日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
富士川(山梨県・静岡県の川)
ふじかわ
山梨県、甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)北西斜面を源流として、静岡県富士(ふじ)市と静岡市清水(しみず)区との境界付近で駿河湾(するがわん)に注ぐ山梨県の最長河川。「ふじがわ」ともいう。一級河川で、延長128キロメートル。流域は山梨、長野、静岡の3県にまたがり3990平方キロメートルに及ぶが、その約83%は山地で、平地は17%にすぎない。河床の傾斜は80分の1ないし370分の1といわれ、日本三大急流の一つに数えられている。
慶長(けいちょう)年間(1596~1615)に角倉了以(すみのくらりょうい)により甲府盆地の流出口にあたる富士川(ふじかわ)町鰍沢(かじかざわ)の禹ノ瀬(うのせ)が開削されて以来、富士川は中部日本と東海地方を結ぶ一大交通路となった。この鰍沢―岩淵(いわぶち)(現、富士市)間の富士川舟運は、青柳(あおやぎ)河岸、黒沢河岸(いずれも富士川町)などの河港が繁栄し物資流通の大動脈であった。今日ではJR身延(みのぶ)線と国道52号、また富士山側の有料道路群がその機能を引き継いでいる。おもな支流に塩川、御勅使(みだい)川、笛吹(ふえふき)川、早川、佐野川などがあり、その水は甲府盆地内では多目的に使用されているが、ほかではおもに水力発電に利用されており、一部ではその包蔵水力の開発が計画されている。
[吉村 稔]