回転(読み)カイテン

デジタル大辞泉 「回転」の意味・読み・例文・類語

かい‐てん〔クワイ‐〕【回転/×廻転】

[名](スル)
物が、ある軸を中心としてまわること。「―式のテーブル」「翼が―する」
からだを転がしたり、宙がえりしたりすること。「―レシーブ」「マット上で三―する」
機能を十分生かした働きをすること。存分に活動すること。「頭の―が鈍い」「人員を―させて事務をさばく」
物事が、動きをくり返すこと。「資金の―が早い」
サービス業などで、客が新しい客と入れ替わること。「客の―が悪い」
回転競技」の略。
[類語]回る旋回回す巡る経巡る渡り歩く巡回巡行遍歴巡らす一巡り一巡一回り一周半周周回転回

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精選版 日本国語大辞典 「回転」の意味・読み・例文・類語

かい‐てんクヮイ‥【回転】

  1. 〘 名詞 〙
  2. くるっとまわること。また、まわすこと。
    1. [初出の実例]「銕石の心を回転して蜿媚の心を生じたと云心ぞ」(出典:四河入海(17C前)一四)
    2. 「壜を回転して燐をして普く壜内に布達せしめ密に口を栓塞し貯ふ」(出典:舎密開宗(1837‐47)内)
    3. [その他の文献]〔後漢書‐虞詡伝〕
  3. 平面や空間の図形や物体が、その各点の相互の位置関係を変えることなく、ある点や直線のまわりを一定角だけまわること、あるいは、まわりつづけること。また、そのまわす操作。回転移動。回転運動。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
  4. 事に応じて次々と考えをめぐらすこと。
    1. [初出の実例]「寝てゐた間の頭の回転(クヮイテン)の工合によってどんな事にでもなって行く」(出典:金(1926)〈宮嶋資夫〉一三)
  5. 物事が初めから終わりまでめぐる一巡。特に、飲食店などで、客が次々に入れかわる効率。また、投資された資金が回収されるまでの一巡。
    1. [初出の実例]「後から後からと、所謂『廻転』を急いで、追ひ立てられる感じと違って、『何卒ごゆっくり』と言はれてゐるやうで気持がいい」(出典:ロッパ食談(1955)〈古川緑波〉甘話休題III )
  6. 回転競技(かいてんきょうぎ)」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「回転」の意味・わかりやすい解説

回転(数学・物理学)
かいてん

数学用語と物理学用語の二義がある。

数学用語

平面の任意の点を定点Oの周りに定方向に定角度θだけ回すことを回転、または回転移動という(の(1))。この操作は、平面をそれ自身の上に写す写像と考えられる。O、θをそれぞれ回転の中心、回転角という。空間においては、定直線lを含む任意の平面をlを軸として定方向に定角度θだけ回転させるという操作は、空間をそれ自身の上に写す写像と考えられる。これを空間の回転移動といい、l、θをそれぞれ回転軸、回転角という(の(2))。とくに、180度の回転を、Oまたはlに関する対称移動という。空間の定点Oを通る直線を軸とする回転を全部ひっくるめてOの周りの回転という。平面と空間いずれにおいても、Oの周りの回転はすべて直交変換の一種であり、したがって合同変換の一種でもある。また、平面と空間いずれにおいても、Oの周りの回転が二つ与えられたとき、これらを続けて行った変換を最初の二つの回転の積と定義する。このとき、平面のOの周りの回転の全体がつくる群と、空間のOの周りの回転の全体が生成する群をともに回転群という。

 平面や空間における回転という概念は次のようにして一般化できる。まず、nを自然数とし、実数の全体をRで表す。n個の実数の組(x1,…,xn)の全体をRnで表せば、Rnは普通の和とスカラー倍に関してR上のn次元ベクトル空間になる。A=(aij)をn次実正方行列とすると、Rnの元(x1,…,xn)を決めるたびにRnの元(y1,…,yn)が
  yiai1x1+…+ainxn,i=1,…,n
によってただ一つ定まる。これはAをもとにしてRnからRnへの写像が定まったことを意味する。そこで、この写像をfAで表そう。明らかにfAは線形である。AtAAIを満たすとき、A直交行列といい、fAを直交変換という。ただし、tAAの転置行列を、Iは単位行列を表す。「直交変換はどんな図形もそれと同じ形の図形に写す」ことが知られている。Aを直交行列とすると、その行列式は±1であるが、とくに+1のとき、変換fARnの回転という(この意味の回転は中心とか軸という言葉を伴わないことに注意)。その全体は写像の合成を積として群をなすが、それをRnの回転群という。

 平面に直交座標系を一つ定めると、平面はR2と同じになる。2次行列

Aとおけば、Aは行列式1の直交行列で、直交変換fAは原点を中心とする角θの回転にほかならない。このとき、先に定義した平面の回転群とR2の回転群は一致することがわかる。同様に、空間に直交座標系を一つ定めると、空間はR3と同じになる。3次行列

Bとおけば、Bは行列式1の直交行列で、直交変換fBz軸を軸とする角θの回転にほかならない。このとき、先に定義した空間の回転群とR3の回転群は一致することが知られている。

[高木亮一]

物理学用語

回転運動をさす場合がある。

 物理学でしばしば用いる演算子のことを回転またはローテーションrotationという。たとえば、流れのようすを表すには流れの各点に流速を示すベクトルを書けばよい。すなわち、各成分vxvyvzが点の座標の関数である速度ベクトル関数v(x,y,z)を与えればよい。これをベクトル場という。流体の渦の状態は、このベクトル関数からローテーションという微分演算子rotあるいはcurlを作用させて求めることができる。すなわち

となる。磁場Hのローテーションは電場Eである。すなわちE=rotHとなる。

[田中 一]



回転(スキー競技)
かいてん
slalom

スキーアルペン競技の一種。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「回転」の意味・わかりやすい解説

回転 (かいてん)
rotation

(1)平面上の各点Pに対し,Pをその平面上の一定点Oのまわりに一定角θだけまわした点をP′とするとき,PをP′にうつす対応を平面上の回転といい,Oを回転の中心,θを回転角という。空間の各点Pに対し,Pを一定直線lのまわりに一定角θだけまわした点をP′とするとき,PをP′にうつす対応を空間における回転といい,lを回転軸,θを回転角という。空間の1点Oに対し,Oを通る任意の直線を軸とする回転をOを中心とする回転という。平面の場合も,空間の場合も1点Oのまわりの回転の全体は合成を積として群をつくる。これを回転群という。この群は,平面の場合には可換群であるが,空間の場合にはそうではない。

(2)空間内に微分可能なベクルト場Vがあり,点(xyz)にベクトル(uvw)が対応しているとき,点(xyz)にベクトルを対応させることにより,新しいベクトル場が得られる。このベクトル場をベクトル場Vの回転といい,rotVまたはcurlVで表し,ローテーションVまたはカールVと呼んでいる。
ベクトル解析
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百科事典マイペディア 「回転」の意味・わかりやすい解説

回転(ベクトル)【かいてん】

ベクトルA(直交座標成分A(/x),A(/y),A(/z))の場において(式1)の成分をもつベクトルをAの回転といい,rot Aまたはcurl Aと書き,ローテーションAまたはカールAと呼んでいる。Aが流体の速度ならrot Aは流体部分の回転角速度の2倍に当たる。→勾配発散
→関連項目渦度演算子ベクトルポテンシャルマクスウェルの方程式

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「回転」の意味・わかりやすい解説

回転
かいてん
slalom

アルペンスキー種目の一つ。特に敏捷性,技巧性が要求される。 1922年,アーノルド・ランによって考案され,1936年のガルミッシュパルテンキルヘンオリンピック冬季競技大会から正式種目となった。旗門で規定されたコースを滑り,その所要タイムの優劣を競う。標高差男子 180~220m,女子 140~200mでコースを設け,そのうち4分の1は 30°以上の急斜面とする。旗門数は,男子 55~75双旗,女子 45~65双旗で,旗門の間隔は 15m,幅4~6m。青,赤の2色旗を用いる。試技は異なるコースで1回ずつ,計2回。合計タイムで順位が決まる。旗門の双旗のポールを結ぶ線を両足で通過しないと失格になる。

回転
かいてん
rotation

平面上では,1点のまわりに,図形 (一般には点集合) を同じ角だけ回す変換をいう。3次元空間では,軸のまわりに,それと直交する平面上を回転することで,回転角のほかに,軸の方向が指示されなければならないので,少し複雑になる。 n 次元空間では,(n-2) 次元空間を「軸」として回転することを考えなければならない。回転の全体はをつくり,回転群という。

回転
かいてん

「ローテーション」のページをご覧ください。

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普及版 字通 「回転」の読み・字形・画数・意味

【回転】かいてん

めぐる。

字通「回」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の回転の言及

【回転運動】より

…太陽の周りの惑星の運動のように,大きさを考えず1点で表した物体(質点という)が他の1定点の周りで行う円運動や楕円運動をいうこともあるが,大きさのある物体の(変形を別途に考えることにして)運動を,並進運動と回転の合成として取り扱う場合の後者を指すのがふつうである。例えば,机の上を転がる円筒を考えると,その運動は軸の平行移動とその周りの回転とを合わせたものとみなすことができる。…

【回転運動】より

…太陽の周りの惑星の運動のように,大きさを考えず1点で表した物体(質点という)が他の1定点の周りで行う円運動や楕円運動をいうこともあるが,大きさのある物体の(変形を別途に考えることにして)運動を,並進運動と回転の合成として取り扱う場合の後者を指すのがふつうである。例えば,机の上を転がる円筒を考えると,その運動は軸の平行移動とその周りの回転とを合わせたものとみなすことができる。この場合,各瞬間の運動を,円筒と机の接触線を軸とした回転と考えることも可能である。…

【自転】より

…天体がその重心を通る軸のまわりに回転する現象である。複数の天体が共通重心のまわりを回る公転に対する語。回転の軸を自転軸,1回の回転に要する時間を自転周期という。一般に自転の状態は,自転軸の方向と自転周期によって定まる。地球の自転の場合,自転軸は天の北極を向き自転周期は1恒星日である。 天体の自転周期の測定には,天体の種類に応じていくつかの方法がある。太陽系の天体で表面に模様が見える場合は,その移動を観測して決める。…

【座標】より

…これに対し一般の平行座標系を斜交座標系skew coordinatesという。直交座標系では両座標軸の正の向きは,x軸を原点Oのまわりに時計の針のまわる向きと反対の向きに90度回転したときに,x軸の正の向きとy軸の正の向きが一致するように選ばれているのが通常である。このとき,両座標軸により分かたれる平面の四つの部分のおのおのを象限といい,図4のI,II,III,IVの部分を第1,第2,第3,第4象限という。…

【座標変換】より

…これを座標系の平行移動という。また,両座標系が同じ点Oを原点とする直交座標系で,I,JをOのまわりにθだけ回転した位置にI′,J′があるときは(図2),座標変換式は,となる。これを座標系の回転という。…

【ベクトル解析】より

S上の点でのベクトル場Fn成分をFnと書くことにし,なる面積分を定義して,これをSを通過するベクトル流vector fluxという。
[勾配,発散,回転]
 スカラー場φ(x,y,z)が与えられたとき,(∂φ/∂x,∂φ/∂y,∂φ/∂z)を成分とするベクトル場をφの勾配,あるいはグラディエントgradientと呼び,▽φ,またはgradφで表す。ベクトル場F=(Fx,Fy,Fz)に対して,で定義されるスカラー場divFFの発散といい,またx,y,z方向の単位ベクトルをそれぞれijkとするとき,で定義されるベクトル場rotF(curlFとも書く)をFの回転という。…

※「回転」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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