デジタル大辞泉
「見」の意味・読み・例文・類語
けん【見】
1 物事の見方・考え方。見解。「皮相の見」
「学博く―高し」〈露伴・露団々〉
2 見るだけで買わないこと。ひやかし。素見。
「遊女の―して帰るなど」〈浮・娘気質・一〉
み【見】
見ること。また、見える状態。多く、他の語と複合して用いられる。「姿見」「月見」
「山見れば―のともしく川見れば―のさやけく」〈万・四三六〇〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
み・える【見】
〘自ア下一(ヤ下一)〙 み・ゆ 〘自ヤ下二〙 (「みる(見)」の
自発の形。受身・可能の意にも用いられる)
① 自然に目にはいる。目にうつる。
※
古事記(712)中・
歌謡「千葉の 葛野を見れば 百千足る 家庭
(やには)も美由
(ミユ) 国の秀
(ほ)も美由
(ミユ)」
※書紀(720)顕宗二年九月・歌謡「鮪
(しび)が
鰭手(はたで)に 妻立てり彌喩
(ミユ)」
② 他から見られる。また、
他動詞のように用いて、意識して他から見られるようにする。他に見せる。
※
万葉(8C後)一五・三七〇八「物思ふと人には美要
(ミエ)じ下紐の下ゆ恋ふるに月そ経にける」
※
源氏(1001‐14頃)
桐壺「はかなき花紅葉につけても心ざしをみえ奉る」
③ (
他人から見られるの意から) 人に会う。顔を合わせる。対面する。
※大和(947‐957頃)一〇三「物も言はでこもりゐて、使ふ人にもみえで」
※
平家(13C前)二「今一度小松殿にみえ奉らばや」
④ (特に女が特定の男に会うというところから) 夫婦の交わりをする。結婚する。また、夫婦として連れ添う。
※竹取(9C末‐10C初)「よき
かたちにもあらず、いかでか見ゆべき」
⑤ 見ることができる。
※
古今(905‐914)秋上・一六九「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる〈
藤原敏行〉」
⑥ よく見ることがある。見なれる。見つかる。
※竹取(9C末‐10C初)「此国に見えぬ玉の枝なり」
⑦ 現われる。人が来る。また、手紙が来る。現代では「人が来る」意の尊敬語として用いられるが、さらに敬語表現を加えて「お見えになる」「見えられる」の形をとることもある。
※万葉(8C後)一五・三七七一「宮人の安眠(やすい)も寝ずて今日今日と待つらむものを美要(ミエ)ぬ君かも」
※
蜻蛉(974頃)中「日暮るるほどに、文みえたり」
⑧ 目で見て…と思われる。そう感じられる。
※万葉(8C後)三・三三六「しらぬひ筑紫の綿は身につけていまだは着ねど暖けく所見(みゆ)」
※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「御坊の御るすとみえて、玄関が明ぬとて」
⑨ 文字に書かれる。書物に載る。
※平家(13C前)一「
栴檀は
二葉よりかうばしとこそみえたれ」
⑩ 判断がつく。わかる。
※
浮世草子・好色一代男(1682)五「腰の物のこしらえ、手足にてあらましみゆる事ぞ」
[語誌](1)上代では「見ゆ」で文を結ぶという文末形式が顕著で、単にモノを表わす名詞に下接するにとどまらず、①の挙例「書紀‐歌謡」のように、コトの存在をも活用語の
終止形に下接するという特異な構文で示したが、
平安時代になると、この構文はすっかり姿を消す。かわって、活用語に下接するときには、
連体形に接続することとなる。
(2)完了の
助動詞「つ」に上接することから、形状性の用言であったことがわかるが、一方で、動作性の用言として、他人から見られる、見られるようにするの意から展開して、ヲ格をとったり、③④などの意の用法を持つに至るなど、他動詞的な用法も派生した。
み・せる【見】
〘他サ下一〙 み・す 〘他サ下二〙
① 見るようにさせる。人にわかるように示す。
※万葉(8C後)五・七九七「悔しかもかく知らませばあをによし国内(くぬち)ことごと美世(ミセ)ましものを」
※落窪(10C後)一「いかではかなき心ざしをみせんと思ひて」
② (顔を見せるの意から) 相手の前に姿を現わすようにする。人をたずねたり、人に会ったりする。
※平中(965頃)二「よし、なほおほかたにて、見せむ。月おもしろきに、と言へば、来たり」
③ とつがせる。めあわせる。
※源氏(1001‐14頃)若菜下「かしづかんと思はむ女こをば、宮仕へにつぎては、みこたちにこそはみせ奉らめ」
④ 様子を調べさせる。見とどけさせる。
※蜻蛉(974頃)上「心えで、人をつけてみすれば」
⑤ 経験させる。
※竹取(9C末‐10C初)「さかしりをかき出て、ここらのおほやけ人に見せてはぢを見せん」
⑥ 占わせる。
※青表紙一本源氏(1001‐14頃)明石「しのびてよろしき日みせて」
⑦ 診察させる。
※平家(13C前)三「后呂太后、
良医をむかへて見せしむるに」
⑧ (動詞の
連用形に助詞「て」を添えた形につき、
補助動詞のように用いる) ためしに…して人に示す。
※今昔(1120頃か)二八「然ば暫く居たれ、水飯食て見せむ」
けん【見】
〘名〙
① みること。〔日葡辞書(1603‐04)〕
② かんがえ。思いつき。見解。また、見識。主張。仏教では、多くまちがった見解の意に用いる。五見などはその例。
※正法眼蔵(1231‐53)弁道話「いまいふところの見、またく仏法にあらず。先尼外道が見なり」
※俳諧・去来抄(1702‐04)修行「唯徒に見を高(たかう)し、古を破り、人を違ふを手柄に」 〔勝鬘経‐顛倒真実章〕
③ 能で、演技者が観衆に与える効果のうち視覚に訴える美。見風。
※花鏡(1424)比判之事「能の出で来る当座に、見・聞・心の三あり」
④ 物や遊女を見るだけで買わないこと。ばくちで、見ているだけで賭けないこともいう。また、その人。ひやかし。素見(すけん)。
※雑俳・ちゑぶくろ(1709)「折折は・揚屋の辻に見(ケン)ばかり」
⑤ 星が姿を現わして、見ることができる時をいう。
※遠西観象図説(1823)下「六星悉(ことごと)く太陽を心とし〈略〉絶て其体を見ることを得ざるの時あり、之を伏と云ふ。其見るべきの時を見と云ふ」
ま‐み・える【見】
〘自ア下一(ヤ下一)〙 まみ・ゆ 〘自ヤ下二〙 (「みえる」は「みられる」の意で相手からみられるというところから)
① 「会う」の意の謙譲語。おめにかかる。お会いする。また、単に、顔を合わせる。対面する。
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「今は覲(マミエ)奉(まつ)ること已に訖ぬ」
② 姿を現わす。現われる。出現する。
※スピリツアル修行(1607)ロザイロの十五のミステリヨ「サテ マタ mamiye(マミエ) タマウ ヲンスガタ」
③ 夫と定める。夫としてつかえる。
※高野本平家(13C前)九「忠臣は二君につかへず、貞女は二夫にまみえずとも」
けん‐・ず【見】
〘他サ変〙
① 見る。
※洒落本・公大無多言(1781)「豆さんたいくつだろう。見(ケン)じた通りの人が来て大きに手間を取た」
② 見出す。察知する。
※花鏡(1424)時節当感事「人の機にある時節と者(いっぱ)、為手(して)の感より見するきわなり」
み・す【見】
〘他サ四〙 (動詞「みる(見)」の未然形に尊敬の助動詞「す」の付いたものか) ごらんになる。
※書紀(720)継体七年九月・歌謡「御諸(みもろ)が上に 登り立ち 我が彌細(ミセ)ば」
[補注]四段活用動詞以外に「す」のつく場合には音の変化するのが普通で、「見る」の場合には「めす」の形をとるが、「みす」となるものも古くはあったものか。
み・れる【見】
〘ラ下一〙 (「みる(見)」の可能動詞) 見ることができる。本来「見られる」であるが、五(四)段活用からできた可能動詞「書ける」「帰れる」などにひかれてできたいい方。
※子をつれて(1918)〈葛西善蔵〉一「これほど手入れしたその花の一つも見れずに」
み【見】
〘名〙 (動詞「みる(見)」の連用形の名詞化) 見ること。また、はたから見える物の状態。
※万葉(8C後)二〇・四三六〇「山見れば 見(み)の羨しく 川見れば 見(み)のさやけく」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報