拈華微笑(読み)ネンゲミショウ

デジタル大辞泉 「拈華微笑」の意味・読み・例文・類語

ねんげ‐みしょう〔‐ミセウ〕【×拈華微笑】

仏語。釈迦が霊鷲山りょうじゅせんで説法した際、花をひねり大衆に示したところ、だれにもその意味がわからなかったが、ただ摩訶迦葉まかかしょうだけが真意を知って微笑したという故事。そこで釈迦は彼にだけ仏教真理を授けたといい、禅宗で、以心伝心で法を体得する妙を示すときの語。
[補説]この語の場合、「微笑」を「びしょう」とは読まない。
[類語]以心伝心呼応意気投合合意コンセンサス息が合う反りが合う反り馬が合う気が合う肌が合う琴瑟きんしつ相和す打てば響くつうかあ応える共鳴同感共感心を合わせる心を一にする心を通わす心が通う気が置けない胸襟を開く腹を割る心を開く心を許す気を許す肝胆相照らす心を交わす心を以て心に伝う

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精選版 日本国語大辞典 「拈華微笑」の意味・読み・例文・類語

ねんげ‐みしょう‥ミセウ【拈華微笑】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。摩訶迦葉が釈迦から奥義を授けられたという故事を示すことば。釈迦が霊鷲山弟子に説法しようとした時、梵王が金波羅華を献じた。釈迦は一言もいわずその花をひねっただけなので、弟子たちはその意を解せなかったが、迦葉だけがにっこりと笑った。それを見て釈迦は、仏法のすべてを迦葉に授けたと語ったという。
    1. [初出の実例]「釈尊金棺より御足を出し拈華微笑して、此法門を迦葉に付属ありしより已来」(出典:日蓮遺文‐聖愚問答鈔(1265)下)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「拈華微笑」の意味・わかりやすい解説

拈華微笑
ねんげみしょう

禅宗で、釈尊(しゃくそん)(釈迦(しゃか))と弟子の迦葉(かしょう)の付法(仏法の伝授)の物語をいう。釈尊が霊鷲山(りょうじゅせん)で蓮華(れんげ)をかざして大衆に示したとき、大衆はみな黙ってしまったが、ただ迦葉だけはにっこりほほえんだ。そこで釈尊は「正法眼蔵涅槃妙心(しょうぼうげんぞうねはんみょうしん)、実相無相微妙法門(じっそうむそうみみょうほうもん)」の仏教の真理を迦葉に伝えたとする話。北宋(ほくそう)代の偽経『大梵天王問仏決疑経(だいぼんてんのうもんぶつけつぎきょう)』に初めてみえる話であるが、宋代以降の禅宗で盛んに用いて、「以心伝心不立文字(いしんでんしんふりゅうもんじ)」の主張を根拠づける話とした。釈尊の教えが、知識分別では把握できないものであることを説いたものである。

[石井修道]

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四字熟語を知る辞典 「拈華微笑」の解説

拈華微笑

言葉を用いずに、心から心へと伝える妙境のたとえ。

[活用] ―する。

[使用例] わたしたちはわたしたちの気もちを容易に他人に伝えることはできない。それはただ伝えられる他人しだいによるのである。「拈華微笑」の昔はもちろん、百数十行にわたる新聞記事さえ他人の気もちと応じない時にはとうてい合点のできるものではない[芥川龍之介*十本の針|1927]

[解説] 訶迦かかしょうが釈迦から奥義を授けられたという故事を示すことば。釈迦がりょうじゅせんで弟子に説法しようとした時、梵王が金波羅華を献じました。釈迦は一言もいわず、ただその花をひねっただけなので、弟子たちはその意を解せませんでしたが、迦葉だけが、にっこりと笑いました。それを見て釈迦は、仏法のすべてを迦葉に授けたと語ったといいます。

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改訂新版 世界大百科事典 「拈華微笑」の意味・わかりやすい解説

拈華微笑 (ねんげみしょう)
niān huā wēi xiào

禅宗の起りを説く故事,公案の一つ。以心伝心,不立文字の意。唐代に萌芽があり,宋代に定型化される。《無門関》第10則にあるのが,もっとも著名である。釈迦が霊鷲山で大勢の弟子に説法していると,梵天が金波羅花を献ずる。釈迦は,これをうけとると黙って弟子たちに示す。だれもその意味を理解できない。長老の摩訶迦葉だけが,ひとり微笑する。釈迦は,我に正法眼蔵,涅槃妙心,実相無相,微妙の法門あり,不立文字,教外別伝,今,摩訶迦葉に付す,と言ったとするもの。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「拈華微笑」の意味・わかりやすい解説

拈華微笑
ねんげみしょう

釈尊が霊鷲山で会衆を前に蓮華を無言でひねったのに,その弟子迦葉 (かしょう) だけが微笑して応じたことをいう。釈尊の心中にある仏教の真理が無言のうちに伝授されたことをいうもので,特に禅宗でしばしば用いる。

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世界大百科事典(旧版)内の拈華微笑の言及

【以心伝心】より

…釈尊は,霊鷲山(りようじゆせん)において,8万の大衆を前にして金波羅華をかかげ拈(ねん)じたが,それをみた大衆のうち摩訶迦葉(まかかしよう)ただ一人がその意を悟って破顔微笑し,摩訶迦葉は釈尊から正法を授受されたといわれ,そこに以心伝心のあったことが示されている。この故事を拈華微笑(ねんげみしよう)という。禅門では,ことばや文字,経論によることなく,師資相対して心から心に禅の大法を伝えてきた。…

※「拈華微笑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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