種の儀(前2700ころ)の作物の一つとしている。日本の古代では各地で自生しているツルマメを食糧として利用した証拠があるが、栽培ダイズは中国から縄文あるいは弥生(やよい)初期に渡来した。『古事記』(712)、『日本書紀』(720)の記述はその栽培の事実を明らかにしている。
 欧米に知られたのは意外に遅く、ヨーロッパへは、日本に1691年(元禄4)から2年間滞在したオランダの博物学者ケンペルによって1712年に紹介された。種子の導入は1740年で、中国からパリ植物園に入り、1786年にドイツで、1790年にイギリスのキュー植物園で試作された。しかし栽培化はされず、1908年にアメリカから初めてダイズ豆が輸入されるまで、ヨーロッパでは興味がもたれなかった。アメリカへはヨーロッパより遅く、1854年ペリーが日本から持ち帰ったのが最初であるが、農商務省で最初に試作されたのは1896年になってからである。しかし20世紀に入ってその栽培は急激に増加し、現在、アメリカは世界第一のダイズ産出国となった。ブラジルには1882年にヨーロッパから入り、その後急速に栽培が普及した。熱帯の多くの国々には20世紀に入ってから導入されたが、アフリカ、インドおよび西インド諸島では作物として成功しなかった。[田中正武]

食品と利用

ダイズの種子(豆)にはタンパク質と脂肪が豊富に含まれ、タンパク質を構成するアミノ酸は、米と組み合わせることによって必須(ひっす)アミノ酸のすべてを満たしている。このため、昔から、肉類の摂取量の少ない日本人にとって、大豆は重要な副食物として親しまれてきた。
 成分は品種や産地、栽培法などによって若干異なるが、標準的な乾燥状態の大豆100グラム中には、水分が12.5グラム、タンパク質35.3グラム、脂質19.0グラム、炭水化物では糖質が23.7グラムと繊維は4.5グラムで、デンプンはほとんど含まれない。また、灰分は5.0グラムが含まれている。
 完熟した大豆を粒のまま食べるのでは、煮たり焼いたりしても消化が悪いので、消化しやすい形に加工された食品が多く開発された。加工食品でもっとも多く利用されているものは豆腐で、1年間に約30万トンの大豆が豆腐に加工されている。そのほか油揚げやがんもどき、凍り豆腐、湯葉(ゆば)などに加工される。油揚げは固めの豆腐を薄く切って、水分を搾ってから揚げたもので、年間約15万トンの大豆がこれに使用されている。豆腐をつくるときにできる豆乳も滋養飲料とされ、搾りかすのおからも食用や飼料にされる。
 微生物を利用して大豆を加工する食品に納豆やみそ、しょうゆなどがあり、これらは古くから副食物として親しまれてきた。しょうゆは大豆油を搾ったあとの脱脂大豆を原料としたものが多い。大豆から搾った脂肪にはリノール酸やリノレン酸などが含まれ、良質の植物性食用油である。この食用油はマーガリンやマヨネーズなどの原料とされる。
 大豆のタンパク質を取り出して、種々の食品への加工や添加などに利用する技術が近年急速に発達した。この大豆タンパクはおもに脱脂大豆から生産され、製造工程によって脱脂大豆粉、濃縮タンパク、分離タンパク、組織状タンパク、繊維状タンパクなどの製品となる。このうち、現在もっとも広く使用されているのは組織状タンパクで、ひき肉と混ぜてハンバーグやシューマイ、ギョウザ、ミートボール、コロッケなどの加工食品に利用されている。また、繊維状タンパクからは上質の人工肉がつくられる。脱脂大豆は飼料としての利用も多く、とくに配合飼料には欠かせないものである。
 未熟な種子を利用するのが枝豆で、莢(さや)ごと塩ゆでして、総菜やおつまみとする。日本では枝豆としての需要がとくに多く、国内で作付けされるダイズの2割近くが枝豆用である。枝豆は冷凍食品として年間を通じて利用されている。
 ダイズの茎葉は、イネ科作物の約2倍の窒素、3.5倍の石灰を含むなど飼料としての価値が高く、生草のまま使う青刈り飼料、乾草、サイレージなどとして利用される。とくに青刈り用は2~3か月で収穫適期となり、牧草の生産量の低い夏場に良質の茎葉が得られる利点がある。栄養的には、イネ科飼料作物と組み合わせて利用するのがよい。
 根粒菌により、空気中の窒素を固定するので、緑肥として栽培されることもある。耕地に鋤(す)き込まれたあとの分解も容易で、地力の維持や増進に有益である。
 このほか、大豆は化学工業の原料としての需要も多く、特殊タンパクのカゼインや油からとったグリセリンが、接着剤、プラスチック、ペイント、せっけん、医薬品など多くの製品に利用されている。[星川清親]

料理

煮豆は大豆を用いたもっとも一般的な料理である。大豆を柔らかく煮るためには、煮る前に水に浸し十分吸水させる必要がある。大豆は組織が堅いので、浸水時間は少なくとも5~6時間必要とする。煮豆は、調理中どこで調味料を加えるかで豆の柔らかさや味の含み加減が違ってくる。煮始めから調味料を加えると豆が堅く締まり、皮にしわがよる。柔らかくゆでてから調味料を入れ、さらに煮ると、豆は柔らかくなるが味がしみ込みにくい。大豆を水で薄めた調味料に一晩浸して吸水させて煮たものでは、豆が柔らかく、味も中までよくしみ込む。希望の仕上がり状態によって煮方を選ぶとよい。五目豆は、ゴボウ、ニンジン、こんにゃく、蓮根(れんこん)などを大豆くらいの大きさに切って煮たものをいう。鉄火豆(てっかまめ)は、大豆を煎(い)り、油で炒(いた)めて調味したみそで和(あ)えたものである。新潟には大豆を利用した打豆(うちまめ)がある。大豆を1日水につけ、柔らかくなったところで木槌(きづち)で打って大豆を平たくする。これを煮物などに用いる。乾燥保存もでき、水でもどして使う。そのほか、水もどしした大豆をすりつぶしてみそ汁仕立てにした呉汁(ごじる)、高知県の煎り大豆をしょうゆに浸したしょうゆ豆などがある。[河野友美・山口米子]

民俗

日本人の食生活に深くかかわってきた大豆であるから、豆といえば大豆をさすほどに古くから栽培され、焼畑、常畑のほか、耕地の畦(あぜ)にもつくられた。かつては大豆になんらかの呪力(じゅりょく)を感じ取ったものらしく、たとえば節分に煎った大豆をまくことは、現在に至るまで行われている。これが災厄を払う意味であったことは、漁師が魔を払うために大豆を携えて船に乗り込んだり、厄年(やくどし)の人が厄逃れに大豆を辻(つじ)に持って行って捨てるなどの事例からもうかがえる。節分の豆をいろりに12粒または13粒、月の数だけ(旧暦による)並べて1年の天候を占うことや、この豆を保存して雷鳴の日に食べることなども長い間行われてきた。そのほかに、福島県や山形県では「ネムリナガシ」(眠り流し)といって、夏の眠気を覚ますのに、大豆の葉で目をこすってこれを川に流す。また旧暦9月の十三夜を豆名月ともいい、大豆を供える所が多いが、大豆の収穫儀礼の名残(なごり)をとどめるものとも考えられる。[湯川洋司]
『菊池一徳著『大豆産業の歩み――その輝ける軌跡』(1994・光琳) ▽郭文韜著、渡部武訳『中国大豆栽培史』(1998・農山漁村文化協会) ▽日本栄養・食糧学会監修、菅野道広・尚弘子責任編集『大豆タンパク質の加工特性と生理機能』(1999・建帛社) ▽森田雄平著『大豆蛋白質』(2000・光琳) ▽農林水産省農林水産技術会議事務局編『農林水産研究文献解題27 大豆――自給率向上に向けた技術開発』(2002・農林統計協会) ▽日本土壌肥料学会編『ダイズの生産・品質向上と栄養生理』(2005・博友社)』

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