残月(読み)ザンゲツ

デジタル大辞泉 「残月」の意味・読み・例文・類語

ざん‐げつ【残月】

明け方まで空に残っている月。有明の月。のこんの月。
地歌箏曲そうきょく手事物てごともの天明寛政(1781~1801)のころ大坂峰崎勾当みねざきこうとう作曲門人の娘の死を悼んで作ったもので、特に手事部分力作
[類語]月輪夕月立ち待ち月居待ち月寝待ち月有明の月新月三日月上弦下弦弦月弓張り月半月満月望月明月名月春月朧月寒月

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精選版 日本国語大辞典 「残月」の意味・読み・例文・類語

ざん‐げつ【残月】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 あけがたまで空に残っている月。残りの月。有明月。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「遊子なほ残月に行く 函谷に鶏鳴く〈賈島〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)下)
    2. [その他の文献]〔白居易‐客中月詩〕
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 地唄・箏曲。生田流。天明・寛政(一七八一‐一八〇一)頃の大坂の峰崎勾当(こうとう)作曲。門人の娘の死を惜しんで作ったもので、曲名は故人の法名。手法の妙をつくした手事(てごと)があり、地唄・箏曲中の名曲。
    2. [ 二 ] 「残月肩衝(かたつき)」のこと。大名物、肩衝茶入れの一つ。漢作唐物で、東山御物であったもの。前田家から徳川家、松平家と伝えられた。
      1. [初出の実例]「先達(さきだっ)て松兵へにおふせつけられた残月(ザンゲツ)のお茶入御払ものとてわたしおかれしが」(出典:人情本春色梅児誉美(1832‐33)初)

のこる【残】 月(つき)

  1. 夜明け頃、空に残っている月。のこりの月。のこんの月。残月(ざんげつ)。有明の月。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「探幽が筐の雲に残る月 京橋渡る初鳫の声」(出典:俳諧・芭蕉真蹟懐紙(1676))

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改訂新版 世界大百科事典 「残月」の意味・わかりやすい解説

残月 (ざんげつ)

地歌・箏曲の曲名。大坂の峰崎勾当作曲の本調子手事(てごと)物の地歌。1792年(寛政4)刊《増補よしの山》に初出。峰崎の門人で夭逝した大坂宗右衛門町松屋某の娘をしのんで作曲。曲名はその法名〈残月信女〉によるという。箏の手は地域により異なる。手事は5段から成り,初段と二段,三段と四段は段合せができる。その際,残る五段目とチラシには菊原琴治(1878-1944)作の替手がある。また,手事には菊吉検校や宮崎勾当の三下り替手もあり,初段に《》の合の手を合わせる演出もある。難技巧の大曲であるが,追善曲としてよく演奏される。
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普及版 字通 「残月」の読み・字形・画数・意味

【残月】ざんげつ

夜明けの月。唐・顧況〔角(笛)を聴いて帰るを思ふ〕詩 高に燈を張りて、酒復(ま)たし (た)ちて行けば殘、影徘徊す

字通「残」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「残月」の意味・わかりやすい解説

残月
ざんげつ

地歌(じうた)の曲名。大坂の峰崎勾当(みねざきこうとう)が天明(てんめい)・寛政(かんせい)期(1781~1801)に作曲。彼の門人であった宗右衛門町(そうえもんちょう)の松屋某の娘が早世したのを惜しみ、その追善につくったもので、残月は故人の法名の「残月信女」にちなんでつけられた。歌詞は故人を月に見立ててよみ、そのなかの「真如」は信女にかけたという。曲の途中に非常に長い手事(てごと)とよぶ器楽独奏部のある手事物の代表曲である。その手事は5段あり、初段と二段、三段と四段とを同時に合奏する段返しができる。原曲は三味線だけの伴奏であるが、のちに箏(こと)編曲や三曲編曲もつくられ、合奏される。

[平山けい子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「残月」の意味・わかりやすい解説

残月
ざんげつ

地歌の曲名。大坂の峰崎勾当作曲。寛政 (1789~1801) 以前に作られた手事物の初期の代表曲の一つ。本調子物。手事部が5段に分けられチラシがつくが,現在関西系では段合せまたは替手 (菊吉検校作曲の三下り) との合奏,九州系では替手 (宮崎勾当作曲の三下り) との合奏によることが多い。若くして死んだ女の門人の追善曲で,曲名はその法名の残月信女にちなんでいるという。追善物の代表曲でもある。箏の手付は地域によって異なる。

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デジタル大辞泉プラス 「残月」の解説

残月

東京都港区赤坂に本店を置く和菓子店、虎屋が製造・販売する生姜入りの焼菓子。半月状の生地にすり蜜を塗って白くなった形状が、薄雲のかかった月に似ることから命名。

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世界大百科事典(旧版)内の残月の言及

【常陸坊海尊】より

…近世に東北地方に流布していた《清悦物語》では,海尊は不老長寿であったと伝えるところからすると,東北地方では,《義経記》と同材の物語が漂泊する語り手によって語られていて,早くから海尊自身の懺悔譚の傾向の強い語りがあったものと考えられている。《本朝神社考》《狗張子》《義経勲功記》などの近世の書物には,残夢あるいは残月と称する老翁が,不老長寿で源平合戦のことをよく知っていて,人々に話すので,尋ねてみると実は海尊であったとするものがあり,東北地方の地誌類にも同類の記事をときに見かける。これらの書物では,不老長寿の原因は枸杞(くこ),赤魚の肉,富士山の岩から湧出する飴のようなものを食したため,などとされ,ときには人羹(にんかん)魚の肉ともされる。…

※「残月」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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