焼ける(読み)ヤケル

デジタル大辞泉 「焼ける」の意味・読み・例文・類語

や・ける【焼ける】

[動カ下一][文]や・く[カ下二]
火がついて燃える。燃えてあとかたもなくなる。「古タイヤの―・けるにおい」「家が―・ける」
火が通って食べられるようになる。「サンマが―・ける」「餅が―・ける」
熱せられて熱くなる。「―・けたトタン屋根」「土が―・けて農作物がとれない」 夏》
木炭陶磁器など、製品ができ上がる。「炭が―・ける」「パンが―・ける」
日光紫外線に当たって皮膚が黒くなる。「赤銅しゃくどう色に―・けた肌」
日光や薬品のために変色する。あせる。「西日カーテンが―・ける」
日光を受けて空や雲が赤く染まる。「真っ赤に―・けた西の空」
(「胸がやける」などの形で)食物が胃にたまったりして胸の中が熱く感じる。「食べすぎて胸が―・ける」
(「妬ける」とも書く)ねたましく感じる。「はたが―・けるほど仲がいい」
10 (「世話がやける」「手がやける」などの形で)手がかかる。やっかいである。「ほとほと世話が―・ける」「手の―・ける子」
11 深く恋い慕う。思い乱れる。
「焼く塩の思ひそ―・くる我が下心」〈・五〉
[類語](1燃える燃え盛る燃え広がる燃え上がる燃え立つ燃す燃やす焚くくべるいぶすいぶる燻ぶる煙る火達磨燃焼完全燃焼不完全燃焼/(9嫉妬羨ましいねたましい焼き餅ジェラシー悋気おか焼き法界悋気妬心羨む羨望ねたむそねむやっかむ焼く

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「焼ける」の意味・読み・例文・類語

や・ける【焼・妬】

  1. 〘 自動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]や・く 〘 自動詞 カ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] 火・光などのために物の状態が変わる。
    1. 火がついて燃える。燃えてなくなる。焼失する。
      1. [初出の実例]「大君の 御子の柴垣 八節結り 結り廻し 截れむ柴垣 夜気(ヤケ)柴垣」(出典古事記(712)下・歌謡)
      2. 「かかる程に住み給ふ宮やけにけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
    2. 火にあたって熱くなる。また、加熱されてできあがる。火が通る。
      1. [初出の実例]「三郎は炭火の中から、赤く焼(ヤ)けてゐる火筯(ひばし)を抜き出す」(出典:山椒大夫(1915)〈森鴎外〉)
      2. 「こんがりと好い色に焼けた焼餠に」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)
    3. 日光に照らされて水分が蒸発する。日照り作物が枯れしぼむ。
      1. [初出の実例]「旱(ひて)れば則ち、焦(ヤケ)ぬ」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
    4. 日光にあたって熱くなる。現代俳句では、「灼」の字をあてることが多い。《 季語・夏 》
      1. [初出の実例]「沙は燬(ヤ)けぬ、蹠のやや痛きかな」(出典:有明集(1908)〈蒲原有明〉沙は燬けぬ)
    5. 日光や光にあたって変色する。
      1. [初出の実例]「日にやけて皆なくろん坊さ」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初)
    6. 酸化して色や質がかわる。
    7. 強い摩擦で熱くなる。
      1. [初出の実例]「玩具のモートルを〈略〉買って来て五分もやればブラシの処がやけてもういけなくなる」(出典:断水の日(1922)〈寺田寅彦〉)
    8. 日の光が空に映って赤く燃えているように見える。
    9. 噴火する。
      1. [初出の実例]「此日富士山に火出て焼ぬるによれり」(出典:折たく柴の記(1716頃)上)
  3. [ 二 ] 心理・感情の動きを比喩的にいう。
    1. 思い乱れる。感情がたかぶる。思いの火が燃える。こがれる。
      1. [初出の実例]「海処女らが 焼く塩の 思ひそ所焼(やくる) 吾が下心」(出典:万葉集(8C後)一・五)
    2. あれこれと心づかいがされる。世話がかかる。
      1. [初出の実例]「何時まで経っても世話ばっかり焼けて」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
    3. ( 妬 ) ねたましく思われる。
      1. [初出の実例]「イヨー妬(ヤケ)ます」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
    4. 胸のあたりがつまるように感じられる。
      1. [初出の実例]「餠を食ひ過ごして、胸の焼くるが苦しい」(出典:咄本・醒睡笑(1628)六)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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