デジタル大辞泉
「艶」の意味・読み・例文・類語
えん【艶】
[名・形動]
1 あでやかで美しいこと。なまめかしいこと。また、そのさま。「艶を競う」「艶な姿」
2 情趣に富むさま。美しく風情のあるさま。
「月隈なくさしあがりて、空のけしきも―なるに」〈源・藤袴〉
3 しゃれているさま。粋なさま。
「鈍色の紙の、いとかうばしう―なるに」〈源・澪標〉
4 思わせぶりなさま。
「いとこそ―に、われのみ世にはもののゆゑを知り、心深き、類はあらじ」〈紫式部日記〉
5 中世の歌学や能楽における美的理念の一。感覚的な優美さ。優艶美。妖艶美。
「詞のやさしく―なるほか、心もおもかげも、いたくはなきなり」〈後鳥羽院御口伝〉
あで【▽艶】
[形動][文][ナリ]《「あて(貴)」の音変化》色っぽくなまめかしいさま。あでやか。「香り高く蘭が艶に咲く」「艶姿」
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「艶」の読み・字形・画数・意味
艶
常用漢字 19画
(旧字)艷
24画
(異体字)
28画
[字音] エン
[字訓] うつくしい・あでやか
[字形] 会意
正字は
に作り、豐+盍。〔説文〕五上に「好にして長(たけたか)し」とあり、〔玉
〕に「
、俗に艷に作る」とみえる。
[訓義]
1. うつくしい。
2. あでやか。*
字条参照。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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艶 (えん)
元来は,容色の美しいのを意味する漢語で,怨情,媚態,華美,みやび,技巧性,離隔性などあれこれ用いられる。日本でも,《源氏物語》《枕草子》などでは,華麗優雅な上品さ,ほのぼのとした情趣,色めかしさなどの意に用いられた。平安時代の貴族的美意識を反映した語である。歌学用語としても,平安時代すでに歌合判詞や歌論の類に見え,しだいに和歌の美的範疇を表す評語となる。藤原俊成の意識した艶の美には,《源氏物語》の〈もののあはれ〉を受け継ぎ,さらに余情美を求めようとする傾斜が認められる。中世以降には艶を内面化しようとする傾向が強まり,心敬の連歌論《ささめごと》などに見える〈心の艶〉〈冷艶〉の美は,その極致とされる。艶の句について,〈艶といへばとて,ひとへに句の姿,言葉のやさばみたるにはあるべからず。胸のうち人間の色欲もうすく,よろづに跡なき事を思ひしめ,人の情を忘れず,其の人の恩には,一つの命をも軽く思ひ侍らん人の胸より出でたる句なるべし〉(《ささめごと》)とある。艶は,日本古典文学論の中心的理念に関与する,重要な美の一つであった。
執筆者:上条 彰次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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艶 えん
?-? 江戸時代前期,南部行信(ゆきのぶ)の側室。
陸奥(むつ)盛岡の材木商岩井与市郎の娘。寛文5年(1665)キリシタン弾圧で処刑された父の晒(さらし)首をもちかえり円光寺で供養する。自身はキリシタンではなく,孝心からのおこないだったためゆるされ,さらに盛岡藩主行信の側室となり信恩(のぶおき)(のち6代藩主)を生んだ。通称はお蓮。法名は慈恩院。
出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
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艶
えん
日本文学における美意識の一つ。上品なあでやかさ,つやのあるはなやかな美などをいう。『天徳歌合』『源氏物語』をはじめ,室町時代にいたるまで,物語,随筆,歌論にみられる。室町時代には心敬が「氷ばかり艶なるはなし」 (『ひとりごと』) といい,内面的に深化した艶に美の理想をみた。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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