凝る(読み)コル

デジタル大辞泉 「凝る」の意味・読み・例文・類語

こ・る【凝る】

[動ラ五(四)]
ある物事に熱中して打ち込む。ふける。「盆栽に―・っている」「ゴルフに―・る」
細かいところにまで心を用いる。工夫趣向を凝らす。「家のつくりに―・る」「―・った衣装をまとう」
血行が悪くて筋肉が張ってかたくなる。「肩が―・る」
ばらばらのものが集まって固まる。
湯気ならば、空に―・って雲ともなり」〈里見弴多情仏心
冷えて固まる。凍る。
「露が―・って霜になる時節なので」〈漱石
[類語](1ふける溺れる耽溺たんでき惑溺専心いかれる打ち込む専念没頭没入傾注没我熱中夢中熱心鋭意無我夢中背水の陣緊褌きんこん一番浸る骨折る骨を折る根を詰める目の色を変える心血を注ぐ手を尽くす身を投ずる身を挺する体を張る明け暮れるめろめろぞっこん首ったけのめり込む入れ込む血道を上げる骨抜き執心頓着執着固執偏執我執とらわれる深入りはまるはまり込む身を焦がす狂おしい物狂おしい入れあげる病み付きとりこ心酔心ここにあらず心を奪う狂わしい熱狂的悶悶もんもん惑乱切ないやりきれない思い乱れる思い悩む思い焦がれるむな苦しい息苦しい重苦しい苦痛る瀬無い憂さ憂い不如意堅苦しい気詰まり忍びないエキセントリック逆上のぼせるのぼせるアブノーマル常軌を逸する乱心取り術無い辛酸をなめる心を痛める艱難かんなん思い煩う/(3)(4固まる凝固する凝結する固結する固化する膠化こうかするこごる強張る固める踏み固める地固めする凝り固まる根締め/(5凍る

こご・る【凝る】

[動ラ五(四)]
液体状のものが、冷えたり凍ったりして凝固する。「魚の煮汁が―・る」
「食うものはなくなった。水筒の水は―・ってしまった」〈黒島渦巻ける烏の群
手足がかじかんで、自由がきかなくなる。
つはもの手―・って弓を引くにかなはず」〈太平記・四〉
[類語]固まる凍る凍りつく凍結氷結結氷冷凍凍て付くしばれる凍みる凍てる凝固する凝結する固結する固化する膠化こうかする強張る固める踏み固める地固めする凝り固まる根締め

しこ・る【凝る/×痼る】

[動ラ五(四)]
しこり1ができる。
「胃のうしろから腰へかけて、…ぎこちなく―・っていたので」〈里見弴・安城家の兄弟〉
物事に熱中する。
「何れも我一われいちと―・りかかって責め念仏を申し」〈咄・露がはなし・四〉
動詞の連用形に付いて補助動詞的に用い、盛んに…する意を表す。
「雨の降り―・る後は風と見定め」〈浮・置土産・四〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「凝る」の意味・読み・例文・類語

しこ・る【凝・痼】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. ある考えに熱中したり、ある行為に専念したりして、身じろぎもせずにいる。
    1. [初出の実例]「切て出んとて、打物を小膝にのせて錣(シコリ)たる体は」(出典:書陵部本応仁記(15C後))
    2. [その他の文献]〔日葡辞書(1603‐04)〕
    3. 「ふきのゐんをむすびかけ、しこっていのる」(出典:天理本狂言・蟹山伏(室町末‐近世初))
  3. ある動作をそのことに集中して盛んに行なう。また、盛んに行なわれる。動詞の連用形につき、補助動詞的にも用いられる。
    1. [初出の実例]「風は順風に吹しこりたぞ」(出典:三体詩幻雲抄(1527))
    2. 「心はおなじ半次郎も、これよりしこッてかよふほどに」(出典:人情本・春色恵の花(1836)初)
  4. 集まって一団となる。
    1. [初出の実例]「かべぎはにもなるならば、たてをばすててしこるべし」(出典:中尾落草子(16C後))
    2. 「ニンジュガ xicotte(シコッテ) イル〈訳〉人々が敵に対抗して一団となり、かたまったようになっている」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  5. 意地をはる。
    1. [初出の実例]「親方が高ばる。手代がこまる。こっちはしこる。親父は叱る」(出典:浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)一)
  6. 筋肉などが凝ってかたくなる。かたまりやしこりができる。
    1. [初出の実例]「しこる かたくなる事」(出典:洒落本・真女意題(1781)陸野奥右衛門国詞)
  7. おさえてもおさえきれないようにわきおこってくる。
    1. [初出の実例]「又臍(へそ)の下から笑ひがしこって、くつくつくつくつ」(出典:滑稽本・七癖上戸(1810)上)
  8. 弾力があって適度な固さである。しこしこする。
    1. [初出の実例]「舌ざわりは少ししこって、しかも柔らかく」(出典:湯葉(1960)〈芝木好子〉)

凝るの補助注記

原義に諸説あって統一的な説明は困難である。「万葉‐一二六四」の「西の市に但ひとり出でて眼並べず買ひてし絹の商自許里(あきジコリ)かも」の「あきじこり」が関連あるかとされているが、解釈が難しい。


こ・る【凝】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. ばらばらになっていた同質のものが寄り集まって固まる。結びつく。集まって束になる。凝結する。凝固する。おしこる。
    1. [初出の実例]「蠅(はへ)有りて聚集れり。其凝(コリ)(かさな)れること、とつよあまりばかり」(出典:日本書紀(720)推古三五年五月(北野本訓))
  3. 水が寒さのためにかたく固まって凍る。
    1. [初出の実例]「季冬(しはすふゆ)の節(をり)、風亦烈(はけ)しく寒(さむ)し、大中姫(ひめ)の捧(ささ)げたる鋺(まり)の水溢(あふ)れて腕(たふさ)に凝(コレり)(〈別訓〉かひなにこる)」(出典:日本書紀(720)允恭元年一二月(図書寮本訓))
  4. 一つのことに熱中して、そればかりを深く思い込む。いちずに思いこむ。傾注する。ふける。のぼせる。
    1. [初出の実例]「あんまりそのやうにこると、わづろふものだ」(出典:洒落本・契情買虎之巻(1778)二)
  5. 工夫をこらす。意匠に心を用いる。
    1. [初出の実例]「気狂丈に大に凝ったものさ」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉九)
  6. 血行がとどこおり、筋肉が張ってかたくなる。
    1. [初出の実例]「ケンペキ カタガ koru(コル)」(出典:改正増補和英語林集成(1886))
    2. 「ある時は婦女どもに凝(コ)る肩をたたかせて」(出典:われから(1896)〈樋口一葉〉一〇)

こご・る【凝】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
  2. 水分を含んだものが、冷えてこおる。また、かたまって固くなる。凝結する。
    1. [初出の実例]「磐床と 川の氷(ひ)(こごり) 寒き夜を 休むことなく」(出典:万葉集(8C後)一・七九)
    2. 「やがて障子のすきまより、鮮血こごりてながれいでぬ」(出典:読本・昔話稲妻表紙(1806)四)
    3. 「吐き出す呼気(いき)が凍(コゴ)って」(出典:渦巻ける烏の群(1928)〈黒島伝治〉二)
  3. 手足がこごえて動かなくなる。また、こおったように身動きしなくなる。
    1. [初出の実例]「兵(つはもの)手凍(ココッ)て弓を控(ひ)くに叶はず」(出典:太平記(14C後)四)
  4. かたまって集まる。また、もつれてかたまりになる。
    1. [初出の実例]「凝(コゴ)りたる糸の解口立ちそめて」(出典:人情本・風俗粋好伝(1825)後)
    2. 「彼等は星の覗く窓の下に小さく輪をかいてこごって居た」(出典:紫衣の夫人(1930)〈龍胆寺雄〉)

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