日本大百科全書(ニッポニカ) 「美里」の意味・わかりやすい解説
美里(町)(熊本県)
みさと
熊本県中部、下益城郡(しもましきぐん)にある町。2004年(平成16)中央町(ちゅうおうまち)、砥用町(ともちまち)が合併して成立。町域の北部は上益城郡甲佐(こうさ)町、御船(みふね)町との境に甲佐岳(753メートル)がそびえ、丘陵地、傾斜地が優勢。南部は京丈(きょうじょう)山(1473メートル)、雁俣(かりまた)山(1315メートル)、白山(1073メートル)など九州山地の山々がそびえる山地で、九州中央山地国定公園、五木五家荘県立自然公園(いつきごかのしょうけんりつしぜんこうえん)に指定。北部を緑川が西流し、緑川水系に属する津留(つる)川、釈迦院(しゃかいん)川、筒川、柏川などの諸河川が山地、丘陵地を刻んで流下する。緑川―津留川に沿って国道218号が東西に走り、ほかに443号、445号が通じる。住宅地は218号などの主要道路沿いに点在。北西部を中心に一部平坦地が開けるものの、農業用地は1割に満たず、森林面積が4分の3を占める典型的な中山間地である。基幹産業は農林業で、丘陵地、傾斜地を棚田に活用した水稲を中心に施設園芸や茶、果樹、葉タバコ、花卉(かき)の栽培、肉用牛の育成などが盛ん。林業は外材や代替材との競合、林業従事者の減少、高齢化、小規模経営などの問題を抱えて衰退傾向にあり、林道、作業道の開設など林業基盤の整備が急がれる。町内には霊台橋(れいだいきょう)(国指定重要文化財)、雄亀滝(おけだき/おけだけ)橋(県指定文化財)、馬門(まかど)橋、二俣二橋など、19世紀建造のアーチ型石造橋が数多く残る。1971年(昭和46)に完成した緑川ダム(多目的ダム)の周辺は1984年に運輸省(現、国土交通省)から家族旅行村の指定を受け、レジャー施設の整備が進んだ。町の南部、大行寺(だいぎょうじ)山(957メートル)の北西麓に位置する坂本から、大行寺山頂に近い八代市泉町柿迫(いずみまちかきざこ)の釈迦院への参道(御坂遊歩道)は「日本一の石段」(3333段)とされる。旧中央町が町興しのシンボルとして石段の造成を計画、1980年に着工、1985年には山形県羽黒山表参道の石段(2446段)を抜き、1988年に完成した。近年は豊かな自然や上述の観光資源を生かした観光開発にも力を注いでいる。面積144.00平方キロメートル、人口9392(2020)。
[編集部]
美里(町)(宮城県)
みさと
宮城県中部、遠田郡(とおだぐん)にある町。2006年(平成18)遠田郡小牛田町(こごたちょう)、南郷町(なんごうちょう)が合併して成立。いずれも奥羽山系を源とする鳴瀬(なるせ)川と江合(えあい)川に南北を挟まれ、両河川が形成する大崎平野(おおさきへいや)の沃土に町域は展開。JR東北本線が南北に通じ、小牛田駅では東方に石巻線(いしのまきせん)、西方に陸羽東線(りくうとうせん)を分岐。国道は東西方向に108号が、南北方向に346号が通じる。交通の便がよいことから、仙台市、石巻市、大崎市などへの通勤者も多い。内陸性気候で冬季の降水量が少なく、降雪期間は比較的短い。農業が基幹産業で、大崎平野の肥沃な耕地で「ササニシキ」「ひとめぼれ」などの水稲が栽培される。このほか畜産業、果樹生産、施設園芸なども盛ん。山前(やままえ)地区にある山前遺跡は、縄文時代、古墳時代、奈良・平安時代から中世に至る複合遺跡。1976年(昭和51)国の史跡に指定され、これを機に史跡公園として整備された。面積74.99平方キロメートル、人口2万3994(2020)。
[編集部]
美里(三重県)
みさと
三重県中北部、安芸郡(あげぐん)にあった旧村名(美里村(むら))。現在は津市の北西部を占める一地区。布引(ぬのびき)山地の東麓(とうろく)、長野川と穴倉(あなくら)川の上流域に開けた地域で、1954年(昭和29)辰水(たつみず)、高宮、長野の3村が合併して成立。2006年(平成18)久居(ひさい)市などとともに津市に合併。中心集落は三郷(みさと)。区域の約75%が山林で、米作、野菜栽培、畜産などが行われる。津市の市街地と伊賀市を結ぶ国道163号が通じ、津市の中心地区までバスで約30分の距離にあり、通勤兼業農家が多い。特産品に梅ジャム、タケノコの缶詰などがある。西の布引山地笠取(かさとり)山一帯は美里高原とよばれ、室生赤目青山国定公園(むろうあかめあおやまこくていこうえん)の一部。長野氏城跡は南北朝時代の山城(やまじろ)で国指定史跡。
[伊藤達雄]
『『美里村史』全2巻(1994・美里村)』
美里(町)(埼玉県)
みさと
埼玉県北西部、児玉郡(こだまぐん)にある町。1984年(昭和59)町制施行。JR八高(はちこう)線、国道254号が通じる。本庄(ほんじょう)台地と松久(まつひさ)丘陵からなり、米作と養蚕の複合経営が発達してきたが、近年では養蚕が減少し、施設園芸(キュウリなど)や畜産が行われている。古くから開発された地域で、古墳群、遺跡が多く、国指定史跡の水殿瓦窯跡(すいでんかわらがまあと)をはじめ十条条里遺跡、羽黒(はぐろ)山古墳群や『万葉集』ゆかりの曝井(さらしい)の遺跡、猪俣の百八灯(いのまたのひゃくはっとう)(国指定重要無形民俗文化財)などがある。円良田湖(つぶらだこ)(一部は寄居(よりい)町)は農業用貯水池で、釣りや行楽でにぎわう。面積33.41平方キロメートル、人口1万1039(2020)。
[中山正民]
『『美里町史』(1986・美里町)』
美里(和歌山県)
みさと
和歌山県北部、海草郡(かいそうぐん)にあった旧町名(美里町(ちょう))。現在は紀美野町(きみのちょう)の中央から東部を占める地域。旧美里町は、1955年(昭和30)下神野(しもこうの)、上神野、国吉(くによし)、長谷毛原(はせけばら)、真国(まくに)の5村が合併、町制を施行して成立。なお、上記各村は1951年に那賀(なが)郡から海草郡に編入。2006年(平成18)野上(のかみ)町と合併、紀美野町となった。国道370号(高野参詣(さんけい)路)が通じる。貴志(きし)川と支流真国川(鞆淵(ともぶち)川)に沿う山間地域。旧高野山(こうやさん)領で、中心の神野市場(いちば)は高野参詣路と龍神(りゅうじん)温泉への旧街道の分岐点にあたる市場町、宿場町であった。シュロ栽培とその加工が盛んであったが、いまはカキ栽培にかわった。ウメ栽培や養鶏も増えている。十三(じゅうさん)神社本殿、摂社丹生(にう)神社本殿、摂社八幡神社本殿は国指定重要文化財。
[小池洋一]