回る(読み)マワル

デジタル大辞泉 「回る」の意味・読み・例文・類語

まわ・る〔まはる〕【回る/×廻る】

[動ラ五(四)]
軸を中心にして円を描くように動く。回転する。「車輪が―・る」「地球は―・る」
物の周囲に沿って、円を描くように移動する。「地球のまわりを月が―・る」「岬を―・る船」
順々に決まった場所などをめぐる。「あいさつに―・る」「観光地を―・る」
遠くなるほうの道をとる。迂回うかいする。「危険な沢筋を避けて稜線へ―・る」「急がば―・れ」
寄り道をする。「外出のついでに先生のお宅へ―・る」
物事が順に移る。「仕事が―・ってくる」「週単位で当番が―・る」
それまでとは異なった立場に変わる。「賛成に―・る」「受け身に―・る」
効力などが隅々まで及ぶ。また、配慮などが行き届く。「酔いが―・る」「手が―・る」「気が―・る」
よく動く。よく働く。「舌が―・る」「頭が―・る」
10 物事がとどこおりなく進む。「仕事がうまく―・る」
11 金銭の運用で利益が生じる。「月に三分で―・る」
12 《時計の針が円を描いて動くところから》ある時刻が過ぎる。「そろそろ三時を―・ろうとするところだ」
13 (「目が回る」の形で)めまいがする。「急に立ち上がって目が―・る」
14 金銭上のやりくりができる。
「女房お民が手一つで、―・らぬ暮し常なれど」〈人・梅児誉美・四〉
15 遊里で、遊女などが客の気に入るようにふるまう。
「さのみ物もつかはぬ男に―・りておもしろがるに」〈浮・置土産・五〉
16 動詞の連用形に付いて、そのあたりを…する、あちこち…する意を表す。「のたうち―・る」「走り―・る」「逃げ―・る」
[可能]まわれる
[用法]まわる・めぐる――「月をめでながら池を回る(巡る)」「名所を回る(巡る)」など、動く、移動するの意では相通じて用いられる。◇「回る」の方が多く使われ、意味の範囲も広い。「車が回る」のように、その物自体が回転する意では「巡る」を使わない。◇「巡る」は文章語的で、「寺の本堂を巡る回廊」のように、取り囲むの意。「規制緩和をめぐる議論」のように、…に関するの意は、「回る」にはない。
[下接句]急がば回れ御鉢おはちが回る気が回る首が回らない米の飯とお天道様はどこへ行っても付いて回る酒が回る舌が回る知恵が回る手が後ろに回る手が回る目が回る焼きが回る呂律ろれつが回らない
[類語]巡る経巡る渡り歩く巡回巡行遍歴回転旋回回す巡らす一巡り一巡一回り一周半周周回転回

もとお・る〔もとほる〕【回る/×廻る】

[動ラ四]
めぐりまわる。徘徊はいかいする。
鹿ししこそばい這ひをろがうづらこそい這ひ―・れ」〈・二三九〉
物事が思うとおりに運ぶ。
「―・らぬ三味線鳴らして」〈浮・禁短気・一〉

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精選版 日本国語大辞典 「回る」の意味・読み・例文・類語

まわ・るまはる【回・廻】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 物体が中心を軸として回転する。また、物が円の形を描いて動く。
    1. [初出の実例]「若戸枢転(マハら)ずは、皮を著くること聴す」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
  3. 周囲にそって動く。
    1. [初出の実例]「此山は四方巖石であんなれば、搦手よもまはらじ」(出典:平家物語(13C前)七)
  4. 遠い道を取って行く。回り道をする。
    1. [初出の実例]「はしへまはれば人がしる。湊の川の塩がひけがな」(出典:歌謡・閑吟集(1518))
  5. あちこちと歩く。めぐり歩く。
    1. [初出の実例]「汝は洛中をまはり、隠れもなき鰯売」(出典:御伽草子・猿源氏草紙(室町末))
  6. 途中で立ち寄る。寄り道をする。
    1. [初出の実例]「夫から雑司谷から堀の内へ廻(マハ)って今帰ったぜ今」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)初)
  7. 順番や時期などがめぐってくる。
    1. [初出の実例]「『伊勢講にて御座候』『それは御太義』といふに、『されば貴様のお薬と同事にて、よくまはり候』」(出典:咄本・軽口露がはなし(1691)二)
  8. それまでとは別の立場にかわる。
    1. [初出の実例]「寝かしつける役目を、〈略〉若い看護婦さんに頼んで、自分は料理方にまはるのだが」(出典:姉弟と新聞配達(1923)〈犬養健〉一)
  9. ( 「目が回る」の形で ) 目まいがする。目がくらむ。
    1. [初出の実例]「やたらにお引張回し遊ばすものですから…あの目がまはるやうで厶りますんで」(出典:藪の鶯(1888)〈三宅花圃〉一)
  10. 物がすみずみまで行きわたる。薬・酒などがからだに行きわたって効があらわれる。
    1. [初出の実例]「穐の風頃やうすか替ったは さては薬もまはったる月」(出典:俳諧・西鶴大矢数(1681)第三五)
  11. よく動く。よく動いて役に立つ。
    1. [初出の実例]「ころころと・はじめはまはる奉公人」(出典:雑俳・住吉御田植(1700))
    2. 「まはらぬ舌にせきかけせきかけくりかけて」(出典:浄瑠璃・信州川中島合戦(1721)三)
  12. 配慮などが行き届く。「手が回らない」「気が回る」
    1. [初出の実例]「土地が豊饒になってくると智恵のまはること」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一〇)
  13. 利益を生む。利得になる。
    1. [初出の実例]「小判がしの利は何程にまはる物ぞ」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)七)
  14. 真情をつくす。相手の気持に違わぬように立ちはたらく。特に遊里で、客によく勤める。
    1. [初出の実例]「人めもはばからず、〈略〉まはりてみするたぐひをいふ也」(出典:評判記・難波物語(1655))
  15. 金や物のやりくりができる。間に合う。
    1. [初出の実例]「葬礼をかき入石塔を質に置ても、思ふ様にまはらざれば」(出典:談義本・根無草(1763‐69)前)
  16. やりくりが苦しくなる。
    1. [初出の実例]「むだ金が際限もなく入ったゆゑ、大分内証がまはったそうさ」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)四)
  17. ( 「焼きがまわる」の意か ) にぶくなる。ぼける。
    1. [初出の実例]「源七もゆるんだとか廻(マハ)ったとか、人に言はれにゃあならねえから」(出典:歌舞伎・梅雨小袖昔八丈(髪結新三)(1873)二幕)
  18. ( 時計の針が円を描いて動く意から ) ある時刻が過ぎる。
    1. [初出の実例]「まだ漸く三時半すこし廻はった計り」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
  19. 他の動詞の連用形に接続して、そのあたりを…する、あちこち…する意を表わす。
    1. [初出の実例]「自執弓走廻敺雑人」(出典:古事談(1212‐15頃)一)
    2. 「廻文を以て東八箇国を触廻(フレマハ)るに」(出典:太平記(14C後)三一)

もとお・るもとほる【回・徘徊・繞】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
  2. まわる。めぐる。徘徊する。
    1. [初出の実例]「神風の 伊勢の海の 大石に 這ひ廻(もとほ)ろふ 細螺の い這ひ母登富理(モトホリ) 撃ちてし止まむ」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  3. ( 曲がる意から ) まっすぐでない行ないをする。曲がったことをする。
    1. [初出の実例]「忿と恨とを先と為、追ひ触ればひ、暴(し)ひ熱(あつ)かひ、很(ひすかし)まに戻(モトホル)を以て性と為」(出典:成唯識論寛仁四年点(1020)六)
  4. 思うようにはこぶ。思うように自在に動く。自由になる。
    1. [初出の実例]「人躰衆にふにふにて、もとをらす、のひのひにて口惜迄候」(出典:上杉家文書‐天正一〇年(1582)(三・四月頃)上杉景勝自筆書状)
    2. 「もとおらぬ三味線鳴らしてゐやう程に、主は笑止がる顔して」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)一)
  5. 役に立つ。
    1. [初出の実例]「もとをらねへことをいったっても始まらねへはなし合だから」(出典:滑稽本・早変胸機関(1810))

もとほ・る【回】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙もとおる(回)

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