(読み)ドウ

デジタル大辞泉 「洞」の意味・読み・例文・類語

どう【洞】[漢字項目]

常用漢字] [音]ドウ(慣) トウ(漢) [訓]ほら
〈ドウ〉
筒形に抜け通る穴。ほらあな。「洞窟どうくつ洞穴洞門空洞風洞鍾乳洞しょうにゅうどう
奥深い場所。婦人の部屋。また、仙人の住まい。「洞房・洞天」
奥底まで見抜く。「洞見洞察
〈トウ〉仙人の住まい。「仙洞
〈ほら〉「洞穴
[難読]雪洞ぼんぼり

ほら【洞】

がけ・岩・大木などにできた、中のうつろな穴。ほらあな。「木の
[類語]洞穴ほらあな洞穴どうけつ洞窟岩窟石窟岩屋山窟鍾乳洞洞門岩陰風穴空洞

とう【洞/道】[漢字項目]

〈洞〉⇒どう
〈道〉⇒どう

うつろ【洞】

戦国時代領主と領民の組織した共同体。一門一族。

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精選版 日本国語大辞典 「洞」の意味・読み・例文・類語

ほら【洞】

  1. 〘 名詞 〙
  2. (がけ)や巖、また老大木の根元や大木の朽木などにある、中のうつろな穴。ほらあな。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  3. 谷。渓谷。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
  4. 木が多く生えた、山あいの土地。
    1. [初出の実例]「一つのホラ(山あひの木のたくさん繁ったところ)には」(出典:交尾(1931)〈梶井基次郎〉二)
  5. 仙室。仏堂。
    1. [初出の実例]「寺造、定の所も造て窟(ホラ)を開つつ」(出典:打聞集(1134頃)大師投五給事)
  6. 川船の敷の両側に釘付けする側板。海船の根棚に相当するもの。〔和漢船用集(1766)〕

うつろ【洞】

  1. 〘 名詞 〙 戦国時代、大名や領主の家。家中。一門。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「諸事うつろをきんこうに沙汰致し候へば、他国の悪党等、いかやうにあつかひたるも不苦候」(出典:朝倉孝景条々(1471‐81)子孫へ一書)

とう【洞】

  1. 〘 名詞 〙 朝鮮の地方行政区画の最小の単位。面の下の区画。

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普及版 字通 「洞」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

[字音] ドウ
[字訓] ほら・とおる・ふかい

[説文解字]

[字形] 形声
声符は同(どう)。同に、筒形で中が空虚なものの意がある。〔説文〕十一上に「疾(はや)くるるなり」とあり、水勢によってたれたところをいう。奥深い洞窟などの意に用いる。その奥深いところを明察することを洞察という。

[訓義]
1. ほら、ほら穴。
2. とおる、つらぬく、いたる。
3. ふかい、うつろ、むなしい。
4. はやい、はやく流れる。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕洞 保良(ほら) 〔名義抄〕洞 ホラ・トホル・ホガラカナリ・アキラカナリ・トホシ・ツクス・ヌク・ミギリ・ホカラ・トク/洞 ―トトホル 〔字鏡集〕洞 トク・ハヤクナル・トホル・ホラ・ツカル・ノク・ナガル・トホシ・アナ・ミギリ・アキラカナリ・ホガラカナリ・フカクトホシ

[語系]
洞・同・筒dongは同声。甬(よう)も同じく筒形の器で(通)thongはその動詞形。洞と声義が近い。(透)thuはと声義に通ずるところがある。

[熟語]
洞越・洞屋・洞開洞壑・洞学洞豁洞鑒・洞貫・洞感・洞観・洞疑・洞暁・洞窟・洞見洞戸・洞口・洞合・洞視洞釈・洞習・洞照・洞簫・洞燭・洞酔・洞井・洞精・洞晰・洞・洞然・洞達・洞池・洞中・洞聴・洞徹・洞天・洞洞盪・洞洞・洞発・洞府・洞闢・洞冥・洞明・洞門・洞朗
[下接語]
淵洞・花洞・霞洞・貫洞・巌洞・虚洞・空洞・洪洞・荒洞・紫洞・石洞・雪洞・仙洞・洞・百洞・風洞・碧洞・幽洞

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改訂新版 世界大百科事典 「洞」の意味・わかりやすい解説

洞 (うつろ)

戦国時代の東国の有力領主層が,領域支配実現のために,一家,一門を中心に周辺の非血縁者をも結集させた一種の擬制的な同族的地縁共同体。この言葉は15世紀末~17世紀初期に特徴的に登場し,近世幕藩体制の成立とともに消滅する。その登場地域は東国に集中しており,しかも使用主体は小山,結城,宇都宮,佐竹,伊達,岩城,白河結城,蘆名,最上氏などの旧族領主層が中心で,後北条氏のような新興勢力の場合にはまったく見られない。つまり洞は,惣領制的同族集団を基盤として発展した東国旧族領主の在り方を内包した言葉であった。洞とほぼ同義で使用される言葉に,屋敷,家の中を意味する〈屋裡(おくり)〉〈屋裏(おくり)〉があるが,これは洞が家や屋敷と深い関係にあることを示している。洞の語義は,《日葡辞書》が〈ある家中の家族や一族の者,および家来〉とし,《新編常陸国誌》が〈一家一門ノコトヲ云ヘリ〉と説明しているように,〈一家一門〉を中心に非血縁の家臣などをも〈同じ家に属する人々〉という強い同族観念に基づいて編成した地縁集団の意味に解されていた。洞という言葉は,《結城家法度》や《塵芥集》のような分国法にも見られるが,大半は東国の旧族領主たちが相互に取りかわした書状の中に登場する。それらは政治的関係が強く反映しているため,大名級領主がみずからの洞を〈当洞〉,相手の洞を〈御当洞〉などと呼称する形で登場し,国人,地侍が洞という言葉を使用することはまれであった。しかし洞本来の語義からすれば,こうした国人や地侍層の在地に密着した洞の方をより重視しなければならない。つまり大名級領主の洞は,戦国期の一円的領域支配形成への動きのなかで,国人や地侍層の在地的な洞を包摂,統合した組織にすぎず,本来のより在地的な洞は擬制化,抽象化して領国的内容を帯びたそれに変容させられているのである。
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日本歴史地名大系 「洞」の解説


ほら

[現在地名]奈良市春日野町

若草山南麓、水谷みずや(屋)川に沿った月日つきひいわ付近の地名。「洞の紅葉」とよばれ、秋の紅葉の名所である。月日の磐の手前、左手山麓に仏頭石と地蔵石仏とがある。

仏頭石は、六角柱の上に如来の頭部を丸彫にしたもので、他に類がない。高さ約一メートル、花崗岩製。柱胴の各面上部に仏像を半肉彫し、下部には獅子形を彫る。仏像は十一面・准胝・千手・聖・如意輪・馬頭の六観音をめぐらせている。



よもぎがほら

[現在地名]名東区猪高町猪子石 蓬莱洞

猪子石いのこし村の西南に、丘陵と丘陵の間の低地が奥まで入込んでいる地があり、江戸時代後期の村絵図(徳川林政史蔵)には、帯状に水田化されている状態が描かれている。その一つが蓬莱洞で、手前の低地は単に「ヨモギ」、そこから立ち上がる丘陵が「ヨモギ洞山」と称された。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【面】より

…朝鮮で郡の下,(洞)の上の地方行政区画。日本の村にあたる行政団体。…

【里】より

…【鎌田 元一】
[朝鮮]
 最下級の地方行政区画。〈洞〉とも称し,漢城(ソウル)では〈契〉と称した。本来は自然村落であり,自治団体的性格が強い。…

※「洞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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