緑茶(読み)りょくちゃ

精選版 日本国語大辞典 「緑茶」の意味・読み・例文・類語

りょく‐ちゃ【緑茶】

〘名〙 茶の若葉を蒸し、火にかけて乾かしながら揉(も)んだもの。煎茶(せんちゃ)・碾茶(ひきちゃ)など普通日本で飲む茶。紅茶に対していう。〔英和商業新辞彙(1904)〕

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デジタル大辞泉 「緑茶」の意味・読み・例文・類語

りょく‐ちゃ【緑茶】

茶の若葉を摘んで蒸し、焙炉ほいろの上でもみながら、葉の緑色を損なわないように乾燥させた茶。玉露煎茶抹茶など。
[類語]日本茶グリーンティー煎茶玉露番茶ほうじ茶玄米茶碾茶てんちゃ抹茶碾き茶薄茶お薄濃い茶芽茶葉茶茎茶粉茶銘茶粗茶渋茶新茶空茶からちゃ出涸らし

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改訂新版 世界大百科事典 「緑茶」の意味・わかりやすい解説

緑茶 (りょくちゃ)

チャの生葉は,摘んだまま放置すると発酵して茶褐色に変色する。このため,摘んだ葉を直ちに加熱して葉に含まれている酵素の活力を失わせ,緑色を保たせた製品が緑茶で,日本と中国で作られている。加熱のしかたには蒸気で蒸す方法と釜で炒(い)る方法とがあり,日本ではほとんどが前者による蒸製である。中国の緑茶は後者による釜炒製で,日本では九州の一部でこの釜炒茶が作られている。

 日本緑茶には,煎茶,玉露,挽茶(ひきちや),番茶玉緑茶などの種類があり,玉緑茶以外はすべて蒸製である。玉緑茶は釜炒製で,佐賀県の嬉野(うれしの)茶,熊本・宮崎両県の青柳茶が有名である。いずれもまるく縮んだ勾玉(まがたま)状を呈し,上級品は香り・味ともにすぐれている。以上のほかに,芽茶(めちや),粉茶,茎茶(くきちや)と呼ばれるものがある。いずれも玉露,挽茶,煎茶の精選工程でふるい分けられたもので,芽茶は小さな玉状,粉茶は送風選別により,茎茶は木茎分離機にかけて分離された茎や葉脈である。ともに,もとの茶が良質であれば品質はよく,芽茶,茎茶は〈さしがきく〉といって,繰り返し湯を注いでも味の出るものが多い。雁が音(かりがね),白折(しらおり)などと呼ばれるものは挽茶から選別された茎茶で,くずとはいえ高級品で価格も高い。また,ほうじ茶は番茶や煎茶を強火焙焼(ばいしよう)したもの,玄米茶はこれに蒸して炒った玄米を加えたもので,いずれも焙焼による香気と軽快な味が喜ばれる。なお,日本緑茶のうち最も生産量の多いのは煎茶で,全体の80%程度を占め,番茶が約12%でこれに続く。玉露,挽茶はともに5%以下である。

 中国の緑茶は,唐代ころは蒸製であったが,現在はほとんど釜炒製になっている。種類はきわめて多く,浙江省杭州付近の竜井(ロンチン)茶,浙江省武義や安徽省歙県(しようけん一帯の大方(ターフアン)茶,安徽省黄山などの毛峰(マオフオン)茶などが産地銘柄として最も有名である。また,それぞれに摘採時期や摘み採りされた芽葉の形状などによる呼称があり,竜井茶系統では4月5日ころの清明節以前に摘んだ明前(ミンチエン)茶,新芽の形から名のついた二枚葉の旗槍(チーチアン)茶,一枚葉の雀舌(チユエシヨー)茶などがあり,いずれも一心二葉までの若芽を原料とした上級品である。江蘇省太湖の洞庭山の畑で摘まれる碧螺春(ピールオチユン),四川省峨嵋(眉)山の峨眉峨蕊(オーメイオールイ)茶,同じく四川省蒙山山頂の蒙頂(モンテイン)茶,江西省廬山の廬山雲霧(ルーシヤンユンウー)茶などは,ほとんどが一心一葉の若芽を原料とする高級茶として知られる。このほか,有名な中国緑茶にはジャスミン茶その他の花(ホワ)茶がある。緑茶にジャスミン,モクセイ,バラ,ラン,クチナシなどの花を加えて香りをつけた茶で,日本でも愛好する人は少なくない。

 緑茶には,タンニンのほか,ビタミンC,カフェインなどがあり,日本緑茶にはグルタミン酸も含まれている。これら諸成分の相乗効果によって,緑茶は細胞の老化を防ぎ,高血圧や糖尿病はもとより癌の予防に役だつともいわれ,不老長寿の仙薬という古来の伝承はともかく,すぐれた健康飲料であることはまちがいない。日本,中国をはじめ,チベット,モンゴルから中央アジア,中近東,そして北アフリカにまで緑茶飲用の地域は広がっているが,なかには,ビルマ(現,ミャンマー)やタイの一部で見るように,食べる茶としているところもある。
玉露 →煎茶 →中国茶
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百科事典マイペディア 「緑茶」の意味・わかりやすい解説

緑茶【りょくちゃ】

摘みとったチャの葉を蒸したり炒(い)ったりして加熱したのち,焙炉(ほいろ)中でもみながら乾燥したもの。葉中の酸化酵素の活動を停止させて葉緑素の分解を妨げているので緑色を保っている。その色からグリーンティーと呼ばれ,カフェイン,ビタミンCに富む。中国では釜で炒るが,日本ではほとんど蒸気で蒸して加熱する。製法により玉露煎茶番茶挽(ひき)茶,中国式の釜炒り茶である玉緑茶などの種類がある。また玉露,煎茶,挽茶の製造過程でふるい分けられた芽茶,粉茶,茎茶や,番茶を炒ったほうじ茶(ほうじちゃ)や玄米を加えた玄米茶などもある。日本では古くから飲用され,静岡,京都,埼玉などの各府県が主産地。
→関連項目カテキンチャ(茶)中国茶

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「緑茶」の意味・わかりやすい解説

緑茶
りょくちゃ

発酵(主として酸化)の少ない状態でつくられる茶。製造の第一工程で、茶葉を蒸気または火熱を用いて熱し、茶葉中にある酵素を失活させて酸化を防ぎ、固有の緑色を保たせるようにつくる。煎茶(せんちゃ)、玉露(ぎょくろ)、抹茶(まっちゃ)、玉(たま)緑茶などがあり、日本で生産される茶の大部分は緑茶である。

[桑原穆夫]

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飲み物がわかる辞典 「緑茶」の解説

りょくちゃ【緑茶】


日本茶のうち、ツバキ科の常緑低木・茶の芽や葉を摘み取って、発酵が生じないようにただちに加熱し、葉の緑色を保ったまま飲料用に加工したもの。また、加工後の茶葉に湯を注いで成分を湯に浸出させたり、茶葉の粉末を湯に溶かしたりして作った飲み物。摘み取った芽や葉を蒸すか釜でいって発酵を止め、揉んで(抹茶は揉まずにそのまま)乾燥させて作る。煎茶、番茶、玉露、玉緑茶、抹茶などがある。

リューチャー【緑茶 (中国)】


中国茶の一種で、茶の葉を摘み取って、発酵が生じないようにただちに釜でいって加熱し、茶葉の色を緑色に保ったまま飲料用に加工したもの。不発酵茶にあたる。カテキンやテアニン、ビタミン類を多く含み、代表的なものとして龍井茶(ロンジンちゃ)がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「緑茶」の意味・わかりやすい解説

緑茶
りょくちゃ
green tea

茶葉を原料としてつくる嗜好飲料のうち,その葉を発酵させないまま,焙炉 (ほいろ) の上でもみながら乾燥してこしらえるもの。葉緑素の色があまり破壊されずに残るのでこの名がついている。玉露,煎茶,番茶,焙茶などがある。 (→紅茶 )  

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栄養・生化学辞典 「緑茶」の解説

緑茶

 不発酵茶で,茶葉を収穫後,蒸気で蒸して酵素を失活させて製造.発酵茶が紅色から褐色をしているのに対して緑色であることが特徴.

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世界大百科事典(旧版)内の緑茶の言及

【飲料工業】より

…飲料はアルコール飲料と非アルコール飲料に大きく分類され,これらの製造業を飲料工業という。アルコール飲料すなわち類は清酒ビールウィスキーブドウ酒などがおもなもので,非アルコール飲料には炭酸飲料,果実飲料,濃厚乳酸飲料などの清涼飲料のほか,コーヒー紅茶緑茶などが含まれ,その裾野は広い。
[アルコール飲料]
 日本の酒税法では,アルコール分1度以上の飲料を酒類と定め,清酒,合成清酒,焼酎(しようちゆう),みりん,ビール,果実酒類,ウィスキー類,スピリッツ類,リキュール類,雑酒の10種類に分けている。…

【チャ(茶)】より

…温暖多雨の地方で栽培されるツバキ科の常緑樹(イラスト)。幼葉を摘んで加工し,緑茶,紅茶などの嗜好(しこう)飲料として古くから愛飲され,一部の地域では漬物の原料とする。 ツバキ属,チャ節に属する2変種からなる。…

※「緑茶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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