召・見(読み)めす

精選版 日本国語大辞典の解説

め・す【召・見】

(動詞「みる(見)」に上代の尊敬の助動詞「す」が付いて音の変化したもの)
[1] 〘他サ五(四)〙
[一]
① (見) 「見る」の尊敬語。御覧になる。
※万葉(8C後)一八・四〇九九「いにしへを思ほすらしもわご大君吉野の宮をあり通ひ売須(メス)
② 「統治する」の尊敬語。お治めになる。
※万葉(8C後)一・五〇「やすみしし わが大君 高照らす 日の皇子 荒栲の 藤原が上に 食(を)す国を 売之(メシ)給はむと」
③ 「人を呼び寄せる」「招く」の尊敬語。お呼び寄せになる。
※万葉(8C後)三・四五四「はしきやし栄えし君のいましせば昨日も今日も吾(わ)を召(めさ)ましを」
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「聞けども聞けども飽かぬものは、母氏が我子と召(めシ)し御音なり」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「かしこき相人ありけるを聞こしめして、宮のうちにめさんことは、宇多の帝の御誡めあれば」
④ 特に「呼び出して官職につかせる」の尊敬語。御任命になる。
※書紀(720)皇極三年正月(岩崎本訓)「中臣の鎌子の連を以て、神祇(つかさ)の伯(かみ)に拝(メス)
⑤ 「呼びよせてかわいがる」の尊敬語。寵愛なさる。目をおかけになる。
※書紀(720)神代下(鴨脚本訓)「時に皇孫、姉(あね)は醜(みにく)しとおほして、御(メサ)ずして罷(ま)けたまふ」
⑥ (上位者が無理に呼び寄せるというところから) 命によって捕える。「めしいましむ」「めしおく」「めしきんず」「めしこむ」「めしすう」など、複合語として用いることが多い。
※古今著聞集(1254)一二「強盗の張本ありけり。今津に宿りたるよしきこしめして、西面の輩をつかはして、からめ召れける時」
⑦ 「名づける」の尊敬語。(ある名で)お呼びになる。
※平家(13C前)五「『まつよひ、かへるあした、いづれかあはれはまされる』と御尋ありければ〈略〉とよみたりけるによってこそ、待よひとはめされけれ」
⑧ 物などを「取り寄せる」「差し出させる」の尊敬語。お取り寄せになる。提出おさせになる。
※古今(905‐914)秋下・二七九・詞書「仁和寺に菊の花めしける時に」
⑨ 特に、「買う」の尊敬語。お買いになる。お買い上げになる。お求めになる。
※続詞花(1165頃)戯咲「女の、よきつみやめすと売りありきけるを聞きて」
※中華若木詩抄(1520頃)上「花をうる人も〈略〉花をめせ花をめせと云て、たれが処へもゆけども」
⑩ (上位者、官の命によって無理に取り寄せるところから) 命によって取りあげる。お取りあげになる。
※平家(13C前)二「申うくるところの詮は、ただ重盛が頸をめされ候へ」
※曾我物語(南北朝頃)一「先祖所領を半分めさるる事そもなに事ぞ」
⑪ 身にとり入れる、着ける、さらに、身体の一部に関連する動作をいう尊敬語。
(イ) 「食う」「飲む」の尊敬語。めしあがる。
※万葉(8C後)一六・三八五三「石麻呂に吾物申す夏痩によしといふ物そむなぎ取喫(めせ)〈売世(メセ)反也〉」
※大鏡(12C前)四「大かはらけをぞまゐらせしに、三度はさらなる事にて、七八度などめして」
(ロ) 「着る」「はく」の尊敬語。おめしになる。おはきになる。
※右京大夫集(13C前)「あを色の御唐衣、蝶をいろいろに織りたりしめしたりしいふかたなくめでたく」
※御伽草子・鉢かづき(室町末)「夜も明方になりぬれば、めしもならはぬ草鞋しめはき給ひて」
(ハ) 行水などをなさる。風呂をお使いになる。
※平家(13C前)三「御行水をめさばやとおぼしめすはいかがせんずる」
(ニ) 「(腹を)切る」の尊敬語。切腹なさる。
※平治(1220頃か)中「かなはぬ所にて御腹めされん事、なにの義か候べき」
(ホ) 「(年を)とる」の尊敬語。年をおとりになる。
※落語・樟脳玉(下の巻)(1891)〈三代目三遊亭円遊〉「段々お年を召して来ると」
(ヘ) 「(風邪を)ひく」の尊敬語。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「お風でもめしてはお悪うございますから」
⑫ 広く「する」「作る」の尊敬語として用いることがあるが、多くは「めされる」の形で用いる。→召される(一)。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「トノノ ゴシュッケ mexebatote(メセバトテ)
[二] 補助動詞として用いる。
① 他の尊敬語動詞の連用形に付いて、尊敬の意をつけ加えるのに用いる。「おもほしめす」「きこしめす」「しろしめす」など。通常一語化したものとされている。
② 特に近世、動詞の連用形に付いて、尊敬の意を添える。まれな用法で、通常は「めされる」が用いられる。→召される(二)。
※盤珪仏智弘済禅師御示聞書(1688‐1704頃)下「此会座におゐて、たやすく仏心をしりめす事、我等より仏縁ふかき、面々の御仕合と申ものでござる」
[2] 〘自サ五(四)〙
① 「乗る」の尊敬語。お乗りになる。
※平家(13C前)四「それより御輿にめして福原へいらせおはします」
② 「(風呂に)はいる」の尊敬語。おはいりになる。
※人情本・英対暖語(1838)三「お風呂が涌ましたから、誰様ぞ入湯(メシ)ませんか」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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