野草(魯迅の散文集)(読み)やそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「野草(魯迅の散文集)」の意味・わかりやすい解説

野草(魯迅の散文集)
やそう

中国の作家魯迅(ろじん)の散文集。1927年北新書局刊。24年11月から26年4月まで『語絲(ごし)』に断続的に掲載した「秋夜」「過客」「墓碑銘」など23編と、「題辞」(1926.4作)からなる。ただし、「題辞」は31年の第七刷以降国民党の検閲によって削除され、38年版『魯迅全集』にも収められず、『魯迅三十年集』(1941)で復活した。「明と暗、生と死、過去と未来の境」における作品と自らいう(「題辞」)ように、外的現実および自己の内面双方にわたって、矛盾する要素にとくに焦点をあてたもので、前期魯迅の内面に存在した複雑な側面を示す。形式も、詩、戯曲、散文と各種にわたり、散文も彼の心象を託した抽象度の高いものから、雑文に近い現実批判まで多様である。

丸山 昇]

『竹内好訳『野草』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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