海人・海士・海女・蜑(読み)あま

精選版 日本国語大辞典 「海人・海士・海女・蜑」の意味・読み・例文・類語

あま【海人・海士・海女・蜑】

[1] 〘名〙
① (海人・蜑) 海または湖で魚類、貝類、海藻などを取るのを業とする人。上代には諸所に置かれた海人部(あまべ)に属し、海産物朝廷に貢納し、航海にも従事した。漁夫。漁人。あまうど。あまびと。いさりびと。りょうし。
※古事記(712)下・歌謡「大魚(おふを)よし 鮪(しび)突く阿麻(アマ)よ 其(し)が離(あ)れば うら恋(こほ)しけむ 鮪突く志毘(しび)
② 「あまべ(海人部)」の略。
書紀(720)応神五年八月(北野本訓)「海人(アマ)(をよ)び山守部(やまもりへ)を定(さた)む」
③ (海士海女) 海にもぐってアワビなどの貝類や、テングサなどの海藻を採取するのを仕事とする人。海士(おとこあま)と海女とがあり、主として生理的な理由から、しだいに海女の活躍が著しくなった。海岸近くで操業する徒海女(かちあま)と、船で沖へ出て潜水する沖海女(おきあま)とがある。かずきのあま。かずきめ。あまおとめ。《季・春》
万葉(8C後)三・二九三「塩干(しほかれ)の三津の海女(あま)のくぐつ持ち玉藻刈るらむいざ行きて見む」
※六百五十句(1955)〈高浜虚子〉昭和二三年「海女(アマ)沈む海に遊覧船浮む」
[2]
[一] 龍宮珠(たま)取り伝説の海女。藤原不比等(ふひと)が、龍神に奪われた明珠をとりもどそうと、讚岐志度の浦の海女と契りをこめた。海女は藤原房前(ふささき)を生み、その恩愛にひかされて龍宮へ行き、明珠を奪い返したが、追われてそれを乳の下を切って隠し、龍に害されながら明珠だけは無事不比等に伝えた、という伝説。「志度寺縁起」に載る。
[二] (海士・海人) 能楽。五番目物。各流。世阿彌改作。(一)の伝説を脚色したもの。
[三] (海士) 島根県、隠岐諸島の島前(どうぜん)東部の中ノ島にあった郡。「海夫」「海部」とも書いた。昭和四四年(一九六九隠岐郡に統合されて消滅。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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