化学辞典 第2版 の解説
ポリ(ビニルアルコール)
ポリビニルアルコール
poly(vinyl alcohol)
略称PVA.次の一般式,
で表されるビニルアルコールの重合体で,ポバールともよばれる.ビニルアルコールは単量体としては実在しないので,実際にはポリ(酢酸ビニル)をアルカリ,酸,アンモニア水などでけん化することにより得られる高分子化合物である.主鎖はビニルアルコール単位の繰り返しで,1,3-グリコール形であるが,1~2% 以内の1,2-グリコールを含んでいる.上述した方法で得られるポリ(ビニルアルコール)は,アタクチックポリマーであると考えられている.それにもかかわらず,このポリマーが高い結晶性を示すのは,-OH基の大きさが比較的小さく,-OH…O型の水素結合がさらにそれを補っているためと考えられている.ガラス転移温度約65~85 ℃.引張強さ,圧縮強さ,耐衝撃性,耐摩擦性にすぐれている.水には徐々に溶解するが,分子量が大きくなると溶解性は低下する.一般の有機溶媒には不溶であるが,酢酸,グリセリン,アセトアミド,フェノールには加熱すると溶解し,液体アンモニアに溶ける.ポリ(ビニルアルコール)のヒドロキシ基は,低分子多価の第二級アルコールと同じく,アセタール化,アセチル化,脱水など種々の反応をする.ポリ(ビニルアルコール)からつくられた繊維は,ビニロンの名称で市販されている.そのほか,のり剤,塗料,接着剤,乳化剤,洗剤,農薬のユニット包装用など広い用途をもつ.[CAS 9002-89-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報