遊水池(読み)ユウスイチ

デジタル大辞泉 「遊水池」の意味・読み・例文・類語

ゆうすい‐ち〔イウスイ‐〕【遊水池/遊水地】

洪水時に、河川から水を流入させて一時的に貯留し、流量の調節を行う池・湖沼。また、同様の目的で使う空き地・原野など。
[補説]河川法では第6条の河川区域を定める条文で、「堤外の土地(政令で定めるこれに類する土地及び政令で定める遊水地を含む)」のように「遊水地」の表記を用いる。
[類語]浄水池沼沢湖沼泥沼古池溜め池貯水池人工池用水池水瓶ダム湖水淡水湖鹹水湖塩湖河跡湖三日月湖火口原湖火口湖陥没湖人造湖

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「遊水池」の意味・読み・例文・類語

ゆうすい‐ち イウスイ‥【遊水池】

〘名〙 洪水時に河川からの水を一時貯水して、流水量を調節するための天然または人工の貯水池。
※血の来訪者(1961)〈大藪春彦〉人狩り「沼というと、渡良瀬の遊水池か」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「遊水池」の意味・わかりやすい解説

遊水池
ゆうすいち

河川沿いにある湖や湿地平地または河道内に一時的に洪水時の水を貯留させる人為的に設けられた池。以前は無堤防あるいは霞堤(かすみてい)(不連続に設けられた堤防)によって洪水を河川から遊水池に導いたが、近年は堤防の一部をわざと低くした越流堤(えつりゅうてい)によっている。このように堤防で河道と完全に分けられた遊水池を洪水調節池とよぶ。これに対して、河道の中に本堤からほぼ直角に川の中央に向かって横堤(よこてい)を設けるなどして、河道内で流れを緩めて貯留する場合を河道遊水池という。洪水調節池に貯留した水は、本川が減水するにつれて樋(ひ)門および排水機によって河川へ戻す。

 日本では、利根川(とねがわ)水系の渡良瀬(わたらせ)遊水池(渡良瀬遊水地の表記が多い)がとくに規模が大きく、その容量は小河内(おごうち)ダムの奥多摩湖(東京都)に匹敵する。カンボジアトンレ・サップ湖はメコン川の天然の遊水池で、雨期になると川水が湖へ逆流し、面積が乾期の3倍にもなる。

[榧根 勇]

『渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会編『渡良瀬遊水池 その歴史と自然を守るために』(1991・随想舎)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「遊水池」の意味・わかりやすい解説

遊水池 (ゆうすいち)
retarding basin

河川の沿岸の低地部で,洪水時にははんらんした河水が流入することにより,下流の洪水のピーク流量を減少させて洪水調節の役割を果たすような土地。遊水地と書くこともある。河川のはんらん地域や自然湖沼をそのまま利用する場合と,河川付近の低湿地に人工的に設ける場合があるが,ダムなどの大がかりな施設によらずに洪水調節を行い,下流における洪水のピーク流量を減ずることができるので,治水上はきわめて有効なものである。日本では,近年土地利用上の観点から,河道に沿った遊水池を締め切ってこれに越流堤を設けることにより,洪水が遊水池内にはんらんを始める時期をずらし,かつ遊水池の容量を効果的に利用して,ピーク流量カットの効率を高めるようにしており,これをとくに調節池と呼んでいる。渡良瀬川が利根川に合流する直前にある渡良瀬遊水池が古来有名であるが,昭和40年代に越流堤や周囲堤がつくられて調節池化された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遊水池」の意味・わかりやすい解説

遊水池
ゆうすいち
storage basin

河道に沿って,あるいは河川の合流点付近の低地部で,出水の際に湛水して,自然に洪水調節の役割を果たすもの。遊水池を人工的に調節して洪水調節の効果を高める場合もあり,また利水も兼ねた多目的利用がはかられているものもある。利根川渡良瀬遊水地は後者の代表例である。調節池ということもある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「遊水池」の解説

遊水池
ゆうすいち

湖・沼・池など河川の流域にあって,増水時にその水を満たして洪水を緩和する役割をもった場所。栃木県に始まり,埼玉県加須市と茨城県古河市境で利根川に注ぐ渡良瀬川の遊水池が有名だが,近世には越後国紫雲寺潟(しうんじがた),下総国飯沼・印旛沼なども遊水池の機能をはたした。それらの岸辺は通常の水位のときには耕作ができるが,増水時には被害をうける不安定なものであった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

百科事典マイペディア 「遊水池」の意味・わかりやすい解説

遊水池【ゆうすいち】

洪水の一部を氾濫(はんらん)させ,下流の洪水調節を行う天然の池。また越流堤で遊水池を締め切り改良した人工の貯水池を調節池といい,遊水池より洪水調節効果が大きい。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の遊水池の言及

【干拓】より

…一方,湖沼干拓は,湖面,湖岸,沼地を堤防で囲み,内水を排水ポンプにより排除して陸地とする。流域からの集水を地区外に導くため堤外に流入水を集めて排除する水路,すなわち承水路や,洪水を一時的に貯留する遊水池を設ける。また,干拓方式には干拓堤防が直接海に向かって築堤され,その内部を干拓する単式干拓と,湾口をまず堤防で締め切り人造湖をつくって,その内部に内堤をめぐらす複式干拓の2方式がある。…

【洪水】より

…河道の各地点ごとに配分された流量は計画高水流量と称し,それぞれの地点ではこの流量を計画の対象として必要な堤防の高さや川幅などが決められ,それに則して河川の改修が行われる。 洪水は豪雨や融雪によって生ずる自然現象ではあるが,洪水対策として設けられるダムや平野部での遊水池などに一時的に蓄え,その流量を減じて下流へ流すなど,人為的にその形態を変更させることができる。明治中期以降,日本の重要河川で行われてきた堤防の連続化による徹底した河川改修工事によって,洪水流はそれ以前より早く河道内に集中的に流入して,河口に到達する時間が短縮化されるとともに,中・下流部では,同程度の豪雨に対しても洪水流量が大きくなるという結果をもたらした。…

※「遊水池」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android