焼・妬(読み)やける

精選版 日本国語大辞典の解説

や・ける【焼・妬】

〘自カ下一〙 や・く 〘自カ下二〙
[一] 火・光などのために物の状態が変わる。
① 火がついて燃える。燃えてなくなる。焼失する。
※古事記(712)下・歌謡「大君の 御子の柴垣 八節結り 結り廻し 截れむ柴垣 夜気(ヤケ)む柴垣」
※源氏(1001‐14頃)橋姫「かかる程に住み給ふ宮やけにけり」
② 火にあたって熱くなる。また、加熱されてできあがる。火が通る。
※山椒大夫(1915)〈森鴎外〉「三郎は炭火の中から、赤く焼(ヤ)けてゐる火筯(ひばし)を抜き出す」
※夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部「こんがりと好い色に焼けた焼餠に」
③ 日光に照らされて水分が蒸発する。日照りで作物が枯れしぼむ。
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「旱(ひて)れば則ち、焦(ヤケ)ぬ」
④ 日光にあたって熱くなる。現代俳句では、「灼」の字をあてることが多い。《季・夏》
※有明集(1908)〈蒲原有明〉沙は燬けぬ「沙は燬(ヤ)けぬ、蹠のやや痛きかな」
⑤ 日光や光にあたって変色する。
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初「日にやけて皆なくろん坊さ」
⑥ 酸化して色や質がかわる。
⑦ 強い摩擦で熱くなる。
※断水の日(1922)〈寺田寅彦〉「玩具のモートルを〈略〉買って来て五分もやればブラシの処がやけてもういけなくなる」
⑧ 日の光が空に映って赤く燃えているように見える。
⑨ 噴火する。
※折たく柴の記(1716頃)上「此日富士山に火出て焼ぬるによれり」
[二] 心理・感情の動きを比喩的にいう。
① 思い乱れる。感情がたかぶる。思いの火が燃える。こがれる。
※万葉(8C後)一・五「海処女らが 焼く塩の 思ひそ所焼(やくる) 吾が下心」
② あれこれと心づかいがされる。世話がかかる。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「何時まで経っても世話ばっかり焼けて」
③ (妬) ねたましく思われる。
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「イヨー妬(ヤケ)ます」
④ 胸のあたりがつまるように感じられる。
※咄本・醒睡笑(1628)六「餠を食ひ過ごして、胸の焼くるが苦しい」

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