打つ(読み)ウツ

デジタル大辞泉 「打つ」の意味・読み・例文・類語

う・つ【打つ】

[動タ五(四)]
物を他の物に向けて強く当てる。
㋐たたく。ぶつ。「平手で―・つ」「滝に―・たれる」
㋑勢いよくぶつける。「後頭部を強く―・つ」
㋒たたいて鳴らす。打ち合わせて、音を立てる。「柱時計が一二時を―・った」「太鼓を―・つ」
㋓たたいて移動させる。当てて飛ばす。「ホームランを―・つ」
㋔強く刺激する。「鼻を―・つ消毒薬のにおい」
㋕心に強い感動を与える。「雄渾ゆうこんな筆致が読者を―・つ」
1のようにして)物事をしたり、物を作ったりする。
くわなどで耕す。「田を―・つ」
㋑たたいて、平たくのばしたり、鍛えたりして作る。「そばを―・つ」「はくを―・つ」「太刀を―・つ」
㋒キーをたたいて信号を送る。発信する。また、印字する。「電報を―・つ」「タイプを―・つ」「携帯でメールを―・つ」
㋓布・綿・わらなどをたたいて、つやを出したり、やわらかくしたりする。「わらを―・つ」

㋐広がるように投げる。「投網を―・つ」
㋑まいて散らす。まきかける。「庭に水を―・つ」
㋒目標めがけて投げる。「つぶてを―・つ」
1のようにして)しっかりと取り付ける。
㋐たたいて、中へ入れ込む。「くいを―・つ」「やなを―・つ」
㋑さし入れる。突きさす。「はりを―・つ」「注射を―・つ」
㋒付け留めて高く掲げる。「高札を―・つ」
しるしをつける。「目盛りを―・つ」「読点を―・つ」
㋔しっかりと全体に張る。「掛け軸の裏を―・つ」
㋕ひも・糸などを組み合わせて、よる。「緒を―・つ」
㋖縄で縛る。縄をかける。「縄を―・たれた罪人」
ある事を行う。
㋐相撲・芝居などの興行をする。「芝居を―・つ」
㋑碁・ばくちなど、勝負事をする。「ばくちを―・つ」
㋒手段・方策を施す。「ストを―・つ」「手金を―・つ」「逃げを―・つ」
㋓そのような動作をする。「寝返りを―・つ」
㋔参拝をする。また、巡礼をする。「西国を―・つ」
動きが規則正しく繰り返される。「磯―・つ波」「脈―・つ」
火打ち石を強くぶつけて火をだす。
「をりをりに―・ちてく火の煙あらば心ざす香をしのべとぞ思ふ」〈貫之集
むちでたたくところから》馬を走らせる。
「佐々木判官時信は一里ばかり引きさがりて、三百余騎にて―・ちけるが」〈太平記・九〉
幕などを張る。
「生田の川のつらに、女、平張ひらばりを―・ちてゐにけり」〈大和・一四七〉
[可能]うてる
[動タ下二]《「打たれる」意から》
負ける。圧倒される。
「ことの葉はこはく見ゆれどすまひ草露には―・つるものにざりける」〈源順集
誓いを守らず神仏の罰を受ける。
「いかに和僧、起請きしゃうには―・てたるぞ」〈平家・一二〉
承服できる。合点がいく。
「小気味の悪い女郎ぢゃと、さすがの武士も―・てぬ顔」〈浄・天の網島
[補説]江戸時代には「うてる」という下一段形も行われた。
[用法]うつ・たたく――ほぼ同様の動作を表すが、「打つ」は「合図の太鼓を打つ」「時の鐘を打つ」「釘を打つ」のように、意志的な動作に重点をおいて用いられる場合がある。◇「たたく」は動作そのものを示す。「ボールをたたく」といえば、「打つ」よりも打撃の姿、勢いなどを想起させる。また、「太鼓をたたく」「かねをたたいて経を読む」など、繰り返し打ち続けることをいうことが多い。◇類義語の「殴る」は怒り・興奮などの感情を込めて強く打つ場合に用いる。「ぶつ」もほぼ同じだが、「殴る」にくらべて、怒り・興奮は浅く、打つ力も弱い。「そんなにぶたないでよ」のような用法もあり、この場合「殴る」に置き換えることはできない。◇「はたく」は、平たいもので打つ感じが強く、払いのけるような動作を伴うことが多い。「ほこりをはたく」「はえをはたく」などと用いる。
[類語]叩く殴るぶつ小突くひっぱたく叩きのめす打ち据えるぶん殴る殴り飛ばす殴りつける張る食らわすはたく噛ますぶち噛ますぶっ叩く張り飛ばす張り倒すぶちのめすぶっ潰す殴打する

ぶ・つ【打つ/撃つ/撲つ】

[動タ五(四)]《「うつ」の音変化》
たたく。なぐる。また、ぶつける。「子供のおしりを―・つ」「転んでひざを―・つ」
演説する、語る意などを強めていう語。「一席―・つ」
博打ばくちをする。
「飲むもし、―・つも可し、買うも可しだが」〈鏡花婦系図
[可能]ぶてる
[類語](1打つ叩く殴る小突くひっぱたく叩きのめす打ち据えるぶん殴る殴り飛ばす殴りつける張る食らわすはたく噛ますぶち噛ますぶっ叩く張り飛ばす張り倒すぶちのめすぶっ潰す殴打する

ぶっ【打っ】

[接頭]接頭語「ぶち」の音変化》動詞に付いて、その動詞の示す動作・作用を強める意を表す。「打っとばす」「打ったまげる」

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精選版 日本国語大辞典 「打つ」の意味・読み・例文・類語

う・つ【打・討・撃・撲・拍・擣・搏・伐・射】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 タ行五(四) 〙
    1. [ 一 ] 物に物を強く当てる。また、たたくような動作をする。強く刺激を与える。
      1. 物を、物に向けて強く当てる。たたく。ぶつ。ぶつける。
        1. (イ) 手や、鞭(むち)、杖(つえ)などの手に持った道具で、物をたたく。
          1. [初出の実例]「赤駒を宇知(ウチ)てさを引(び)き心引きいかなる背なか我がり来むといふ」(出典:万葉集(8C後)一四・三五三六)
          2. 「いたはしやつし王殿は、今は姉御を、うつかたたくかさいなむか」(出典:説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)中)
        2. (ロ) 雨、風、波、雷などが強くうちつける。自動詞的にも用いる。
          1. [初出の実例]「笹葉に宇都(ウツ)や霰(あられ)の」(出典:古事記(712)下・歌謡)
          2. 「追風の吹きぬるときはゆく船の帆手うちてこそうれしかりけれ」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二六日)
        3. (ハ) からだなどをあるものに強くぶつける。
          1. [初出の実例]「あいたやなふ、ああいかふこしをうったよ」(出典:虎明本狂言・神鳴(室町末‐近世初))
      2. 火を出すために、火打ち石をたたく。
        1. [初出の実例]「をりをりにうちて焚(た)く火のけぶりあらば心ざす香をしのべとぞ思ふ」(出典:貫之集(945頃)八)
      3. 楽器や手を鳴らす。
        1. (イ) ( 拍 ) たたいて鳴らす。
          1. [初出の実例]「皆人を寝よとの鐘は打(うつ)なれど君をし思へば寝(い)ねかてぬかも」(出典:万葉集(8C後)四・六〇七)
        2. (ロ) 弾いて鳴らす。弾ずる。
          1. [初出の実例]「天には琵琶をそ打なる」(出典:続日本後紀‐承和九年(842)八月甲戌)
      4. ( 擣 ) つやを出すために、砧(きぬた)で衣をたたく。また、柔らかくするために、藁(わら)などをたたく。
        1. [初出の実例]「葡萄染(えびぞめ)の織物の直衣(なほし)、濃き綾(あや)のうちたる、紅梅の織物など着給へり」(出典:枕草子(10C終)二七八)
        2. 「安寿は糸を紡ぐ。子王は藁を擣(ウ)つ」(出典:山椒大夫(1915)〈森鴎外〉)
      5. 弓の弦(つる)をはじく。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
      6. 古綿や繰り綿を綿弓ではじく。
        1. [初出の実例]「打綿の弓〈略〉もろこし人の仕業を尋ね、唐弓といふ物はじめて作り出し、世の人に秘(かく)して横槌にして打(ウチ)ける程に」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)五)
      7. 球戯で、球をたたいて飛ばす。
        1. [初出の実例]「つづいて第二球が来た。彼は此度は曲らぬ前を打たうと思って」(出典:学生時代(1918)〈久米正雄〉選任)
      8. ( 撲・搏 ) 相手と引っ組む。ぶつかり合って争う。〔名語記(1275)〕
      9. 製品を作るために、材料を鍛えたりして手を加える。
        1. (イ) 金属を鍛えて、刀剣などを作る。〔日葡辞書(1603‐04)〕
          1. [初出の実例]「此国の鍛冶、霊水を撰(えらび)て爰に潔斎して剣を打(うち)」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)出羽三山)
        2. (ロ) 弓、沓(くつ)、面などを作る。
          1. [初出の実例]「面ども打(うち)て、近江申楽(あふみさるがく)に遺物(ゆひもつ)しけるが」(出典:申楽談儀(1430)面の事)
        3. (ハ) 練り固め、たたいて、そば、うどんなどを作る。
          1. [初出の実例]「是非ともに又も来らばうちやせん うどんたらいでかへすきゃくしん」(出典:俳諧・古活字版中本犬筑波集(1532頃)雑)
      10. たたいて伸ばす。「金箔をうつ」
        1. [初出の実例]「錦の御旌(はた)を指し上げたるに、俄(にはか)に風烈しく吹いて、金銀にて打て著けたる月日の御紋きれて」(出典:太平記(14C後)一四)
      11. ( たたくような動作をするところから ) 田畑を掘り返す。耕す。
        1. [初出の実例]「山城女(やましろめ)の 木鍬(こくは)持ち 宇知(ウチ)し大根(おほね)」(出典:古事記(712)下・歌謡)
        2. 「打(うつ)田に稗(ひえ)はしあまたありといへど択(え)らえし我そ夜をひとり寝(ぬ)る」(出典:万葉集(8C後)一一・二四七六)
      12. ( むちでたたくことから ) 馬を走らせる。馬に乗る。
        1. [初出の実例]「然ば前(さき)に打(うち)て渡れ。頼信其れに付て渡らむと云て、馬を掻(かき)早めて打寄ければ」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
      13. 物事のきまりがついたことを祝って、手をたたく。手をしめる。
        1. [初出の実例]「『目出度く顔見世の御祝儀に打ちやせうか』『よいよいよい、よいよいよい』ト手を拍つ」(出典:歌舞伎・伊勢平氏栄花暦(1782)三立(暫))
      14. ( 「金を打つ」という形で ) 刀の刃、鍔(つば)、小柄(こづか)などをうち合わせて誓約する。金打(きんちょう)を行なう。
        1. [初出の実例]「観音の御前にして、師の僧を呼て、金打て事の由を申させて」(出典:今昔物語集(1120頃か)一六)
      15. しるしを付ける。
        1. (イ) たたくような動作で、しるしを付ける。銘を刻む。
          1. [初出の実例]「太衝(たいしょう)の太の字、点うつ、うたずといふ事」(出典:徒然草(1331頃)一六三)
        2. (ロ) 墨縄で、まっすぐな線を付ける。
          1. [初出の実例]「かにかくに物は思はじ飛騨人の打(うつ)墨縄のただ一道に」(出典:万葉集(8C後)一一・二六四八)
        3. (ハ) さお、縄などで、土地を測量する。「検地をうつ」
          1. [初出の実例]「サヲヲ vtçu(ウツ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      16. ( 太鼓を打つところから ) 芝居、相撲などを興行する。また、巡業する。
        1. [初出の実例]「三つの恵みも鎮常(とこしなへ)打てばはづさぬ陣太鼓」(出典:浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)五)
        2. 「寺勧化(くゎんげ)のために芝居を興行(ウチ)てへといって」(出典:滑稽本・続々膝栗毛(1831‐36)三)
      17. 針を突き入れる。また、注射をする。
        1. [初出の実例]「今の様にうごかせられては針が打(うた)れませぬ程に、動かぬ様に被成て被下い」(出典:虎寛本狂言・神鳴(室町末‐近世初))
      18. キーをたたいて操作する。
        1. (イ) ( キーをたたくところから ) 電報を発信する。
          1. [初出の実例]「一通の祝電をうった」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一〇)
        2. (ロ) タイプライター、ワープロ、パソコンなどを操作して文字を入力する。「ワープロをうつ」
      19. ( 鐘、太鼓をたたいたり、時計が打ったりして ) 時を知らせる。〔ロドリゲス日本大文典(1604‐08)〕
        1. [初出の実例]「床の間の置時計十時を打てば」(出典:不言不語(1895)〈尾崎紅葉〉二)
      20. たたくように動かす。ばたばたさせる。
        1. [初出の実例]「無心の鴎(かもめ)は其白き翼を搏(ウッ)彼方此方を翔け廻って居る」(出典:別天地(1903)〈国木田独歩〉下)
      21. 心や感覚器官に刺激や感動を与える。
        1. [初出の実例]「貴嬢(あなた)を見て美に撲(ウ)たれないものはない」(出典:めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉二)
        2. 「一歩踏込めば、臭気鼻を撲つ」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉六)
      22. ( 自動詞的な用法 ) いやな経験をして閉口する。気がふさぐ。
        1. [初出の実例]「そう気どられては、ちとうつね」(出典:洒落本・古今三通伝(1782))
    2. [ 二 ] たたいたり、はったりして、ある物を安定させる、固定する。また、ある状態に作りあげる。
      1. くぎ、くいなどを、たたいて入れこむ。
        1. [初出の実例]「泊瀬(はつせ)の川の 上つ瀬に 斎杙(いくひ)を宇知(ウチ) 下つ瀬に 真杙(まくひ)を宇知(ウチ)」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. 額や札などをうちつける。掲げる。とりつける。
        1. [初出の実例]「黒糸威の鎧(よろひ)に、鍬形(くはがた)(うっ)たる冑(かぶと)を着」(出典:保元物語(1220頃か)中)
        2. 「門に額かくるを、うつといふはよからぬにや。勘懈由小路二品禅門は、額かくるとのたまひき」(出典:徒然草(1331頃)一六〇)
        3. 「何がし学校の記章打ったる帽子」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉二)
      3. 紙や、膏薬などをはり付ける。
        1. [初出の実例]「ほうぐえりいだして、料紙にすかせて、経かき、またさながらうたせて」(出典:建礼門院右京大夫集(13C前))
        2. 「数ケ所の疵所(きずしょ)へ膏薬打ち」(出典:歌舞伎・芽出柳緑翠松前(1883)大詰)
      4. (荷物などを)積み加える。
        1. [初出の実例]「ますますも 重き馬荷に 上荷(うはに)(うつ)と いふことのごと」(出典:万葉集(8C後)五・八九七)
      5. 物をうちつけたりして、仮に作り設ける。
        1. (イ) 桟敷(さじき)、梁(やな)、屋根などを構え作る。
          1. [初出の実例]「いにしへに梁打(うつ)人の無かりせばここにもあらまし柘(つみ)の枝はも」(出典:万葉集(8C後)三・三八七)
        2. (ロ) 幕や綱などを張る。
          1. [初出の実例]「生田の川のつらに、女、平張(ひらばり)をうちてゐにけり」(出典:大和物語(947‐957頃)一四七)
      6. 門などをしめる。とざす。「城戸をうつ」
        1. [初出の実例]「表御門、裏御門両方打たる館の騒動」(出典:浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵(1748)三)
      7. (かたちが整うように)添える。
        1. [初出の実例]「先(まづ)(わん)折敷(をしき)に箸(はし)までうって、皿、小道具までを三人の請取にて出せば」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)四)
      8. ひも、縄、むしろなどを編む。組む。〔日葡辞書(1603‐04)〕
        1. [初出の実例]「大勢の人に法華をこなされて〈越人〉 月の夕に釣瓶縄(つるべなは)うつ〈傘下〉」(出典:俳諧・曠野(1689)員外)
      9. 罪人などに縄をかけたり、枷(かせ)をはめたりして動けなくする。「縄を打つ」
        1. [初出の実例]「足を牢より引き出だし左手(ゆんで)右手(めて)へ取ちがへ、山だし七十五人してひいたる楠の木にてあげほだしをうたせ」(出典:浄瑠璃・出世景清(1685)四)
      10. 型に流し込んで固める。〔日本建築辞彙(1906)〕
        1. [初出の実例]「掘り方を終えると、すぐ、コンクリを打つ作業にかかるはずだった」(出典:岬(1975)〈中上健次〉)
    3. [ 三 ] 手、または道具を使って遠くへ飛ばす。また、投げるような動作で、あることを行なう。
      1. ( 撃・射 ) 投げる。放つ。発射する。また、当てて傷つける。
        1. (イ) 物を投げる。道具から発射する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
          1. [初出の実例]「蛸(たこ)の大頭を目懸けて短銃(ピストル)ポンポン打つんだが」(出典:彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉風呂の後)
        2. (ロ) (投げたり、発射したりして)当てる。当てて傷つけ殺す。
          1. [初出の実例]「南のおとどより、かうじを一つなげて、大将をうつ人あり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
          2. 「庭に雀のしありきけるを、童部(わらはべ)、石をとりて打たれば」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
      2. 投げ広げる。撒(ま)く。
        1. (イ) 物を投げ広げたり、撒いたりする。
          1. [初出の実例]「いざさらばまめをうたふ」(出典:虎明本狂言・福の神(室町末‐近世初))
          2. 「それぞれに風呂敷打って侘花見」(出典:雑俳・もみぢ笠(1702))
        2. (ロ) (網を投げて)とらえる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      3. (身を)思い切って投げ捨てる。ほろぼす。
        1. [初出の実例]「命惜しいほどなら高で身をうつこともない」(出典:浄瑠璃・生玉心中(1715か)下)
      4. ばさっと落とす。
        1. [初出の実例]「イカリヲ vtçu(ウツ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    4. [ 四 ] 武器などで、傷つけ倒す。
      1. たたいたり切ったりして傷つけ殺す。
        1. [初出の実例]「久米の子らが 頭椎(くぶつつ)い 石椎(いしつつ)いもち いま宇多婆(ウタバ)良らし」(出典:古事記(712)中・歌謡)
        2. 「討(うっ)て捨(すつ)ると刀の柄に手をかくる」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)上)
      2. 攻撃する。相手の弱点をつく。
        1. (イ) ( 討・伐 ) 攻める。攻め滅ぼす。
          1. [初出の実例]「兵を興し衆を動して咀叉始羅国を伐(ウツ)」(出典:大唐西域記巻十二平安中期点(950頃))
        2. (ロ) ( 駁 ) 非難する。他人の意見などを攻撃する。
          1. [初出の実例]「てれん上人といふ此宗旨の尻持、強(あなが)ちに女道宗を破して〈略〉諸の流身派の女道門をうつ事」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
      3. たたき切る。切りとる。
        1. [初出の実例]「佐野山に宇都(ウツ)や斧音(をのと)の遠かども寝もとか子ろがおもに見えつる」(出典:万葉集(8C後)一四・三四七三)
    5. [ 五 ] 時機を失しないである事を行なう。すばやく動作する。たたくような動作に関係する場合が多い。
      1. (ご)すごろくなどの遊戯をする。
        1. [初出の実例]「まかり通ひつつ碁うちける人のもとに」(出典:古今和歌集(905‐914)雑下・九九一・詞書)
        2. 「かのよみかるたうつ人の」(出典:談義本・世間万病回春(1771)三)
      2. ばくち、遊びなどにふける。「どらをうつ」
        1. [初出の実例]「ばくちの負きはまりて、残りなく打ち入れんとせんにあひては、うつべからず」(出典:徒然草(1331頃)一二六)
        2. 「拳を打ったり歌を唱ったり」(出典:油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉八)
      3. 強盗などをはたらく。
        1. [初出の実例]「事外世上盗人夜々打候。此御所へも可打由雑説あり」(出典:言継卿記‐大永七年(1527)五月六日)
      4. 総金額のうち、いくらかを渡す。また、品物の交換などで、不足金を支払う。「手金をうつ」
        1. [初出の実例]「『庄六。替へんかい』『なんぼううつぞ』『やみぢゃ』『滅相な。たかでまたげの仕事にやみ打ってたまるもんかい』」(出典:歌舞伎・桑名屋徳蔵入船物語(1770)三)
      5. 祝儀などを与える。心づけをやる。「花をうつ」
        1. [初出の実例]「お衆さまがた持あはせが御座らばすこしの露をうたしゃりましょ」(出典:浮世草子・俗つれづれ(1695)五)
      6. ある手段をとる。「にげをうつ」「なげをうつ」「ストをうつ」
        1. [初出の実例]「敵の上手(うはて)をうたんと申し候ひつるは、ここ候ふぞ」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)
      7. 急激にひっくり返るような動作をする。「もんどりをうつ」「なだれをうつ」 〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
        1. [初出の実例]「枕に就いて二三度臥反(ねかへ)りを打ったかと思ふと」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
    6. [ 六 ] 周期的、もしくは等間隔に繰り返される動作・状態についていう。
      1. (イ) 「…をうつ」の形で用いる。「脈を打つ」
        1. [初出の実例]「左右の三邪ともに一向に脉うたざるをば双伏といへり」(出典:全九集(1566頃)一)
        2. 「肩を揺り越した一握りの髪が軽くうねりを打つ」(出典:倫敦塔(1905)〈夏目漱石〉)
      2. (ロ) ( 自動詞的な用法 ) 等間隔で動きを繰り返す。「心臓がうつ」
        1. [初出の実例]「動悸は相変らず落ち付いて確に打ってゐた」(出典:それから(1909)〈夏目漱石〉一)
      3. (ハ) ( 自動詞的な用法 ) ずきずきする、どきどきするような動作にいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
        1. [初出の実例]「頭痛がうったり脚病がしたりするのは」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 タ行下二段活用 〙うてる(打)

ぶ・つ【打・撃・撲】

  1. 〘 他動詞 タ行五(四) 〙
  2. たたく。なぐる。また、からだを物に強く打ちつける。うつ。
    1. [初出の実例]「真額をぶてば、なまくら物は鍋の釣の様になるべい」(出典:雑兵物語(1683頃)上)
    2. 「三ちゃんを何故ぶつ」(出典:たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉五)
  3. 博打をする。賭事(かけごと)をする。うつ。
    1. [初出の実例]「ぶつに買愛想こそうつきたどら」(出典:雑俳・柳多留‐四(1769))
  4. (時計が打って)時をしらせる。うつ。
    1. [初出の実例]「モウ起きなさいよ、十一時が打(ブ)ったから」(出典:菊池君(1908)〈石川啄木〉三)
  5. 発射する。うつ。
    1. [初出の実例]「鉄砲を打(ブ)たなけりゃア乃公が殺される所だ」(出典:塩原多助一代記(1885)〈三遊亭円朝〉二)
  6. 語る・演説する意を強めていう。「一席ぶつ」
    1. [初出の実例]「それぢゃ一つ芝居演(ブ)つこと連中(みんな)と相談打(ブ)つべエー」(出典:落語・田舎芝居(1899)〈六代目桂文治〉)

打つの語誌

( 1 )「うつ」の強調形ととらえることができ、「うつ」に比して口頭語的である。
( 2 )「ぶつ」が文献に現われるのは、一七世紀後半であるが、接頭語としてはそれより早く、「ぶっきり」という例が「申楽談義」にみえる。
( 3 )東国方言的要素の強いといわれる「雑兵物語」に多数の例がみられるが、近松の浄瑠璃や「狂言記」等にも用例がみられ、東国語に限らず庶民の間で使用されたものと考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「打つ」の解説

うつ【打つ】

そば・うどんなどの麺を作ること。穀類の粉を水でこね、薄くのばして細長く切ったり、製麺機を用いたりして、麺の形状にする。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

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