(読み)カン

デジタル大辞泉 「貫」の意味・読み・例文・類語

かん【貫】[漢字項目]

常用漢字] [音]カン(クヮン)(呉)(漢) [訓]つらぬく ぬく ぬき
物の中間をつらぬき通す。「貫通貫流縦貫
最後まで筋を通してやりぬく。「貫徹一貫突貫
郷土。本籍地。「貫籍郷貫本貫
重さの単位。千匁。「尺貫法
[名のり]つら・とおる

かん〔クワン〕【貫】

[名]
尺貫法の重さの単位。1貫は1000もんめ、すなわち3.75キロで、明治24年(1891)から昭和33年(1958)まで商取引で用いられた。
銭貨を数える単位。1貫は銭1000文。江戸時代、実際には960文が1貫とされ、明治時代には俗に10銭を1貫とも称した。貫文かんもん
律令制で、戸籍に記載されること。また、その土地。本貫。
中世、土地面積の表示に用いた単位。一定の広さではなく、租税となる米の収獲高を銭に換算して表したもの。
[接尾]かん

ぬき【貫】

柱と柱、つか束の間を横に貫いてつなぐ材。位置により頭貫かしらぬき内法貫うちのりぬき地貫じぬきなどとよぶ。貫木ぬきぎ。「を渡す」

かん

[接尾]助数詞。握りずしの数を数えるのに用いる。鮨一つが一かん。
[補説]「貫」と当てて書くこともある。

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精選版 日本国語大辞典 「貫」の意味・読み・例文・類語

かんクヮン【貫】

  1. [ 1 ]
    1. [ 一 ] 令制で、戸籍に記載されること。また、その土地。本貫(ほんがん)。〔令義解(718)〕
    2. [ 二 ]
      1. 銭を数える単位。一文銭一〇〇〇枚を一貫とする。江戸幕府は、寛永通宝(一文銭)を鋳造するようになってから、銭と金の比価を四貫文対一両と公定した。明治維新以降、明治四年(一八七一)に銭貨一文は新貨一毛通用に定められ、一〇文が一厘、一〇〇文が一銭、一貫文は一〇銭相当のところから、俗に一〇銭のことを一貫と呼んだこともある。
        1. [初出の実例]「其従六位以下蓄銭有一十貫以上者、進位一階叙」(出典:続日本紀‐和銅四年(711)一〇月甲子)
      2. 中世、土地や所領の規模、負担能力などの表示に用いられた単位。土地・所領の貫高(かんだか)は、年貢や軍役の賦課基準となった。
        1. [初出の実例]「是は今何事に三万貫に及ぶ大庄給り候やらん」(出典:太平記(14C後)三五)
      3. 尺貫法の目方の単位。一〇〇〇匁。三・七五キログラム。
        1. [初出の実例]「一貫匁 イックンメ 千銭目也。其重猶銭一貫文之義」(出典:書言字考節用集(1717)一〇)
    3. [ 三 ] 「三」をいう、陶器商の符丁。〔かくし言葉の字引(1929)〕
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 握り鮨を数えるのに用いる。

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普及版 字通 「貫」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] カン(クヮン)・ワン
[字訓] つらぬく・ぜにさし・ひく

[説文解字]

[字形] 会意
貝+(かん)。は貝を貫く形。〔説文〕七上に「錢貝の貫なり」とあって、ぜにさしをいう。金文の図象に、貝を二つ連ねて綴るものがあり、前後二系を合わせて一朋という。(朋)はもと貝を綴った形。ものを貫くことから、継続慣行の意となる。

[訓義]
1. ぜにさし、かねの重さ、貝貨をつらぬく、つらぬく、とおす。
2. うがつ、つらねる。
3. 場所的につらねる、時間的につながる。
4. すじみち、しきたり、ならわし、ならう。
5. 本貫、本籍の所在地。
6. 彎(わん)と通じ、弓ひく。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕貫 ツラヌク・ウガツ・トホス・ツラナル・ヌク・アツ・ヒク・ツム・アカル・ナラフ・ツカフ・ツカマツル・カフル・ナル・イツ

[声系]
〔説文〕に貫声としての二字を収め、ともに「ふなり」と訓する。別に慣の字があり、また慣習をいう。みな貫の声義を承ける字である。

[熟語]
貫頤・貫一・貫軼・貫盈・貫朽・貫魚・貫匈・貫・貫故・貫甲・貫行・貫索・貫址・貫耳・貫主・貫珠・貫習・貫籍・貫・貫串・貫綜・貫属・貫通・貫徹・貫頭・貫道・貫・貫覧・貫流・貫弓
[下接語]
移貫・一貫・盈貫・淹貫・横貫・覊貫・旧貫・朽貫・魚貫・郷貫・虹貫・矢貫・珠貫・習貫・縦貫・条貫・情貫・縄貫・親貫・籍貫・貫・銭貫・総貫・探貫・通貫・同貫・洞貫・突貫・包貫・旁貫・本貫・名貫・理貫

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改訂新版 世界大百科事典 「貫」の意味・わかりやすい解説

貫 (かん)

通貨の単位または質量の計量単位。(1)通貨の単位。中国の宋代のころに始まる通貨の単位で,銭貨1000文(もん)のことをいう。この名称は銅銭1000枚の穴に緡(びん)(鏹(きよう)ともいい,ぜにざしのこと)を貫いて束ねたことに由来し,日本でも唐銭,宋銭の流入に伴って室町時代前後から用いられるようになった。江戸時代になると通貨は基本を異にする金,銀,銭の3貨に分かれ,基本単位は金貨が小判の両(=4分=16朱),銀貨が匁,銭貨が文であり,銀貨1000匁を1貫目,銭貨1000文を1貫文と呼んだ。このうち銀貨は秤量(ひようりよう)通貨であり,単位の匁や貫目は質量(目方)の単位である。これらの通貨単位の交換率は1700年(元禄13)に〈金1両=銀60匁=銭4貫文〉と定められたが,以後変動している。これらの単位は1871年(明治4)の新貨条例による円,銭,厘への一本化で廃止された。(2)質量の単位。中国で宋のころから唐の開元通宝銭の質量を質量単位の基準として用いるようになり,その単位を銭と称したが,その慣習が日本に伝わり,一文銭の質量を匁(銭),1000匁を1貫目(貫)と呼んだ。貫を質量の単位の名称とするのは日本特有のことである。その大きさは大宝令による質量の単位に対し6斤4両であり,改鋳による銭貨の目方の変動にもかかわらず,ほぼ安定に保たれていたという。91年制定の度量衡法によって貫は尺貫法における質量の基本単位となり,事実上3.75キログラム(=15/4kg)と定められた。ここで事実上というのは,実際には貫を日本国キログラム原器を介して国際キログラム原器に基づいて定義しながら,法文上は尺とともに貫を度量衡の基本とする形式をとったことによる。単位記号は〆。分量単位は,匁(=1/1000貫),分(=1/10匁),厘(=1/10分),毛(=1/10厘)であり,その他に,斤が160匁と定義されていた。尺貫法の廃止に伴い,1959年以降法定単位ではない。
執筆者:


貫 (ぬき)

木造建築真壁造りで,柱の途中を貫いて相互に横につなぎ,軸組みを強固にするとともに壁下地である竹小舞を取り付ける桟とする構造補強材。通し貫ともいう。桁下から土台まで,その入れる高さによって天井貫,内法(うちのり)貫,胴貫,地貫の名があり,胴貫を2本入れるのを5通り貫,1本だけのを4通り貫ともいう。ふつう1.5cm厚,成(せい)(幅,長さに対して下端から上端までの垂直距離をいう)10cm内外の板を,柱真に貫幅よりやや広く彫った貫穴に通し,両側からくさびを打って固定する。通し貫は鎌倉時代に禅宗建築の導入によって初めて興った構法であり,それ以前は飛鳥時代から社寺の列柱の頂部を上から枘(ほぞ)を割り込んで太い貫材を落とし込んだ頭(かしら)貫だけであった。吹き放しの建物をこの頭貫とそのすぐ下の太い飛(ひ)貫(樋貫)と下部の腰貫3本で固定する櫓建ちの手法も平安時代から使われたが,通し貫を数段用いることと塗壁の併用によって,日本の木造建築では材料を経済的に用いながら水平力に抵抗できる耐力壁が独自に発達することになった。
執筆者:


貫 (つらぬき)

縁にひもをとおして足の甲にかけきんちゃく状にした毛皮製の浅沓(あさぐつ)。材料には熊,牛,猪,カモシカ,アザラシの毛皮などが使われた。平安時代の末ころから武将などが馬に乗るときにはいたもので,室町時代には綱貫(つなぬき)と呼ばれるようになった。動物の頰(つら)皮を用いたのでツラヌキ,沓の前部の頰にひもをとおしたのでツラヌキと当初は呼んだものと思われる。江戸時代中期の伊勢貞丈によれば,ツラヌキは緒を足の裏へ回して足の甲で結んではくものだが,沓底の縁に別革で乳(ち)がとりつけてあり,これに両側から緒を貫いて結ぶのでツラヌキ沓というのを略したものだという。江戸時代から一般にも用いられた綱貫は牛,豚,猪などの革製で,農民や行商人などが防寒用にはいた。毛皮製をケグツ,なめした革をナメシグツ,形をきんちゃく状に作ったのでキンチャクグツ,沓底にすべり止めの鋲(びよう)をたくさん打ったのでソウビョウなどと呼ばれた。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貫」の意味・わかりやすい解説

貫(質量の単位)
かん

尺貫法の質量の基本的な単位。3.75キログラムの質量をいう。日本固有の単位で1000匁(もんめ)を1貫とする。匁は、621年に鋳造された唐の開元通宝(かいげんつうほう)銭1文の質量で、中国では銭であるが、日本では中世以後、1文の目方ということから文目(もんめ)とよばれるようになり、銭の別字「泉」の草書の匁をあてた。この穴あき銭1000枚を紐(ひも)で連ねたものを1貫とよんだ習慣から、これを質量の単位とするようになった。もともと中国の基本的な質量の単位は唐以来斤(きん)であるが、1斤が160匁ということから十進法でない不便さのため、日本では貫にかわった。1891年(明治24)度量衡法を制定するにあたって、貫は、切りよくキログラムの4分の15(3.75倍)とされ、今日に至っている。ただ通貨の場合の貫は変化があり、江戸時代には960文を1貫とした。また、禄高(ろくだか)の場合の貫は10石(こく)にあたる。

[小泉袈裟勝・今井秀孝]


貫(木造建築)
ぬき

木造建築において、柱を横に貫いて、柱と柱を結び付ける部材。現在は、厚さ9ミリメートル、せい(材の上端と下端間の距離)9センチメートル程度の板を用いるのが普通である。古代には、柱と柱を結び付けるのに長押(なげし)を使い、貫は柱の頂部をつなぐ頭貫(かしらぬき)だけであった。中世の初めに長押にかわって貫で柱をつなぐ唐様(からよう)・天竺(てんじく)様の二様式が伝わってから、広く貫が使われるようになった。唐様や天竺様の仏殿では、貫を現していた。民家でも貫を意匠的に現している場合がみられる。書院造の座敷では長押を用いるのが普通であるが、その場合でも貫がかならず使われている。しかし貫を現すことはなく、壁の中に塗り込めている。現代の木造住宅でも同様である。

[平井 聖]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「貫」の解説


かん

1貨幣の単位。銭貨1000文(1貫文(かんもん)),または銀貨1000匁(1貫目(かんめ))の称。後者は重量による。中国古代の制度に由来。日本で銭貨1000文を1貫というのは,和同開珎(わどうかいちん)がはじめて鋳造された和銅年間にまでさかのぼる。調銭の事例はすべて1貫を単位とし,1貫ごとに(あるいは100文の緡(さし)10個を束ねて)荷札を付した。長屋王家木簡(和銅~霊亀年間)にも1貫の緡の付札の実例がある。なお九六銭(くろくぜに)計算の場合には,銭貨960文で1貫とした。

2〆とも。匁(もんめ)の1000倍に相当する重量の単位。中国で貨幣1000銭(文)の単位としたことからおこり,日本の重量の単位となった。近世では1貫が約3.74kgに相当したが,1891年(明治24)の度量衡法でメートル法を基準として,1貫を3.75kgと定め尺貫法の基本単位とした。1959年(昭和34)から計量法により商取引上の使用が禁止された。

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百科事典マイペディア 「貫」の意味・わかりやすい解説

貫【ぬき】

柱を貫いて軸部を連結する水平材をいう。古くは柱の頂部の頭貫(かしらぬき)のみで,柱を連結する構造材はもっぱら長押(なげし)であったが,鎌倉時代以降唐様や大仏様の影響で貫が多用されるようになった。使用位置により地貫(柱の下部),腰貫・胴貫(窓の下あたり),内法(うちのり)貫(窓や出入口の上)などがある。
→関連項目木舞真壁

貫【かん】

(1)尺貫法の質量の基本単位。1貫=1000匁(もんめ)=3.75kg=8.267ポンド。(2)銭貨の単位。1貫文は一文銭1000枚。これは中国から伝わったもので,銭を緡(さし)に貫いたことから起こった。
→関連項目貫高

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単位名がわかる辞典 「貫」の解説

かん【貫】

尺貫法の質量の単位。1貫は、1000匁(もんめ)。約3.75kg。1959年の計量法の改正により、この単位は商取引上での使用を禁止された。◇名称は、唐の開元通宝銭1000枚をひもでくくった道具「銭貫」にちなむ。

出典 講談社単位名がわかる辞典について 情報

家とインテリアの用語がわかる辞典 「貫」の解説

ぬき【貫】

➀垂直の柱と柱を貫いてつなげる横木。水平方向の固定に用い、壁や床下の補強などに使用される。
➁木製のテーブル・椅子(いす)などの脚部を補強するために用いる横木。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貫」の意味・わかりやすい解説


かん

尺貫法」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【威】より

…〈緒通し〉の意で,甲冑(かつちゆう)の(しころ)の威毛(おどしげ)をいう。古く《東大寺献物帳》には貫(ぬき),《延喜式》には懸緒(かけお)と記してある。すなわち甲冑を構成するのに,小札(こざね)を端から半ば重ね合わせて並列し,下方の緘孔(からみあな)で横綴じした小札板を一段一段上下に連ねて綴じる線を威毛といい,とくに小札板の両端を通す線を耳糸,草摺(くさずり)やの裾板(すそいた)の下方の孔を横にたすきに綴じたのを菱縫(ひしぬい)と称している。…

【社寺建築構造】より

…同じ木造であっても,材木を横にして積み重ねる校倉(あぜくら)のような構造は,倉庫その他のごく一部の建築にしか使われなかった。骨組みのなかで最も重要なのは,柱と,これをつなぐ梁(はり),貫(ぬき),長押(なげし)で,壁は単なる仕切りにすぎず,構造的に重要な意味をもたない。そのため,壁をまったくもたない建築も可能であり,また一般に窓や出入口は煉瓦造,石造に比べてはるかに大きい。…

※「貫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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