(読み)コモ

デジタル大辞泉 「薦」の意味・読み・例文・類語

こも【薦/×菰】

マコモを粗く編んだむしろ。現在は多く、わらを用いる。こもむしろ。「荷車にを掛ける」
薦被こもかぶ2」の略。おこも。
(「虚無」とも書く)「薦僧こもそう」の略。
マコモの古名。
「心ざし深きみぎはに刈る―は千年ちとせの五月いつか忘れむ」〈拾遺・雑賀〉
[類語]敷物上敷き薄縁うすべり茣蓙ござ花茣蓙むしろ花筵敷き藁絨緞緞通毛氈もうせんカーペット

せん【薦】[漢字項目]

常用漢字] [音]セン(呉)(漢) [訓]すすめる こも
人を取り上げ用いるように進言する。「自薦推薦他薦特薦
こも。敷物。「薦席
[名のり]しげ・のぶ

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精選版 日本国語大辞典 「薦」の意味・読み・例文・類語

こも【薦・菰】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 菰 ) 植物「まこも(真菰)」の古名。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「恵曇(ゑとも)の池、陂(つつみ)を築(つ)く。〈略〉四辺(めぐり)に葦(あし)、蒋(こも)、菅(すげ)生ふ」(出典出雲風土記(733)秋鹿)
    2. 「心ざしふかきみぎはにかるこもはちとせのさ月いつかわすれん〈道綱母〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)雑賀・一一七二)
  3. まこもを粗く織って作ったむしろ。今は藁(わら)を用いる。こもむしろ。
    1. [初出の実例]「独り寝(ぬ)と茭(こも)朽ちめやも綾席(あやむしろ)緒になるまでに君をし待たむ」(出典:万葉集(8C後)一一・二五三八)
    2. 「桜木や菰張まはす冬がまへ〈支梁〉」(出典:俳諧・炭俵(1694)下)
  4. 植物「こもくさ(薦草)」の略。〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
  5. こもかぶり(薦被)」の略。
    1. [初出の実例]「橋にねて菰どしゑいぐゎ物がたり」(出典:雑俳・ぎんかなめ(1729))
  6. ( 「虚無」とも書く ) 「こもそう(薦僧)」の略。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. [初出の実例]「虚妄僧 花ざかりふくとも誰かいとふべき風にはあらぬこもが尺八」(出典:三十二番職人歌合(1494頃)六番)
  7. 江戸時代、夜、道ばたで客をひいた下級売春婦。こもむしろを持っていたところからいう。

せん【薦】

  1. 〘 名詞 〙
  2. すすめること。すいせん。
    1. [初出の実例]「雪舟の薦に藉りて、足利氏の画工の長たり」(出典:文芸類纂(1878)〈榊原芳野編〉五)
    2. [その他の文献]〔李陵‐答蘇武書〕
  3. しきもの。むしろ。〔拾遺記‐周穆王〕

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普及版 字通 「薦」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 16画

(旧字)
17画

[字音] セン
[字訓] すすめる・そなえる・しきりに

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
艸(そう)+(たい)。は解(かいたい)、神判のときに用いる神羊。〔説文〕十上に「獸のするの艸なり。艸に從ふ。古は人、を以て(おく)る。曰く、何をからひ、何(いづ)くにか處(を)ると。曰く、らひ、夏は水澤に處(を)り、柏に處る」という語を載せる。金文の字形に、艸中にをおく形があり、白茅を以て犠牲を包み薦める意であろう。〔周礼、天官、人(へんじん)〕に「そ祭祀には、其の羞の實を共(供)す」という語があり、まだ飲食しない初物を薦、他を進という。供薦の意より、薦進の意となる。(せん)と通用し、副詞に用いる。

[訓義]
1. すすめる、そなえる、たてまつる、神にささげる。
2. そなえもの、おそなえ。
3. しく、しきもの。
4. いたる、すすむ。
5. よもぎの一種、こも。
6. (せん)と通じ、しきりに。

[古辞書の訓]
和名抄 古毛(こも) 〔字鏡集〕 クサ・コモ・ノブ・フサク・アク・コモフサ・タテマツル・ススム・ムシロ・カサス(ヌ)

[語系]
tzian、)tzia、またdzyak、席zyakは声近く、これらはみな茅・祭としてその上に犠牲をおき、神に薦めるためのもの。いわゆる白茅屯束(とんそく)の用に供するもので、祭として敷き、神に薦めるもの。(進)tzien、祭tziatも声義の関係があり、神に進めて祭ることをいう。また(巽)sun、dzhian、(選)siuanも一系をなす語で、は神に具(そな)える、は神前で二人拝舞することをいう。にはくもの、薦めるものの意がある。なおtzian、臻tzhenと通じて、しきりに、いたるの意に用いる。

[熟語]
薦引・薦延薦函・薦薦挙・薦居薦享・薦薦献・薦賢・薦言・薦・薦至薦祀・薦事・薦薦羞・薦書・薦薦臻・薦信薦紳・薦寝・薦新・薦数薦牲・薦席薦然・薦草・薦達・薦枕薦陳・薦・薦・薦導薦牘・薦抜・薦罰・薦聞薦辟・薦壁・薦・薦保薦脯・薦奉・薦誉・薦揚・薦・薦礼・薦論
[下接語]
引薦・殷薦謁薦・嘉薦・享薦・供薦・貢薦・祭薦・首薦・称薦・推薦・席薦・奏薦・追薦・登薦・拝薦・壁薦・奉薦・褒薦・論薦

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改訂新版 世界大百科事典 「薦」の意味・わかりやすい解説

薦 (こも)

マコモや藁(わら)を編んだもので,敷物や被覆材として用いる。古くはマコモで織ったがスゲやチガヤ,イ(藺),ガマ(蒲),竹なども用い,現在は藁が一般的である。盆の精霊棚に新薦(あらごも)を敷く風習は古代の遺風を示しており,かつては殿上の大床や,大饗(たいきよう)の敷物,あるいは神事の斎庭(ゆにわ)や神前への奉納物の敷物として用いられた。神事などの敷物はすべて清浄を尊んで毎回新しくするしきたりであったが,民間ではこもはむしろ粗末なものとして扱われることが多い。産所にこもを敷くことは,愛媛県下でお産のことをコモウケといったり,山形県下で産婆をコモカブリということからも知れる。乞食や私娼をコモカブリというのもこれらがいつもこもをかぶっているからであり,戸のあけたてのぞんざいなるを〈こもたれ子〉とさげすむのは,出入口の戸の代りに小さな家ではこも類をさげたなごりである。こもは包装材としても使われ,こもで包んだ主に4斗入りの酒樽を薦被(こもかぶり)という。
(むしろ)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「薦」の意味・わかりやすい解説


こも

水辺に生えるイネ科の多年草マコモの古名で、それを粗く編んでつくったむしろをいう。「菰」とも書く。「薦かぶり」は、薦で包んだ4斗(約72リットル)入りの酒樽(さかだる)、また、乞食(こじき)がいつも薦をかぶっていたところから、乞食の別称ともなった。出入口の戸、障子のかわりに薦を垂らした貧家、乞食小屋を「薦垂(だ)れ」「薦吊(つる)し」という。また「薦枕(まくら)」は、マコモを束ねてつくった枕であるが、平安時代以降、水辺の旅寝を例えていった。

[兼築信行]

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動植物名よみかた辞典 普及版 「薦」の解説

薦 (コモ)

植物。真菰の古名

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