引っ張る(読み)ヒッパル

デジタル大辞泉 「引っ張る」の意味・読み・例文・類語

ひっ‐ぱ・る【引っ張る】

[動ラ五(四)]《「ひきはる」の音変化》
引いて、ぴんと張った状態にする。「綱を―・る」
電線などを長く張りわたす。また、導管路線などをある場所まで延長する。「電話線を―・る」「給水管を家まで―・る」
物の一部を持って自分の方へ強く引く。また、引き寄せる。「缶のタブを―・って開ける」「袖を―・って合図をする」
(車両などを)強く引いて前へ進める。牽引けんいんする。「30両もの貨車を―・って走る」
先に立って人を自分のめざす方へ導く。「リーダーとなって仲間を―・ってゆく」
人をある場所へ連れて行く。また、連行する。「方々―・って歩く」「警察に―・られる」
仲間になるように強く誘う。誘い入れる。「優秀な技術者を―・る」「野球部に―・る」
長引かせたり遅らせたりする。引き延ばす。「たまった借金を―・っておく」「策を弄して審議を―・る」
発音を長くのばす。「語尾を―・る」
10 引用する。「例を―・ってきて説明する」
11 野球で、投手の球を思いきり打って、右打者はレフト方向、左打者はライト方向へ飛ばす。「外角球を強引に―・る」⇔流す
12 着る。ひっかける。
着物らしい着物を―・っていたこともなく」〈秋声足迹
13 はりつけにする。
「木の空(=磔柱)に―・らるるは今のこと」〈浄・博多小女郎
[可能]ひっぱれる
[類語](3引く引きずる引き寄せる引き絞る手繰たぐ手繰り寄せる手繰り込む引き付ける吸い寄せる/(4引く牽引けんいんする曳航えいこうする/(5率いる引き連れる伴う従える連れる連れ立つ召し連れる連れ込む連れ出す連れ戻す引率する先導する嚮導きょうどうする誘導する主導するリードする/(6拘引連行しょっぴく拉致

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「引っ張る」の意味・読み・例文・類語

ひっ‐ぱ・る【引張】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「ひきはる(引張)」の変化した語 )
  2. ひき延ばす。ひき延ばして張る。また、線などをひく。
    1. [初出の実例]「唐土にはまないたの上にのせて、四の枝をひっはりて斧を以て頸と腰とをきって三段になすぞ」(出典:漢書列伝竺桃抄(1458‐60)張周趙任申屠第一二)
  3. 力を入れてひき寄せようとする。
    1. [初出の実例]「両方の手を引張(ヒッパッ)て、其上を歩せ奉ん」(出典太平記(14C後)二)
  4. 無理に連れて行く。つかまえて引き立てる。
    1. [初出の実例]「上卿をとてひっはり」(出典:高野本平家(13C前)一)
  5. ひき連れる。伴う。
    1. [初出の実例]「左(と)も右(かく)も、向方の奴を引伴(ヒッパ)って来ると為よう」(出典:恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉三〇)
  6. 誘い入れる。また、誘惑する。「仲間に引張る」
    1. [初出の実例]「この御道(おみち)は引っ張りには行かんから、気が附いて来たら出て御座れ」(出典:大本神諭‐火之巻(1920)〈出口ナオ〉大正七年旧三月一五日)
  7. (はりつけ)にする。磔の刑に処する。
    1. [初出の実例]「浅ましい欲心に海賊の仲間に入〈略〉木の空にひっぱらるるは今の事」(出典:浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)中)
  8. 時間・期限を延ばす。また、解決や決定を引き延ばす。
    1. [初出の実例]「入相時分に膳立して、夕飯・夜食をひっぱり」(出典:浄瑠璃・薩摩歌(1711頃)中)
  9. ( 自動詞的に用いて ) 匹敵する。肩を並べる。
    1. [初出の実例]「鼠色の顔(かんばせ)鶏卵(たまご)のしろみにひっぱる」(出典:洒落本・廻覧奇談深淵情(1803)其三)
  10. かぶる。着る。ひっかける。
    1. [初出の実例]「夏はやれかたびら一枚、冬は木綿の袷をひっはりて」(出典:雑兵物語(1683頃)下)
  11. もらってくる。
    1. [初出の実例]「そねむなイ、此野郎ほうをのべべ(〈注〉うつくしいきもの)を引張(ヒッパッ)たと思って」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
  12. 引用する。
    1. [初出の実例]「そんな喩へを引っぱられちゃ」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の花見)

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