多量な積雪によって生ずる災害。日本では、冬季に北西の季節風によって多量の降雪がもたらされる中部地方より北の日本海側、北海道の西部に雪害が多く発生する。しかし、冬から春にかけて、日本の南岸を通る低気圧による降雪で、太平洋側にも大きな雪害を引き起こすことがある。
多量な積雪による被害としては、交通障害とそれによる経済活動の阻害、生鮮食料品などの生活物資の流通が阻まれることによる生活上の支障などが大きい。また雪おろしによる労働の過重や出費、その際の転落などによる傷害もけっして無視できない生活上の負担である。
大雪の荷重による家屋や公共建物の倒壊は、密度の大きな北陸地方の場合にとくに大きい。雪の密度を1立方センチメートル当り0.1グラムとすると、1立方メートルで100キログラム、したがって1メートルの積雪では33.1平方メートル(10坪)の屋根では3.3トンの荷重となる。
斜面の積雪の緩やかな移動で、林木などは根曲がりの害を生じ、また平地でも果樹などは、積雪の重さからくる沈みによる折損も大きい。積雪の下のムギなどは多湿と0℃前後の気温のために消耗して、雪腐(ゆきぐされ)病に冒される。そのほか、0℃前後のときに降る多湿な雪により電線着雪を生じ、高圧線電柱などの倒伏の害や、それに伴う停電の害がある。また春先の融雪洪水も雪害である。近年では1963年(昭和38)1月(三八豪雪(さんぱちごうせつ))、81年1月(五六豪雪(ごうろくごうせつ))の豪雪による雪害が顕著であった。
[安藤隆夫]
日本の国土の約半分が雪国といわれており,古来いわゆる表日本と比べて冬の生活に大きな差別を受けてきた。また北陸地方のような低緯度で人口の多い平野に大雪が降るのは世界の中で日本だけといえる。これは冬の寒さのきびしい北西季節風と日本海を流れる対馬暖流の相互作用によるものである。雪害にもいろいろの種類があり,また時代とともにその様相が変わってきている。まず降雪は視程を妨げ,航空機,船舶,自動車などの運行に支障を与え,電線などに着雪して断線・停電の原因となる。積雪は交通を妨げ,また家や樹木を破壊する。山の斜面に積もった雪は雪崩を起こし,春になって雪が一時に融けると洪水を起こす。しかし,最近では雪国でも主要道路は地下水や電熱などによる融雪や機械による除雪によって冬もほとんど不通になることはなく,雪国と暖地の差が減ってきた。一方,高速道路,新幹線,飛行場など,近代化に伴う新しい種類の雪害も発生してきている。
執筆者:中島 暢太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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