働く(読み)ハタラク

デジタル大辞泉 「働く」の意味・読み・例文・類語

はたら・く【働く】

[動カ五(四)]
仕事をする。労働する。特に、職業として、あるいは生計を維持するために、一定の職に就く。「朝から晩までよく―・く」「工場で―・く」「―・きながら資格を取る」
機能する。また、作用して結果が現れる。「薬が―・いて熱が下がる」「引力が―・く」「機械がうまく―・かない」
精神などが活動する。「知恵が―・く」「勘が―・く」
悪事をする。「盗みを―・く」「不正を―・く」
文法で、用言助動詞語尾が変化する。活用する。「五段に―・く動詞
動く。体を動かす。
「死にて六日といふ日のひつじの時ばかりに、にはかにこの棺―・く」〈宇治拾遺・三〉
出撃して戦う。
「オノレワ戦場ニ出テ楯矛たてほこヲ取ッテワ―・カネドモ」〈天草本伊曽保・陣頭の貝吹き〉
[補説]「働」は国字
[可能]はたらける
[類語](1かせ勤める労する労働する活動する作業する勤労する従事する就労する実働する勤務する執務する服務する勤続する・仕える立ち働く勤まる汗水を流すひたいに汗する動き運動行動生動蠢動しゅんどう躍動活躍奔走動く動き回る/(2作用する機能する作動する

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「働く」の意味・読み・例文・類語

はたら・く【働】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙
    1. からだを動かす。動く。
      1. [初出の実例]「生きてはたらき給ふ仏と言はれ給ふ加持参り給へば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
      2. 「まったく文覚いづまじとてはたらかず」(出典:平家物語(13C前)五)
    2. 行動する。ふるまう。
      1. [初出の実例]「服は射成敗也とは事の成敗を見てはたらくぞ」(出典:史記抄(1477)一六)
    3. 努力して事をする。精出して仕事をする。労働する。
      1. [初出の実例]「つねにはたらくは、養性なるべし」(出典:方丈記(1212))
      2. 「京から三里の道、働(ハタラ)いた方でござります」(出典歌舞伎・五十三駅扇宿附(岡崎の猫)(1887)序幕)
    4. 特に、戦場で活躍する。また、出撃する。
      1. [初出の実例]「けっく散々にはたらきて、そくばくの人をそんざし」(出典:御伽草子・あきみち(室町末))
    5. 心などが、ゆれ動く。動揺する。
      1. [初出の実例]「又もしたふ事あらば、心もはたらき候ぬべし」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    6. 精神などがよく活動する。機転がきく。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      1. [初出の実例]「梟の昼出て、まよひありきぬるいとおかし。かならず笑はれじと、はたらきたる顔にもあらず」(出典:俳諧・本朝文選(1706)三・譜類・百鳥譜〈支考〉)
      2. 「細かい事に迄よく好奇心を働(ハタ)らかせたがった」(出典:道草(1915)〈夏目漱石〉六九)
    7. 役に立つように用をする。効果をあらわす。機能する。
      1. [初出の実例]「艷なく、きてんなく、働かぬ鼓なり」(出典:四座役者目録(1646‐53)下)
    8. ( 他動詞的にも用いる ) 他人のために努力する。他人のために奔走したり取りはからったりする。
      1. [初出の実例]「念比にする馴染甲斐には、こんな所をはたらけ」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)五)
    9. 他にある力を及ぼす。作用する。
      1. [初出の実例]「そのうち水平に働(ハタ)らいてゐた磁石力が」(出典:不思議な鏡(1912)〈森鴎外〉四)
    10. 能で、特定の意味を持つ、強くはげしい動きをする。
      1. [初出の実例]「その持ち様、使ひ様をよくよく伺ひて、その本意をはたらくべし。相構相構、鬼のはたらき、又舞の手になる所を用心すべし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)二)
    11. 用言や助動詞の語形が変化する。活用する。
      1. [初出の実例]「萌(もえ)はもゆもえとはたらくは常也」(出典:語意考(1769))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行五(四) 〙 (悪事などを)する。行なう。
    1. [初出の実例]「人前に慮外をはたらき」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)三)

働くの語誌

本来の意味。そこからの意味が派生し、中世になると、この意味を表わすために「人」と「動」とを合わせて「働」という国字ができた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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