デジタル大辞泉
「被る」の意味・読み・例文・類語
かぶ・る【▽被る/▽冠る】
[動ラ五(四)]《「かがふる」の音変化形「かうぶる」からさらに変化した形》
1 頭や顔などにそれを覆うものを載せる。また、全体をすっぽり覆う。「帽子を―・る」「面を―・る」「毛布を―・って寝る」「雪を―・った山」
2 頭からからだ全体にかけて受ける。水・ほこりなどを浴びる。「水を―・る」「火の粉を―・る」
3 本来は引き受けなくて済むものを、身に受ける。こうむる。しょいこむ。「人の罪を―・る」「不況のあおりを―・る」
4 写真で、現像過程の失敗、露出過度やフィルムの欠陥などのため、フィルムや印画紙の画面が曇ってぼやける。「この写真は―・っている」
5 すでにある色や音などの上に、さらに他の物が加わる。「日陰の撮影でやや青の―・った画像になる」「会話の音に電車の通過する音が―・る」
6 一方の発言と、もう一方の発言が重なる。「同時にしゃべりだして言葉が―・る」
7 同じようなものがそろう。重複する。「キャラが―・る」「保護者会でAさんと洋服が―・ってしまう」「前の人と発言内容が―・る」
8 《帰り客が総立ちになりほこりが立つため、手ぬぐいをかぶったところから》芝居・寄席などが終わる。はねる。「芝居が―・る」
9 《もと芝居社会の用語。「毛氈をかぶる」の略で》しくじる。失敗する。多く、主人や親の面目を損なった場合にいう。
「音無しい男だけに…東京を―・ってしまった」〈万太郎・ゆく年〉
10 芝居・寄席などで、観客が一時に大勢押し寄せる。大入り満員になる。
11 だまされる。一杯食う。
「どこの牛の骨やら知らいで人の―・る衣裳つき」〈浮・胸算用・三〉
→浴びる[用法]
[可能]かぶれる
[下接句]仮面を被る・泥を被る・猫を被る・面を被る・毛氈を被る
[類語](1)被る・引っ被る・戴く・着る・はく・羽織る・まとう・着込む・着こなす・突っかける・お召しになる/(3)引責・引っ被る・泥を被る・尻を拭う・双肩に担う・背負って立つ・責めを負う
こうむ・る〔かうむる〕【被る/×蒙る】
[動ラ五(四)]《「こうぶる」の音変化》
1 他人から、行為や恩恵などを受ける。いただく。「格別の恩顧を―・る」「ご愛顧を―・る」→御免蒙る
2 災いなどを身に受ける。「損害を―・る」「迷惑を―・る」「天罰を―・る」
3 頭からかぶる。
「罪人をして、熊皮を―・らしめ」〈竜渓・経国美談〉
[類語]浴びる・掛かる
かがふ・る【▽被る】
[動ラ四]
1 かぶる。
「麻衾引き―・り」〈万・八九二〉
2 上の人からの仰せ言などを受ける。賜る。
「天皇の敦きめぐみを―・りて」〈記・下〉
かむ・る【▽被る/▽冠る】
[動ラ五(四)]「かぶる」に同じ。
「イタリア松の笠を―・ったようなのが」〈寅彦・旅日記から〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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かぶ・る【被・蒙・冠】
- [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「かがふる(被)」の変化した語 )
- ① あるものを他のものでおおう。特に、笠、帽子、面などで頭や顔の表面をおおう。また、蒲団や着物を頭の方までかけておおうことにもいう。かむる。〔観智院本名義抄(1241)〕
- [初出の実例]「をつな頭巾をかぶって占者のやうな形で頭陀袋をぐっと首にかけて」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)
- ② (水、ほこり、粉などを)上から浴びる。また、作物などが上まで水につかることにもいう。
- [初出の実例]「丼鉢を倒して冠りし小麦(うどん)の粉に、天窓(あたま)や顔は勿論の肩から胸は真白にて」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)五)
- ③ ( 比喩的に用いて ) 身に受ける。こうぶる。こうむる。
- (イ) 恩恵、福徳、位階など、好ましいものを受ける。
- [初出の実例]「濫りに天恩を荷(カフリ)、喜びぬ所以」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
- (ロ) 傷、災禍、罰など、好ましくないものを受ける。
- [初出の実例]「或は当に堕落して火に焼かるることを為(カフ)らむ」(出典:龍光院本妙法蓮華経平安後期点(1050頃)二)
- (ハ) 名称、あだ名などをつけられる。
- [初出の実例]「向島の二字を冠(カブ)らせた町名」(出典:江戸から東京へ(1923)〈矢田挿雲〉九)
- ④ 負担としてしょいこむ。損な役を引き受ける。責任を負う。
- [初出の実例]「まふけるも又かぶるのも古道具」(出典:雑俳・大黒柱(1713))
- ⑤ 雑俳などで、前句や題に使われた語や文字を付句の初めにのせる句法。地口などにもいう。
- [初出の実例]「何の道にも式のあるもので〈略〉点取地口となれば冠(カブッ)た文字は点にならぬと申す」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
- ⑥ 勢いよく上へ持ちあげる。ふりかぶる。
- [初出の実例]「赫と成った赤熊が、握拳を被(カブ)ると斉しく、かんてらが飛んで」(出典:日本橋(1914)〈泉鏡花〉三二)
- [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
- ① ( 「毛氈(もうせん)をかぶる」という芝居の語から ) 主人や親などに対して面目ないことをしでかす。主人や親の家、また、ある場所から追い出される。しくじる。
- [初出の実例]「あの子はねヱ、七さんと色をしてねヱ、かぶって居なさりやす」(出典:洒落本・辰巳之園(1770))
- ② だまされる。いっぱい食う。
- [初出の実例]「其次の玉むし色の羽織は牛涎屋(にかわや)を、どこの牛の骨やらしらいで人のかぶる衣装つき」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)三)
- ③ ( 終わると観客が総立ちになってほこりが立つので手拭をかぶったところからという ) 一日の芝居や演芸などが終わる。終演になる。はねる。〔通人語辞典(1922)〕
- [初出の実例]「其夜、閉場(カブ)ってから、楽長と小生フラスコの尻を焼いてると」(出典:夢声半代記(1929)〈徳川夢声〉サットー物語)
- ④ 大入り満員になることをいう、寄席芸人仲間などの語。
- [初出の実例]「一座が小樽の花園座でしきりにかぶってゐる最中であった」(出典:澪(1911‐12)〈長田幹彦〉一)
- ⑤ 写真で、フィルムの欠陥や露出過度などで画面がくもってぼやける。
- ⑥ 重なる。ダブる。「客層がかぶる」
- ⑦ ( 動詞の連用形に付けて補助動詞のように用いる ) …することに失敗する。「言いかぶる」「買いかぶる」「踏みかぶる」
被るの語誌
奈良時代、平安時代初期に見える「かがふる」が「かうぶる」を経て成立した語。平安時代後半期以降、漢文訓読語として、和文語「かづく」に対応する語として用いられた。和文資料の「かぶる」は、いずれも神仏の恵みや徳、宣旨といった抽象的なものを受ける意で用いられ、布などでおおうといった具体的事例もある訓読文での意味と異なり、限定的である。
こうぶ・るかうぶる【被・蒙】
- 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「かがふる」の変化した語 )
- ① =こうむる(被)①
- [初出の実例]「此の冠どもは、〈略〉四月・七月の斎(ほかみ)の時に着(カウフル)所なり」(出典:日本書紀(720)大化三年是歳(北野本訓))
- 「大甲冑を被(カウフラ)く」(出典:守護国界主陀羅尼経巻八平安初期点(900頃))
- ② =こうむる(被)②
- [初出の実例]「頼以皇天之威(あめのかみのみいきほひをカウフリ)て凶就(あた)、就戮(ころされぬ)」(出典:日本書紀(720)神武即位前己未年三月(北野本訓))
- 「かみほとけのめぐみかうぶれるに似たり」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月三〇日)
- ③ =こうむる(被)③
- [初出の実例]「天下に疵(きず)を蒙(カウブ)(高良本ルビ)るものたえず」(出典:平家物語(13C前)一二)
- 「汝若し我を食はば、忽ちばつをかうぶる可し」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉三)
- ④ =こうむる(被)④
- [初出の実例]「さをば五月にかうぶらしめつ」(出典:名語記(1275)六)
- ⑤ (酒を)大いに飲む。
- [初出の実例]「宵に、酒を被(カウブ)った勢で」(出典:思ひ出す事など(1910‐11)〈夏目漱石〉一八)
被るの語誌
( 1 )上代の「かがふる」が変化して中古以降用いられた語であるが、仮名文献では②の神仏や上位者から行為や恩恵を受ける意の例が見られるのみで、①の頭や体を何かでおおう意の例はなく、その意は「かづく」が表わしていた。一方、訓点資料では①②ともに使用例が見られる。
( 2 )③の傷などを身に受ける例は中世以降である。→「こうむる(被)」の語誌
こうむ・るかうむる【被・蒙】
- 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「こうぶる(被)」の変化した語 )
- ① 頭から衣服、帽子などをかぶる。身体や頭をおおう。かぶる。
- [初出の実例]「かうべにかうむってかづいたか鶡冠と云て」(出典:玉塵抄(1563)一七)
- ② 神仏や目上の人から、ある行為や恩恵などを受ける。いただく。相手に対する敬意をこめて用いる。「御免をこうむる」
- [初出の実例]「後生に三宝のあはれみをもかうむらんと思ひて」(出典:九冊本宝物集(1179頃)四)
- ③ きず、災禍、罪など好ましくないものを身に受ける。また、負担をしょいこむ。
- [初出の実例]「友実といふ禰宜きずをかふむりなんどしたりければ」(出典:愚管抄(1220)四)
- ④ ( 冠 ) ある字やことばなどを他のことばや名前のはじめにつける。冠する。
- [初出の実例]「陰
の二字あるを採て篇首に弁(カウム)らしむ」(出典:鑑草(1647)陰
)
被るの語誌
( 1 )「かがふる」から変化した語に、「こうぶる(こうむる)」と「かぶる(かむる)」があるが、中古に生じた「こうぶる」に加え、中世以降「こうむる」が用いられるようになる。
( 2 )頭部などを何かでおおう意では、漢文訓読文の場合、主に「こうぶる」「かぶる」が、和文脈では主に「かずく」が用いられた。
( 3 )「こうぶる」「こうむる」は、上位者からの行為や恩恵を受ける、もしくは、傷を身に受ける例を中心に使用される語として定着し、「かぶる」「かむる」との意味の分化が意識されていたと考えられる。→「こうぶる(被)」の語誌
かがふ・る【被・冠】
- 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「こうむる(被)」の古形 )
- ① かぶる。かける。
- [初出の実例]「あさぶすま 引き可賀布利(カガフリ)」(出典:万葉集(8C後)五・八九二)
- 「被甲 上、皮義反、可何布流(カカフル)下、可夫度」(出典:新訳華厳経音義私記(794))
- ② 受ける。こうむる。
- [初出の実例]「蒙惑 上、音牟、訓加何布流」(出典:新訳華厳経音義私記(794))
- ③ 特に、上の人の命令などを受ける。お受けする。承る。
- [初出の実例]「かしこきや命(みこと)加我布理(カガフリ)明日ゆりや草(かえ)が共(むた)寝む妹(いむ)なしにして」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三二一)
かむ・る【被・冠】
- 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
- ① =かぶる(被)[ 一 ]①
- [初出の実例]「各国の人が、夫々帽子を冠(カム)って居るが」(出典:文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初)
- ② =かぶる(被)[ 一 ]②
- [初出の実例]「川沿の草木はみんな泥水をかむったままに干上って」(出典:写生紀行(1922)〈寺田寅彦〉)
- ③ =かぶる(被)[ 一 ]③
- [初出の実例]「中橋天王、小舟町天王、大伝馬町天王〈略〉何れも皆其冠(カム)れる町名の処に仮屋を有し」(出典:東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉六月暦)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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