スピン

デジタル大辞泉 「スピン」の意味・読み・例文・類語

スピン(spin)

[名](スル)
回転すること。旋回すること。「凍結路で車がスピンする」
フィギュアスケートで、氷上の一点で体の中心線を軸としてこまのように体を回転させること。ジャンプなどとともに、採点要素の一つ。アップライトスピンシットスピンキャメルスピンに大別。
ダンスで、体を回転させること。
テニス・卓球・ゴルフなどで、ボールの回転。「スピンをかける」
飛行機の、きりもみ
素粒子の基本的な量子数の一。古典的には粒子の自転による角運動量とみなされる。
[類語](5急降下錐揉み

スピン

洋装本で、しおりとして用いるひも。一方がじ目の上部にのり付けされている。
[補説]語源未詳。

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精選版 日本国語大辞典 「スピン」の意味・読み・例文・類語

スピン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] spin )
  2. 回ること。回転。旋回。「車がスピンする」 〔世界の自動車(1958)〕
  3. 飛行機の錐揉(きりもみ)降下。
    1. [初出の実例]「今日は錐揉み(スピン)の練習でしたね」(出典:汚れた英雄 雌伏篇(1968)〈大藪春彦〉大空の翼)
  4. フィギュアスケートで、氷上の一点でこまのように、体を旋回させること。
    1. [初出の実例]「後の足を水平以上に高くあげながら、水鳥のやうに辷っては、姿勢をスピンに変へてゐた」(出典:臈たき花(1933)〈中河与一〉一二)
  5. テニスや卓球などで、球に回転を与えること。また、その回転。
  6. ダンスで、足の親指のつけ根のふくらんだ部分で回転すること。
    1. [初出の実例]「スピンは柔道の感じだった。〈略〉技をはずされて引きずり回されているような感じだった」(出典:金色の鼻(1973)〈古山高麗雄〉)
  7. 糸をつむぐこと。
  8. 電子または他の素粒子の自転運動に伴う角運動量のこと。その粒子固有の値をもつ。〔自然科学的世界像(1938)〕

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百科事典マイペディア 「スピン」の意味・わかりやすい解説

スピン

素粒子がもつ固有の角運動量。つまり軌道運動による角運動量とは別に,素粒子が静止状態でももつ角運動量。大きさはh/2π(hはプランク定数)の整数倍または半整数倍に相当し,この整数または半整数をスピン量子数または単にスピンという。中間子ではスピン0,電子ニュートリノ等のレプトン核子ハイペロンでは1/2,光子では1。スピンは素粒子がもつ最も基本的な性質の一つで,これが半整数の粒子(フェルミオン)はフェルミディラック統計に,整数の粒子(ボソン)はボース・アインシュタイン統計に従う(量子統計力学)。スピンの概念は1925年G.E.ウーレンベックとS.A.ハウトスミットがアルカリ金属の原子スペクトルの異常を説明するため電子について提唱。初め電子の自転によるものと考えられたが,ディラックの相対論的電子理論や以後の場の量子論では自転によらず理論の必然的帰結として導出される。
→関連項目協同現象クッシュグラビトンK中間子原子核原子核物理学原子構造磁気共鳴磁気モーメント磁性体ゼーマン効果双極子中性子ディラックハウトスミットバリオンヒッグス粒子フェルミ粒子ボース粒子

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改訂新版 世界大百科事典 「スピン」の意味・わかりやすい解説

スピン
spin

静止している粒子の角運動量をスピンといい,粒子の自転の角運動量と解釈することができる。量子力学によれば角運動量の大きさは,ħ(プランク定数hを2πで割ったもの)を単位にして0,1/2,1,3/2,……という整数,あるいは半整数に限られる。ある素粒子,あるいはある状態の原子核はつねに一定の大きさのスピンをもつので,スピンはその粒子を特徴づける量子数の一つに数えられる。例えば電子,核子はスピンが1/2であり,α粒子やπ中間子はスピン0,重陽子などはスピン1である。スピンの大きさをS(×ħ)とするとき,スピンを空間のある方向へ射影した成分は,SS-1,S-2,……,-Sという離散的な値のみをとりうる。したがってスピンSの粒子は2S+1個の状態(スピンの方向)をもつことになる。例えばスピンが1/2の電子は,主量子数,方位量子数など軌道で決まる状態のおのおのに対し,スピンが上向き,下向きの2種の状態がある。

 電子のスピンは原子スペクトル中の二重項(接近したスペクトル線の対)の存在,異常ゼーマン効果などを説明する中で導入された。すなわち,アルカリ元素のスペクトルはボーアの原子論では理解できない二重項をもち,また磁場をかけたときのエネルギー準位の分離のしかたに異常性を示すが,1925年にウーレンベックGeorge Eugene Uhlenbeck(1900-1988)とハウトスミットSamuel Abraham Goudsmit(1902-78)は,電子が内部自由度をもち2個の状態をとりうるとすれば,これらの現象を説明できることを明らかにした。電子が二つの状態をもち磁場によって分離することは,銀の原子線が不均一磁場によって2本に分けられることで直接確かめられた。また元素の周期表を説明するためには,一つの軌道に2個まで電子が入りうることが必要で,これは電子のスピンが1/2(とりうる状態が2個)であることを示す。スピンは軌道角運動量と相互作用し(スピン軌道相互作用),両者が平行であるか反平行であるかによってエネルギーに差を生ずる。これによって原子のスペクトルに微細構造ができる。原子核がスピンをもつ場合は,電子のスピンとの結合によってさらに複雑な超微細構造をつくり,これから原子核のスピンの大きさを推定することもできる。一般に原子核のスピンは磁気モーメントの測定などから決めることができるが,短寿命のものや素粒子のスピンは,それらの崩壊,反応の角分布のようすなどから決められる。

 粒子のスピンと統計とは密接な関係があり,スピンが整数のものはボース統計に従い,スピンが半奇数のものはフェルミ統計に従う。原子核の場合は,その構成子である核子がスピン1/2のフェルミ粒子であるので,その複合体の統計およびスピンが整数であるか半奇数であるかは,核子数が偶数であるか奇数であるかによって決まる。素粒子のスピンと統計の関係は,パウリによって相対論的場の理論から証明された。粒子はそれに固有の定まったスピンをもつのだが,一般により大きいスピンをもつ励起状態が存在する。素粒子のこのような励起状態の一群をレジェ系列という。ただし電子などのレプトンのレジェ系列の存在は明らかでない。
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化学辞典 第2版 「スピン」の解説

スピン
スピン
spin

G.E. UhlenbeckおよびS. Goudsmitは,磁場中での原子スペクトルの分裂の仕方を説明するために,電子がその軌道運動の自由度のほかに自転の自由度としてスピン角運動をもつことを提唱したが,のちにP.A.M. Diracが相対論的電子論の立場から,スピンが電子のもつ内部自由度の一つであることを導き出した.量子力学的にはスピンs角運動量演算子であり,s2 の固有値は,プランク定数hを2πで割ったℏを使うと,

s(s + 1)2
で与えられる.sスピン量子数とよばれ,その値は1/2である.原子核を構成する陽子や中性子もスピンをもっており,それらのスピン量子数は電子と同じく1/2である.

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パラグライダー用語辞典 「スピン」の解説

スピン

失速を伴う旋回。左右の失速状態がアンバランスになり、左右どちらかが先に失速を始めるために起きる。片翼が急激に失速に入るため後ろに落ちるように旋回が始まり、それを追うように失速していない片翼が前方へ加速する。そのため回転が始まる。回転が非常に速いため、フライヤーの回転がついていかず、ライザーが捻れツイストに入ることがある。また、回転にともないエアーインテークから空気が流入するため翼型が維持され、それがさらにスピンを加速する。

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知恵蔵 「スピン」の解説

スピン

粒子の磁気にかかわる量。角運動の一種で、「自転」のイメージでとらえるとわかりやすいが、古典力学のそれとは異なる。外から磁場が加わると、それと同じ(平行)か逆(反平行)の向きになる。電子スピンを制御すると電流の流れやすさを変えたりできるため、最近は次世代回路開発の分野でも注目される。エレクトロニクスに対し、スピントロニクスという言葉も使われる。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

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サーフィン用語集 「スピン」の解説

すぴん【スピン spin】

波のパワーを利用して360°回転することをいう。ボディーボードの技

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世界大百科事典(旧版)内のスピンの言及

【磁気モーメント】より

…この磁場は磁気モーメントがつくる磁場と同じで,もとの閉曲線に沿っての定常電流は磁気モーメントと同等の効果を与え,磁気モーメントとみなすことができる。電子は電荷をもち,自転運動(スピン)をし,また軌道運動をする。これらの運動が電子の磁気モーメントを形成し,この磁気モーメント,とくにスピンに基づくものが物質の磁気的性質を担っている。…

※「スピン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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