(読み)キモ

デジタル大辞泉 「肝」の意味・読み・例文・類語

きも【肝/胆】

内臓の主要部分。特に、肝臓。「鳥の―」
内臓の総称。五臓六腑ろっぷ
胆力。気力。精神力。「―の太い人」
物事の重要な点。急所。「話の―」
思慮。くふう。
「あまりに―過ぎてしてけるにこそ」〈沙石集・七〉
[補説]「肝に据えかねる」という言い方について→腹に据えかねる[補説]
[類語](1はらわた心胆/(4大切重要大事だいじ肝要肝心緊要枢要かなめ肝心要有意義意義深い千金耳寄り掛け替えのない

かん【肝】[漢字項目]

常用漢字] [音]カン(呉)(漢) [訓]きも
〈カン〉
五臓の一。きも。「肝臓肝油肝硬変
精神の働きの場としてのきも。「肝胆肝銘心肝肺肝
大切なところ。かなめ。「肝心肝腎肝要
〈きも(ぎも)〉「度肝

かん【肝】

肝臓。きも。〈日葡
《昔、魂の宿るところとされたところから》心。まごころ
「―ヲクダク」〈日葡

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精選版 日本国語大辞典 「肝」の意味・読み・例文・類語

きも【肝・胆】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 内臓の主要部分。
    1. (イ) 肝臓。
      1. [初出の実例]「心腎肝脯〈略〉肝音干、訓岐毛」(出典:新訳華厳経音義私記(794))
      2. 「世に並び无からむ女の肝を取て」(出典:今昔物語集(1120頃か)四)
    2. (ロ) 広く、内臓の総称。はらわた。五臓六腑
      1. [初出の実例]「吾が肉(しし)は 御膾(みなます)はやし 吾が伎毛(キモ)も 御膾はやし」(出典:万葉集(8C後)一六・三八八五)
  3. ( 心のあるところの意から ) 心。精神。気力。
    1. [初出の実例]「汝(いまし)は肝(キモ)(わか)し」(出典:日本書紀(720)推古三六年三月(岩崎本訓))
    2. 「きもまさりて、腰の刀をぬき」(出典:曾我物語(南北朝頃)一)
  4. 心のはたらき。考慮。くふう。
    1. [初出の実例]「世の人は心もきももなきやうに思ひて」(出典:紫式部日記(1010頃か)消息文)
  5. 仲間の長。頭(かしら)
    1. [初出の実例]「歌舞妓子の第一(キモ)河原左大臣」(出典:俳諧・広原海(1703)一二)
  6. ( 形動 ) 度胸がすわっていること。また、そのさま。大胆。
    1. [初出の実例]「礒さんが二八の鉢を庭へ打付てわったげな、きもな子ではあるわい」(出典:洒落本・浪花今八卦(1773)菱卦)
  7. 物事の重要な点。急所。
    1. [初出の実例]「月よりも松の嵐に目のさめて 是風傍之句也。又月よりも嵐に目をさます事は、月の肝そばになる、無念也」(出典:長短抄(1390頃)上)

かん【肝】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 五臓の一つ。肝臓。きも。肝の臓。
    1. [初出の実例]「蘇林は質如石似肝は、石の如なはさこそあるらう」(出典:史記抄(1477)四)
  3. ( 古く、魂の所在、考えの出るところとされたところから ) こころ
    1. [初出の実例]「Canuo(カンヲ) クダク〈訳〉あることに力を入れる」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. [その他の文献]〔史記‐鄒陽伝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「肝」の意味・わかりやすい解説

肝 (きも)

一般に広く内臓を指す語。胆とも書く。《万葉集》135歌の中に〈肝向(きもむか)ふ心を痛み〉とあり,〈きもむかう〉は心にかかる枕言葉である。枕言葉として通用しえたのは,当時の内臓についての知識が一般化していた度合を示すものだが,この〈きも〉は肝臓と同一とは言いがたい。胆囊としばしば混同され,他方では心や魂を指す語だったからである。〈肝が太い〉(《宇治拾遺物語》),〈胆に銘ずる〉(《平家物語》),〈肝をくだく〉(《蜻蛉日記》),〈肝をつぶす〉(《太平記》),〈肝を冷やす〉(同)などと言う。〈肝〉の〈干〉は根幹の意で,肝臓は内臓の根幹とされたから,魂もここに宿ると考えられたのである。陰陽道では肝に竜が配置された。《日本書紀》などに言う延夜美(えやみ)は熱性流行性疾患群だが,これに用いられたのが竜胆である。ただし,竜胆はリンドウで,その根は解熱剤でなく健胃剤として用いられる。肝臓が重症の病に効くという話も古くからあり,日本の童話に竜王の嫁の病を猿の生肝(いきぎも)で治すため,クラゲが使いに行くが,猿の生捕りに失敗する話がある。これは《諸経要集》巻十六の〈仏本行経〉にほとんど同じ話があるから,インドに由来するものであるが,インドからチベットや朝鮮に伝播して同工異曲の話として残ってもいる。一方,アフリカのスワヒリ族にも,鮫王の病のために猿の心肝を得ようとするが,連れ出された猿が心肝を樹上に残して来たと言い逃れて助かる話がある。旧約聖書外典《トビト書》に,魚の肝臓をいぶせばいかなる憑物(つきもの)も人から逃げるとある。

 肝臓を魂の座とみたのは西欧も同じで,古来動物の肝を食べたのは,その動物と関係する神の力を得るためだった。また欲望や感情の宿る座ともされた。ルクレティウスの《物の本質について》には,肝臓に燃える欲望の燠(おき)を消すという表現が見られ,旧約聖書の《エレミヤ哀歌》には〈わが肝はわが民の娘の滅びのために,地に注ぎ出される〉の句がある。人間に火を与えた罰としてカウカソス山上につながれたプロメテウスが,大ワシに毎日肝臓をついばまれることになったのも,肝と魂との相関があるからである。臆病者の肝臓は血の気がないために白いと考えられた(シェークスピア《十二夜》)。占星術的医学では,感情や欲望を生み出す欲望体が肝臓に位置を占めて大きな中心渦をつくり,この肝臓をユピテル(木星)がおもに支配しているとした。古代中国の医学が五臓(肝心脾肺腎)に五行(木火土金水)を配したように,占星術では日月を含む七遊星を内臓諸器官にふり分けていた。

 魂と内臓との関係はプラトンの《ティマイオス》にさかのぼる。これによれば,魂の獣的な部分は理性的なものに注意を払おうとせず,日夜幻想に惑わされるので,神は肝臓をつくってその住いとし,この迷いを防ごうとした。肝臓が厚く滑らかで苦味を含むのはそのためで,魂に発する思考力は,肝臓の中を動いて鏡の中におけるようにみずからを映すという。また肝臓が託宣の臓器とされる理由も述べている。臓器託宣については〈肝臓〉の項を参照されたい。
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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【肝臓】より

…ギリシア語ではhēparといい,この語幹hēpa‐が肝炎hepatitis,肝臓癌hepatomaなどに用いられている。日本では古くは肝(きも)と呼ばれ,五臓六腑の一つとされる。…

※「肝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」