数学用語と物理学用語の二義がある。
平面の任意の点を定点Oの周りに定方向に定角度θだけ回すことを回転、または回転移動という( の(1))。この操作は、平面をそれ自身の上に写す写像と考えられる。O、θをそれぞれ回転の中心、回転角という。空間においては、定直線lを含む任意の平面をlを軸として定方向に定角度θだけ回転させるという操作は、空間をそれ自身の上に写す写像と考えられる。これを空間の回転移動といい、l、θをそれぞれ回転軸、回転角という( の(2))。とくに、180度の回転を、Oまたはlに関する対称移動という。空間の定点Oを通る直線を軸とする回転を全部ひっくるめてOの周りの回転という。平面と空間いずれにおいても、Oの周りの回転はすべて直交変換の一種であり、したがって合同変換の一種でもある。また、平面と空間いずれにおいても、Oの周りの回転が二つ与えられたとき、これらを続けて行った変換を最初の二つの回転の積と定義する。このとき、平面のOの周りの回転の全体がつくる群と、空間のOの周りの回転の全体が生成する群をともに回転群という。
平面や空間における回転という概念は次のようにして一般化できる。まず、nを自然数とし、実数の全体をRで表す。n個の実数の組(x1,…,xn)の全体をRnで表せば、Rnは普通の和とスカラー倍に関してR上のn次元ベクトル空間になる。A=(aij)をn次実正方行列とすると、Rnの元(x1,…,xn)を決めるたびにRnの元(y1,…,yn)が
yi=ai1x1+…+ainxn,i=1,…,n
によってただ一つ定まる。これはAをもとにしてRnからRnへの写像が定まったことを意味する。そこで、この写像をfAで表そう。明らかにfAは線形である。AがtAA=Iを満たすとき、Aを直交行列といい、fAを直交変換という。ただし、tAはAの転置行列を、Iは単位行列を表す。「直交変換はどんな図形もそれと同じ形の図形に写す」ことが知られている。Aを直交行列とすると、その行列式は±1であるが、とくに+1のとき、変換fAをRnの回転という(この意味の回転は中心とか軸という言葉を伴わないことに注意)。その全体は写像の合成を積として群をなすが、それをRnの回転群という。
平面に直交座標系を一つ定めると、平面はR2と同じになる。2次行列
をAとおけば、Aは行列式1の直交行列で、直交変換fAは原点を中心とする角θの回転にほかならない。このとき、先に定義した平面の回転群とR2の回転群は一致することがわかる。同様に、空間に直交座標系を一つ定めると、空間はR3と同じになる。3次行列
をBとおけば、Bは行列式1の直交行列で、直交変換fBはz軸を軸とする角θの回転にほかならない。このとき、先に定義した空間の回転群とR3の回転群は一致することが知られている。
[高木亮一]
回転運動をさす場合がある。
物理学でしばしば用いる演算子のことを回転またはローテーションrotationという。たとえば、流れのようすを表すには流れの各点に流速を示すベクトルを書けばよい。すなわち、各成分vx、vy、vzが点の座標の関数である速度ベクトル関数v(x,y,z)を与えればよい。これをベクトル場という。流体の渦の状態は、このベクトル関数からローテーションという微分演算子rotあるいはcurlを作用させて求めることができる。すなわち
となる。磁場Hのローテーションは電場Eである。すなわちE=rotHとなる。
[田中 一]
(1)平面上の各点Pに対し,Pをその平面上の一定点Oのまわりに一定角θだけまわした点をP′とするとき,PをP′にうつす対応を平面上の回転といい,Oを回転の中心,θを回転角という。空間の各点Pに対し,Pを一定直線lのまわりに一定角θだけまわした点をP′とするとき,PをP′にうつす対応を空間における回転といい,lを回転軸,θを回転角という。空間の1点Oに対し,Oを通る任意の直線を軸とする回転をOを中心とする回転という。平面の場合も,空間の場合も1点Oのまわりの回転の全体は合成を積として群をつくる。これを回転群という。この群は,平面の場合には可換群であるが,空間の場合にはそうではない。
(2)空間内に微分可能なベクルト場Vがあり,点(x,y,z)にベクトル(u,v,w)が対応しているとき,点(x,y,z)にベクトルを対応させることにより,新しいベクトル場が得られる。このベクトル場をベクトル場Vの回転といい,rotVまたはcurlVで表し,ローテーションVまたはカールVと呼んでいる。
→ベクトル解析
執筆者:中岡 稔
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「ローテーション」のページをご覧ください。
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…太陽の周りの惑星の運動のように,大きさを考えず1点で表した物体(質点という)が他の1定点の周りで行う円運動や楕円運動をいうこともあるが,大きさのある物体の(変形を別途に考えることにして)運動を,並進運動と回転の合成として取り扱う場合の後者を指すのがふつうである。例えば,机の上を転がる円筒を考えると,その運動は軸の平行移動とその周りの回転とを合わせたものとみなすことができる。…
…太陽の周りの惑星の運動のように,大きさを考えず1点で表した物体(質点という)が他の1定点の周りで行う円運動や楕円運動をいうこともあるが,大きさのある物体の(変形を別途に考えることにして)運動を,並進運動と回転の合成として取り扱う場合の後者を指すのがふつうである。例えば,机の上を転がる円筒を考えると,その運動は軸の平行移動とその周りの回転とを合わせたものとみなすことができる。この場合,各瞬間の運動を,円筒と机の接触線を軸とした回転と考えることも可能である。…
…天体がその重心を通る軸のまわりに回転する現象である。複数の天体が共通重心のまわりを回る公転に対する語。回転の軸を自転軸,1回の回転に要する時間を自転周期という。一般に自転の状態は,自転軸の方向と自転周期によって定まる。地球の自転の場合,自転軸は天の北極を向き自転周期は1恒星日である。 天体の自転周期の測定には,天体の種類に応じていくつかの方法がある。太陽系の天体で表面に模様が見える場合は,その移動を観測して決める。…
…これに対し一般の平行座標系を斜交座標系skew coordinatesという。直交座標系では両座標軸の正の向きは,x軸を原点Oのまわりに時計の針のまわる向きと反対の向きに90度回転したときに,x軸の正の向きとy軸の正の向きが一致するように選ばれているのが通常である。このとき,両座標軸により分かたれる平面の四つの部分のおのおのを象限といい,図4のI,II,III,IVの部分を第1,第2,第3,第4象限という。…
…これを座標系の平行移動という。また,両座標系が同じ点Oを原点とする直交座標系で,I,JをOのまわりにθだけ回転した位置にI′,J′があるときは(図2),座標変換式は,となる。これを座標系の回転という。…
…S上の点でのベクトル場Fのn成分をFnと書くことにし,なる面積分を定義して,これをSを通過するベクトル流vector fluxという。
[勾配,発散,回転]
スカラー場φ(x,y,z)が与えられたとき,(∂φ/∂x,∂φ/∂y,∂φ/∂z)を成分とするベクトル場をφの勾配,あるいはグラディエントgradientと呼び,▽φ,またはgradφで表す。ベクトル場F=(Fx,Fy,Fz)に対して,で定義されるスカラー場divFをFの発散といい,またx,y,z方向の単位ベクトルをそれぞれi,j,kとするとき,で定義されるベクトル場rotF(curlFとも書く)をFの回転という。…
※「回転」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
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