デジタル大辞泉
「照」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
てら・す【照】
〘他サ五(四)〙
① 光をあてる。また、光をあてて明るくする。
※万葉(8C後)二〇・四四八六「
天地を弖良須
(テラス)日月の極
(きはみ)なくあるべきものを何をか思はむ」
② 恥をかかせる。つめたくあしらう。ふる。江戸深川の遊里でよく用いられた。
※浮世草子・風流曲三味線(1706)四「粋自慢せし手代共、
口利きの末社迄照
(テラ)され」
※雑俳・桜の実(1767)一四「身請とはてらされぬいたおんづまり」
※
洒落本・南遊記(1800)二「その已前事
(ふるいこと)を隠さずに照
(テラ)して
じゃだけが、いっこ可愛らしい」
④ くらべあわせる。みくらべる。てらしあわせる。
※
愚管抄(1220)七「これは君の御ため摂籙臣と
将軍とおなじ人にてよかるべしと、一定てらし御さたの侍る物を、そのゆゑあらはなり」
※銀の匙(1913‐15)〈
中勘助〉後「自分ひとりの経験に照してみても」
⑤ 能楽で、顔をやや仰向けて、面を少し上むきにする。
気持が解放されて、喜びの感情を表現する型。⇔
曇らす。
⑥ 焼く、燃やす、煮るの意の、盗人仲間の隠語。〔隠語輯覧(1915)〕
て・る【照】
〘自ラ五(四)〙
※万葉(8C後)二・一七七「朝日弖流
(テル)佐田の
岡辺に
群居つつ吾が泣く涙やむときもなし」
※前田本枕(10C終)五「夏は日いたうてり」
②
つやよくかがやく。美しく光る。色美しく映える。
※
古事記(712)下・
歌謡「
葉広 斎
(ゆ)つ真椿 其
(し)が花の 弖理
(テリ)坐
(いま)し」
※大唐西域記長寛元年点(1163)七「重閣層台奐
(テリ)甚だ
麗飾(うるは)しく」
④ 能楽で、
演者の顔がややあおむいて、面が少し上むきになる。気持が解放されて、喜びの感情が表現される型。⇔
曇る。〔わらんべ草(1660)〕
てり【照】
① 照ること。日が照らすこと。また、光を放つこと。
※万葉(8C後)一八・四〇六四「大君はときはにまさむ橘の殿の橘ひた底里(テリ)にして」
※新古今(1205)春上・五五「てりもせず曇りもはてぬ春の夜の
朧月夜にしく物ぞなき〈
大江千里〉」
※談義本・艷道通鑑(1715)四「㒵(かほ)はいつも土賊(とくさ)色にして紅葉の照(テリ)を見ず」
てらし【照】
〘名〙 (動詞「てらす(照)」の連用形の名詞化)
① 太陽・月・火・灯火・火薬など、明るく輝くもの。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
※老車夫(1898)〈内田魯庵〉「草鞋が二足、蝋燭(テラシ)が二本、腹も減りゃア飯の支度もせざアならねヱし」
② 恥をかかせること。つめたくあしらうこと。
※浄瑠璃・神霊矢口渡(1770)一「アイきついおてらしさ。わっちゃ此間登りいして、まだ勝手をしらないから江戸詞を云いやすによ」
③ (「居稼」とも書く) 遊女屋の店先に並んでいて客の指名を待つ遊女。顔が客によく見えるように明るく照らしたところからの称という。見世付き女郎。〔商業符牒袖宝(1884)〕
てれ【照】
〘名〙 (動詞「てれる(照)」の連用形の名詞化)
① 間の悪い思いをすること。きまりの悪い思いをすること。
※洒落本・婦美車紫
(1774)目録「東雲のてれ」
※黄表紙・金銀先生再寝夢(1779)「鼻であしらはれて大てれなり」
② 座のしらけること。
※洒落本・世説新語茶(1776‐77か)笑止「たばこも呑あきはな紙を出して鶴をおる。此間しばらくのてれ也」
て・れる【照】
〘自ラ下一〙
① 個人的な事情が公になってしまい、はずかしそうな態度をする。きまりわるがる。はにかむ。
※雑俳・川柳評万句合‐明和四(1767)礼六「にた人に目礼するはてれたもの」
② 興がさめる。座がしらける。
てらさ‐・う ‥ふ【照】
〘他ハ四〙 (動詞「てらす(照)」に反復、継続を表わす助動詞「ふ」が付いてできたもので、物をはっきり見せるようにするというところから) =
てらう(衒)※万葉(8C後)一八・四一三〇「針袋帯び続けながら里ごとに天良佐比(テラサヒ)歩けど人も咎めず」
と・る【照】
〘自ラ四〙 動詞「てる(照)」の上代東国方言。
※万葉(8C後)一四・三五六一「金門田をあらがきまゆみ日が刀礼(トレ)ば雨を待とのす君をと待とも」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報