打込む(読み)ウチコム

デジタル大辞泉 「打込む」の意味・読み・例文・類語

うち‐こ・む【打(ち)込む】

[動マ五(四)]
上から強くたたいて中へ入れる。「くぎを―・む」

㋐球技で相手の陣などに球を打って入れる。「ライトスタンドに―・む」
㋑(「撃ち込む」「射ち込む」とも書く)弾丸や矢を発射して敵に当てる。「敵陣へ砲弾を―・む」
その事に全精力を注ぐ。熱中する。夢中になる。「仕事に―・む」
頭や精神に強く入れる。
「卵の如き青年の頭脳へ、社会主義など―・んで」〈木下尚江火の柱
剣道・ボクシングなどで、相手のすきをついて打ってかかる。「胴へ―・む」
碁で、相手の陣内に石を打つ。

㋐テニス・卓球などで、相手のコートに、強烈な球を打ち返す。「左サイドに―・む」
㋑野球で、相手投手に集中打を浴びせる。「―・まれて降板する」
㋒野球・テニスなどで、時間をかけて、多くの球を打つ練習をする。「納得が行くまで―・む」
コンクリートを枠に流し入れる。「ビルの基礎を―・む」
コンピューターで、プログラムコマンドキーボードから入力する。
10 シンセサイザーミュージックシーケンサーなどの電子楽器や、DTMのシステムに、演奏データを入力する。
11 順序なく入りまじる。入り乱れる。
「後ろに三百余騎は―・みてありけり」〈愚管抄・六〉
[可能]うちこめる
[類語]専念専心没頭没入傾注明け暮れる奮励努力精励頑張る踏ん張る奮闘奮発奮起勉励刻苦粉骨砕身はげ張り切るやり抜く粘る励行刻苦勉励精進精勤恪勤かっきん努めるいそしむ精出す精を出す精が出る注ぎ込む熱を入れる力を入れる馬力を掛ける没我熱中夢中熱心鋭意無我夢中背水の陣緊褌きんこん一番凝る耽る浸る骨折る骨を折る根を詰める目の色を変える心血を注ぐ手を尽くす身を投ずる身を挺する体を張る明け暮れる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「打込む」の意味・読み・例文・類語

うち‐こ・む【打込】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
    1. 相手の体に、刀を切り入れる。また、剣道、ボクシングで、相手に打ってかかる。
      1. [初出の実例]「内冑へ切前(きっさき)上りに打ちこみければ」(出典:保元物語(1220頃か)中)
    2. たたいたり、突いたりして物を中へ入れる。
      1. [初出の実例]「地へ三尺打こまふほどに」(出典:虎明本狂言・鼻取相撲(室町末‐近世初))
      2. 「秋の江に打(ウ)ち込(コ)む杭の響かな」(出典:思ひ出す事など(1911)〈夏目漱石〉五)
    3. ( 「うち」が接頭語化した場合が多い ) 勢いよく投げ入れる。ほうり込む。
      1. [初出の実例]「ふくはうち、おにはそとと云て、うちこみ入や」(出典:天理本狂言・節分(室町末‐近世初))
      2. 「神棚から引づりおろし、どぶへ打込」(出典:咄本・鯛の味噌津(1779)ばくちうち)
    4. 弾丸などを打って敵の軍や陣などへ入れる。また、球技で相手の陣へ球を打ち入れる。
      1. [初出の実例]「火矢を打込(ウチコ)んで」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉五)
    5. ある事に金をつぎこむ。
      1. (イ) ばくちを打ったり、海難で打荷(うちに)をしたりして財産を使ってしまう。
        1. [初出の実例]「こがねのふだ〈略〉ことごとくうちこむほどに」(出典:虎明本狂言・博奕十王(室町末‐近世初))
      2. (ロ) ( 「うち」は接頭語 ) 物事に金をたくさん使う。
        1. [初出の実例]「まあ四五千両ほど打こんで執行(しゅぎゃう)めされ」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
    6. ( 「うち」は接頭語 ) 深く心を寄せる。自分の気持を注ぎ込む。
      1. (イ) ある人を恋い慕って夢中になる。ほれこむ。
        1. [初出の実例]「荘公のてかけの女房にうちこうで」(出典:玉塵抄(1563)二四)
      2. (ロ) 物事に熱中する。全力を集中する。
        1. [初出の実例]「身も魂も〈略〉仕事に打込(ウチコ)んで居る」(出典:非凡なる凡人(1903)〈国木田独歩〉下)
    7. ( 「うち」は接頭語 ) 相手の急所を突いて言い負かす。やりこめる。
      1. [初出の実例]「まそつとよい事を申せと打こめば」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂)
    8. ( の比喩的用法 ) 頭や心に強く入れる。
      1. [初出の実例]「これが印象を頭に打(ウ)ち込(コ)むだ」(出典:死(1898)〈国木田独歩〉六)
    9. ( 「うち」は接頭語 ) 能楽で、手を前方へ出すと同時に袖を手の外側から内側へ巻きつける型をする。
      1. [初出の実例]「両の袖を打こみて、左右へさっさっと棄つる也」(出典:申楽談儀(1430)定まれる事)
    10. 能楽、歌舞伎などで、太鼓や鼓などの演奏を入れる。
      1. [初出の実例]「これへ岩戸神楽を打込み」(出典:歌舞伎・小袖曾我薊色縫(十六夜清心)(1859)大詰)
    11. 打つことをじゅうぶんに行なう。また、野球などでさんざんに相手を打つ。
      1. [初出の実例]「エース桶川をも打ち込んで」(出典:東京の孤独(1959)〈井上友一郎〉ある浮沈)
    12. 囲碁で相手の陣へ石をおろす。また、相手に何番か続けて勝つ。
      1. [初出の実例]「川崎はなほ死に物ぐるひの石を打ち込みながら」(出典:断橋(1911)〈岩野泡鳴〉八)
    13. キーボードなどで、コンピュータにデータを入力する。
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙
    1. 順序なく入り交じる。ごちゃごちゃと集まる。
      1. [初出の実例]「後に三百余騎はうちこみてありけり」(出典:愚管抄(1220)六)
    2. 馬が乗り手を落とそうとして首を両脚の間に入れて進む。
      1. [初出の実例]「ウマ〈略〉ウマガ vchicomu(ウチコム)、または、vchicôde(ウチコウデ) ユク」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. (波が)押し寄せる。水がどっとはいってくる。
      1. [初出の実例]「打ち込む浪にしっぽりと」(出典:歌舞伎・青砥稿花紅彩画(白浪五人男)(1862)四幕)

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